第270回セミナー報告「100%再生可能エネルギーを目指しての思考
― 異常気象の原因と私たちが選べる未来―」2026年03月
2026年 05月 01日科学技術者フォーラム2025年3月度(270回)セミナー報告
100%再生可能エネルギーを目指しての思考
― 異常気象の原因と私たちが選べる未来―
日時:2026年3月21日(土) 14:00~16:45
会場:品川区総合区民会館(きゅりあん)4F 第1会議室 + ZOOMオンライン
参加者:29名(会場22名、WEB7名)
講演1.みんなで再生可能エネルギーを使い異常気象を解消し持続的発展を!
東北大学名誉教授、東北工業大学名誉教授 橋本 功二 氏
1.大気中の二酸化炭素濃度に地域差はなく、1960年代の高度経済成長から急増し、2024年には1,500万年前の値に達している
気象庁は1987年から大気中の二酸化炭素濃度の3ヶ所のデーターを発表している。細かく見れば、植物の炭酸同化作用の強弱のため、大気中の二酸化炭素濃度は毎年夏の終わりが最低で、冬の終わりが最高になるが、これは毎年数ppmの上下の変化に過ぎない。全体では、1987年の350ppmから2024年の430ppm迄、やや上向きの曲線で上がり続けている。驚くことは、人間活動から最も離れた南極の二酸化炭素濃度も日本と同じであって、二酸化炭素は誰がどこで排出しようと、ほとんど時間をおかずに世界中に拡がっている。
大気中の二酸化炭素濃度は有史以来280ppmだったが、1950年代でも310ppm程度だった。ところが1960年代に入り、大量の化石燃料燃焼のエネルギーに依拠した高度経済成長が始まると急速に上がり始め、2007年には350万年前の値であった380ppmになり、2024年の430ppmは1,500万年前の値に相当する。しかし大気中の二酸化炭素は発熱する訳ではなく、熱の発生は化石燃料燃焼の結果である。大気中の二酸化炭素濃度は高濃度であっても、雲のない冬の夜には放射冷却で地上の熱が宇宙に逃げ、明け方に寒い思いをしているように地球で発生する熱は宇宙に逃散する。
2.南半球の温帯に陸地が少なく、世界の人口の85%は北半球に住み、世界の一次エネルギーの93%は北半球で消費され、地球を加熱している一次エネルギーとは、石炭、石油、天然ガスの燃焼前の生のエネルギーだが、再生可能エネルギー発電や原発の電力は電力を産み出した一次エネルギー量の推定が困難なので、電力をそのまま一次エネルギーとして扱っている。
併せて世界の人口の23.4%の中国、アメリカ、ロシアは2023年に世界の一次エネルギーの48.8%を消費して地球を暑くし、二酸化炭素の50.8%を排出している。
人が住み易い北半球の北緯30-40度の温帯には陸地が43%あるが、南半球の南緯30-40度の温帯には陸地が11%しかないため、2024年の世界の人口81億5,600万人のうち85%は北半球に住んでいる。したがって2023年のデータで見ると北半球は世界の一次エネルギーの93%を消費し、世界の気温を上げて来た。
3.世界の経済不況で化石燃料燃焼が増えないと気温が下がり、化石燃料燃焼を控えれば気温は下がる
化石燃料燃焼による北半球の気温上昇は、二酸化炭素濃度上昇より20年も遅れて、1980年台に入ってから始まった。特に2015年以降は北半球の気温上昇が激しく、南半球の気温はついていってない。化石燃料燃焼を拡大し続ける限り、異常気象の発生は避けられない。
世界経済の不況時には、世界の一次エネルギー消費量は増えずに停滞し、常に北半球の気温が一時的に低下してきた。化石燃料燃焼量を減らせば、気温が下がる。
4.私達一人一人が再生可能エネルギーを使う努力を始めよう。
この地球で異常気象の発生を避け生き延びるためには、政府が国民に訴えるのは当然だが、私達一人一人が再生可能エネルギーを使う努力を始めるときである。全ての建物に太陽電池を据えるなど、地域の市民生活に必要なエネルギー程度は、その地域で造る努力をしよう!
質疑応答
1.1980年代、CO2の変化はあまりないが、どういう状態か?
⇒異常気象になるほどの量でなく、問題なかった。80年代以降からCO2は増加しだし、気温が異常になってきた。しかしCO2は世界中にすぐ拡散するので、気象に与える影響はそれほど大きくはなかった。発熱が増えた方が問題である。
2.大気中のCO2濃度0%は理想なのか?
⇒0%だったら却って問題である。CO2は光合成の原料であり、植物の成長には必須である。ある程度のCO2増加よりも化石燃料による発熱の方が問題である。
講演2.再生可能エネルギーの今とこれから ~風力・波力の可能性~
足利大学創生工学科 機械分野 准教授 飯野 光政 氏
1.風力発電の現状と日本が抱える課題
現在主流の「3枚羽根の水平軸風車」は、風エネルギーを電気に変える効率において、理論的限界とされるベッツ係数(59.3%)に近い約50%を達成している。また風力発電そのものは、オランダの風車等、長い歴史があり、成熟した技術である。
しかし、国産の大型風車メーカーはすでに撤退し、海外製品に依存していたため、故障時の部品調達やメンテナンスを海外に頼っており、運用コストや工期の面で大きな制約となっている。
また2050年のカーボンニュートラルに向けて、2050年に48,500人の専門人材の養成が必要な状況となっている。
2.波力発電の教訓と実用化への新アプローチ
波力エネルギーは日本にとって大きな可能性を秘めているが、「期待先行」による拙速な実用化が十分な耐久テストを欠いた海域実証が破損や故障を引き起こし、開発の停滞を招いた過去がある。
「振動水柱型(OWC)」(飯野准教授が研究)は、波の上下動で空気を動かし、タービンを回す方式で、駆動部が海水に直接触れない。このため腐食や生物の付着に強く、高い耐久性が期待できる。現在は防波堤などの既存インフラに発電機能を組み込む「インフラ一体型」の開発が進んでおり、建設コストの削減と防災機能の強化を両立させる技術として期待されている。
3.多角的な研究と社会実装の試み
技術開発は発電のみにとどまらない。天候で変動する電力を安定させるため、栃木県内の企業と連携した「水素吸蔵合金」によるエネルギー貯蔵研究が行われている。またバルミューダ社との共同開発による小型風車のプロジェクトでは、機能性だけでなく「デザイン」を通じて社会的な受容性を高める試みが紹介されている。教育現場では、単に物を作るだけでなく「社会課題をどう解決するか」を考える探究活動への支援に力が入れられている。
4.私たちが未来のためにできる選択
セミナーの結びとして、専門家ではない個人が社会を変えるための具体的な行動が提示されている。
第一に再生可能エネルギー由来の電力プランを自ら「選んで買う」こと。
第二に環境や地域、人権に配慮した「エシカル消費」を実践すること。
第三に物を長く大切に使い、無駄な消費を抑えること。
私たちが何に支出するかは、どのような未来や技術を支持するかという「投票」と同じです。ひとりひとりの賢明な選択こそが、持続可能なエネルギー社会を構築する最大の原動力であると説われている。
質疑応答
1.風車の最適性追求は? 小型風車の利用は?
⇒風車は3枚翼利用が普通であるが、これは必ずしも最適とは限らないが、今迄のなりゆきできている。とってかわる技術の検討は必要であり、上空の風利用なども考えられる。
小型風車は出力あたりのコストが高く、設置の高さが低いため流入する風も弱い。小規模発電より、太陽光発電の方が有利である。
2.風力発電と波力発電の比較は?
⇒風力発電の方が陸海両方でポテンシャルを有し、主役となっている。海に居住する場合には波力発電の可能性がある。
3.エネルギー安全保障の点から風力発電の国産化は重要ではないか?
⇒風力発電を発展させるためには、人材育成から始めるが必要があり、現状では難しい。他の技術に比べて風力発電技術は国策での技術開発が弱く、国策としての重要性を訴える政治的活動が必要である。
4.翼の無い風車があるが、これはなぜ普及しないのか?
⇒翼の付いた風車は数百年の歴史があり、翼レスの風車に比べて、技術蓄積に大きな違いがある。また風力の利用は翼の面積比で決まるため、翼レス風車はこの面で効率が悪い。これらの点から考えて、翼レス風車が一定程度は普及する可能性はあるかもしれないが、翼の付いた風車に完全に置き換わるのかには疑問が残る。
【所感】
CO2排出量増加を抑えるため、再生可能なエネルギーを重要視しなければならないことを改めて感じました。
現在の豊かな生活を捨てても、再生可能エネルギーを中心に据えた世界にする必要性を大いに感じました。
記載: 碇 貴臣