第76回 見学会報告「株式会社 浜野製作所」(2025年03月)
2025年 04月 07日2025年03月11日(火)15:00~17:00 参加者:計19名
株式会社 浜野製作所(東京都墨田区八広)で、浜野慶一・会長の講演、及び、プレス、板金加工の工場見学を実施。
以下に浜野慶一・会長の講演概要を記載。
1.墨田区内の工場集積状況
(1)東京都内では大田区に次いで墨田区は2番目にモノづくりの事業所が多い。
(2)墨田区もかつて1万社以上あった工場が、今は2千社程度まで減少している。
(3)工場の業種では大田区は金属加工が大半だが、墨田区は印刷・紙加工、金属加工等、業種が多様であり、バランスが取れている。
(4)墨田区発祥の大企業としては、カネボウ、ライオン、セイコー、花王 がある。
2.浜野製作所の概要
(1)資本金:2千万円、従業員:48名
(2)工場5ヶ所
(3)事業内容:各種装置や機械の設計開発、架台・筐体設計製作、精密板金加工、プレス金型設計・製作、金属プレス加工、切削加工、デジタルファブリケーションなど
(4)ISO14001(環境)、ISO9001(品質)認証取得
3.浜野製作所の主な歩み
(1)昭和53年(1978年)に今回ご講演頂いた浜野慶一・会長の父上が金属加工の事業を墨田区で設立。
(2)平成5年(1993年):浜野会長の父上他界に伴い、浜野会長が事業を引き継ぐ。
(3)平成12年(2000年)6月:工場兼自宅が全焼、直後に仮工場で営業再開。
(4)平成13年(2001年)1月:火災の原因となった大手住宅メーカーによる補償が決定したものの、当該住宅メーカーの突然の倒産により補償がなされない状態となった。
茫然自失の状態の中で、一人の従業員の「浜野製作所はまだ潰れてはいない。自分はお金のために働いていない。あなたと一緒に仕事をやりたいのだ。」との一言、及び、父から受け継いだ会社を自分がここで終わらせるわけにはゆかぬとの気持ちから事業継続を決意。
(5)東京都や墨田区からの低利融資、及び、さまざまな伝手を頼っての必死の顧客開拓などが功を奏して、事業が軌道に載り始める。
(6)平成15年(2003年):墨田区優良工場「フレッシュゆめの工場」モデル工場に認定。
(7)平成30年(2018年):「ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞 受賞
(8)平成30年(2018年)6月15日:天皇陛下(現:上皇陛下)行幸
(9)令和元年(2019年):国連本部で講演
4.経営理念
「おもてなしの心」を常に持ってお客様、スタッフ、地域に感謝・還元し、夢(自己実現)と希望と誇りを持った活力ある企業を目指そう。
(1)ものづくり情報の上流からのコミットメント
都会の工場は高地価などのデメリットが存在するが、デメリットをメリットに変えて、顧客に近いというメリットを活かして、開発支援などで顧客に入り込む。
(2)下請け体質からの脱却
(3)中小企業ネットワークの活用
5.トピックス
(1)スタートアップ企業や大企業での開発支援業務を行なっており、スタートアップ支援の先駆者の自負がある。
(2)アイデアとテクニックで競い合うNHKの人気番組「魔改造の夜」で、トースターからパンをどれだけ高く飛ばせるかの競技に参加した。 トヨタ、東大工学部 とともに参加
【質疑応答】
(1)見学したプレス加工、板金加工にて、金型レスの精密板金加工は少量多品種に向いているとの説明だったが、金型を作ってプレスするか、金型レスの精密板金加工にするかの境界はどのあたりなのか?
⇒使用する金属の種類や厚みにより定量的には言えないが、ざっくり2千個当たりが一つの境界かと考えている。
(2)大手企業に勤務していた者だが、その会社も段々とモノづくりから遠ざかり、やがてモノづくり経験のない人達が開発・設計を手掛けるようになった。
このような現状を改善するにはどうしたらよいと思うか?
⇒中小企業は今でもモノづくりをしっかり行なっており、こういう中小企業がもっと情報発信しなければならない。経産省や中小企業庁も中小企業からの情報発信を支援しようとしている。
(3)最終製品を世に送り出すような取り組みは考えているのか?
⇒特許保有者から製品化を進める話が来ることはある。自らが製品化するための開発支援の依頼は受けるが、自らは製品化しないで、製品化後のロイヤルティが欲しいというような依頼は断っている。
【所感】
マスコミでもたびたび紹介され、以前から関心があったが、この度ようやく実現した。
浜野会長から実体験に基づく話を直接聞くことができ、大変感動的な話であり、苦難を乗り越えた時の喜びもまたひとしおだったであろうと推察する。
普段は人間というのは「理」で行動するものだろうが、大きな壁にぶつかった時など、如何ともし難い状況から抜け出す際は、人から感謝された時の思い出など、「情」の力が大きな力を発揮するのだろうとの思いを改めて強くした次第である。
このたびは大変お忙しい中、貴重な時間を頂戴して、大変有意義なご講演を頂きましたことに、心から御礼申し上げます。 【報告 角野章之】