第267回セミナー報告「プロトコールを知って国際ニュースを理解する」2025年7月
2025年 07月 20日科学技術者フォーラム2025年7月度(267回)セミナー報告「プロトコールを知って国際ニュースを理解する」
日 時:2025年07月5日(土)13:30~15:45
会 場:会場(品川区立総合区民会館)+ ZOOMオンライン
参加者:22名(会場19名、WEB 3名)
講演者:プロトコール研究家、結び文化研究所所長 小暮 幹雄 先生
【講演要旨】
2年前(2023/8/22)に「結びの歴史と文化」で登壇、STFセミナー2度目の講演です。
1.「プロトコール」とは
「国際儀礼」と訳され、国家間の儀礼上のルール。定義は外務省規定、「儀礼規範」の記録がある。
国際的公的な場での主催者側が必要とするルール
2.プロトコール5つの原則
①序列、②答礼・相互主義(give and takeの精神)、③右上位(原則)、④異文化尊重、⑤レディーファースト
3.「国賓」とは
天皇陛下のお客様で国家予算にて対応、最大、年間2か国受け入れるため、1回目は国賓待遇でも、2回目以降は公賓待遇となる。
・直近では2025/3ブラジル大統領歓迎行事、天皇皇后両陛下ご臨場を写真解説。
ブラジルと日本の両国国歌が演奏され、大統領閣下は儀仗隊の栄誉礼を受けられた後、巡閲。
陛下の立ち位置、この時の陸自音楽隊のユニフォーム、晩餐会のメニュー、お帰りの車の座席などを意識してみると勉強になる。
ちなみに、晩餐会はいままではフランス料理がメインであったが、今回は日本料理で箸、江戸切子のグラスがテーブルに準備されていた。
・2024/6 天皇皇后両陛下が国賓として英国を公式訪問された時の写真解説。
バッキンガム宮殿前の大通り「ザ・マル」に日本の「日の丸」と英国の「ユニオンフラッグ」の両国旗が掲揚されている。礼砲は21発、これは「ROYAL SALUTE」として21年もののウイスキーとして有名。また、英国軍服のボタンのかけ方(軍により異なる)、ガーター勲章の種類、数などを注意深く見ることで理解が深まる。
4.「日本政府専用機」
政府要人の外国訪問、国際会議出席などに使用。現在は、ボーイング777、航空自衛隊千歳基地所属、全日空がメンテし、運行スタッフは自衛隊員が担う。緊急時における在外邦人等の輸送や国際緊急援助活動、国際平和協力活動などの際にも利用される。
5.「G7」、「G20」とは
主要国首脳会議、先進国首脳会議の事で、Group7、Group20の略である。
座席は開催国(議長国)議長を中心に、右-左交互に大統領、首相就任順。円卓では上位無し。入り口の奥が上位となる。
6.「敬称」
国により、役職により異なる。敬称を間違えると大変失礼なことになる。特に手紙の差出には注意が必要。
・Her Royal Highness: 映画「ローマの休日」で終盤、アン王女への呼びかけで使用された。
・「Mr.」「Mrs.」: Mr.+first name、Mrs.+family name、Ms.は未婚、既婚問わずMs.+family name。
・軍人: 国ごと、軍ごとに異なるので注意。基本的に肩書を用いる。
・カトリック: 教皇(Pope)に統一された。法王は使わない。
7.「握手」男性から見たマナー
男性:深く、力強くshake hand、女性に対しては女性からのアプローチで浅く、軽く4本指程度で握手。
カーテシー:夫人が行う立礼、ダイアナ妃の天皇に対するカーテシーを写真解説。
8.「公式席次」
国、場所、場合によって異なるため、非常に難しい。
・オリンピック: 開催国のアルファベット順。1番はギリシャ、最後は開催国。
・日本の席次の目安: 定かでないものもあるが、概ね年齢順で並べれば問題になりにくい。
・部屋における座席順: 入口、キッチン側は末席であることは覚えておく。
・モンゴルは右上位で5原則とは逆である。
9.「天皇・皇后」の自動車乗車座席
通常: 後部右が天皇、左が皇后
1人の場合: 通路側(後部左席)、国民に挨拶できるようにするため。
10.「国旗」
・日章旗の中央赤は「紅」色
・日章旗の中央紅は「横位置1/3、縦位置3/5」であるが、長野五輪では中央の紅の丸が大きい。周りが雪で観にくいのが大きくした理由。
・星条旗: 13条の横縞(独立当時の13入植地)と50個の星(現在の州)で表し、横置きでも、縦置きでも左上部に星が来るように配置される(裏返しになる)。
・英国旗(ユニオンフラッグ): イングランド、スコットランド、旧アイルランドの3つの国旗を重ね合わせたデザイン。斜めの白い部分が時計回りになるようにデザインされている。縦置きにしても同様になるのが正式。
・東京都議会: 都議会では国旗と都旗の両方を掲げているが、議長に向かって右側。プロトコールとして、国旗は右上位が基本であるため、議長に向かって左側に変えていただきたい。(講師談)
11.公的な場でのマナー
「腕を組まない」「ポケットに手を突っ込まない」は守っていただきたい。
【質疑応答】
Q1. マナーとして、手は後ろで組む場合と前で組む場合ではどちらがよろしいか?
→見た目でどちらが自然かを考えると、手は前で組むのが正しい。
Q2. 人との食事などの待ち合わせではどの程度の時間で訪問するのがマナー的にはよろしいか?
→早すぎても、遅すぎてもNGだが、プライベートであれば、5~10分遅れる程度。
Q3. 今上天皇即位式では左上位ではなかったか?
→天皇の即位の礼での高御座(京都御所から移送)も向かって左側に配置されている。
Q4. 日本の社会的な正装とは
→女性は肌を出さない。留めそでなど。男性は紋付、羽織、袴
【所感】
プロトコールは、国によっても異なる場合があり、人としての常識にも関わってくるため、気配りが非常に重要であると感じた。こちらからの思いやりが相手に届くように接することが重要と考えるが、国、地域による差、人種、宗教での扱いが関わるため、難しいですね。本日の資料は永久保存版です。
以上(報告者:佐熊範和)