第151回STF交流会報告(2024年10月度)
2024年 10月 28日 第151回STF交流会報告(2024年10月度)
1.日時: 20024年9月21日(土) 14:00 ~ 16:45
2.場所:きゅりあん 5F 第一講習室
3.参加者:19名(会場14名、Web5名)
4.話題提供:
テーマ1.「居酒屋天文‘楽’の会」の紹介。 発表者:我妻 幾久寿 氏(本会発起人)
■数年前、宇宙に興味と関心を持つ仲間が中心に居酒屋で”天文楽”としてスタートした会。
1回/1〜2ヶ月開催。
1.夜空はなぜ暗い?
オルバースのパラドックス(1823年)『全ての星が無限遠方まで一様、等方に分布しているならば、夜空は無限に明るく輝いている筈、なのになぜ暗い』
夜空が暗い理由は、いくつかの科学的な要因によるが、主な理由は、
①宇宙年齢が有限(138億歳):届く光は138億年前からのみ、それより前の光は届かない。
②宇宙が膨張している:138億年間光が旅した距離は470億光年故、波長が延び、明るさも減少している。
2.暦の話:暦の種類には、太陽暦、太陰暦、太陽太陰暦がある。
<西洋>:太陽暦が基本。ユリウス暦(BC45)はAC1582年にグレゴリオ暦に改暦された。
ローマ教皇グレゴリウス13世が復活祭の祭日に10日のズレが出るユリウス暦の改暦を指示してより正確な太陽暦となった。
<日本>:太陽太陰暦が基本。宣明暦(862):(中国からの最後の輸入暦)、その後、貞享暦(1685):(第5代綱吉将軍の頃)、宝暦暦(1755):(第10代家治将軍の頃)、寛政暦(1798)(第11代家斉将軍の頃)、天保暦(1844)(第12代家慶将軍の頃)と改暦された。
①1582年(西洋でグレゴリー歴に改暦された年)、信長は当時日付が異なる京歴、三嶋暦の一本化を朝廷に要請するが却下。再度の要請も本能寺の変で立ち消えになった。
②日本でのグレゴリー歴採用は明治5年(1872年)布告日は11月9日。12月3日を明治6年1月1日にすると言う事で翌年閏年が平年になったのと併せ2ヶ月の減給となった。財政逼迫していた明治政府は官吏の俸給支払い2ヶ月分を節約できた。
3.超簡単な宇宙論:
① 宇宙誕生直後の3大イベント
A.インフレーション(1980年) 佐藤勝彦とアラン・グースがほぼ同時に発表。
B.ビッグバン(1946年) ガモフが提唱。宇宙は約138億年前に「ビッグバン」(火の玉)
C.「宇宙の晴れ上がり」(宇宙誕生38万年後)光が直進できるようになった。
② CMB(宇宙背景放射)の発見。ビッグバンの正当性を裏付けた。定常宇宙論者が揶揄してつけた呼称。
③ 宇宙の加速膨張の発見(1998年)
宇宙の組成:95%は正体不明。約27%は「ダークマター」と呼ばれる見えない物質で構成されている。約68%は「ダークエネルギー」と呼ばれる謎のエネルギーが占めている。これらは直接観測できないが、その影響は重力や宇宙の膨張速度に現れる。
④ 宇宙の主役による歴史区分:0~5万年は光優勢の時代。5万年~100億年は物質優勢の時代。100億年~現在はエネルギー優位の時代と言える。
テーマ2.「‘無’の世界とは?」
発表者: 山岸 任 氏 (STF会員、「居酒屋天文‘楽’の会」会員)
1.一般的には「無」とは対象になる事象が有をなさない概念である。
2.「無の空間」について
①「無の空間」に素粒子が沸き立っている。
完全な「無」の空間でも、量子力学によって素粒子と反粒子が一時的に生成される現象が起こり、これは「量子ゆらぎ」と呼ばれ、真空中でもエネルギーが揺らぎによって粒子を生み出すためで、これにより、真空は絶えず微小な活動が行われている。
②あらゆる「素粒子」は「場」から生み出されている:。
量子場理論によると、素粒子は特定の「場」の励起状態として存在する。例えば、電子は「電子場」の励起状態である。これにより、空間のどこにでも存在し得る「場」から素粒子が生成され、これが、真空でも素粒子が沸き立つ理由である。
➂「無の空間」に素粒子が沸き立っているミクロの世界は「ゆらぎ」から生まれざるを得なかった。ミクロの世界では、全てが「量子ゆらぎ」に依存している。エネルギーや位置が不確定であり、その不確定性が粒子の生成と消滅を引き起こす。この不確定性とゆらぎは、ミクロのスケールでの宇宙の基本構造を形作る上で不可欠な要素となっている。実際、「ゆらぎ」がなければ、粒子の生成も存在も説明できない。
真の「無」の状態というのは存在しない。そして、微小なスケールでの揺らぎが、我々の世界を形作っている。
3.インフレーション宇宙論 (指数関数的膨張理論)
インフレーション理論は、ビッグバン直後の宇宙が極めて短時間で急激に膨張したという理論。これを通して、宇宙は指数関数的に膨張した結果、以下の様な特性が生まれた。
宇宙の「均一性」、「等方性」、「平坦性:」 、「ホライズン問題の解決」
この理論は、アラン・グースやアンドレイ・リンドらによって提案され、ビッグバン理論の重要な補完要素として認識されている。
【主な質疑応答】
1)「夜空はなぜ暗いか?」をより詳細に
⇒宇宙は時間・空間ともに有限であり、138 億年前の光は地球に届いていない、また宇宙は膨張しているために光はその波長が伸び、赤外線にシフトしているために、暗く見える。
2)インフレーション→ビッグバン→「宇宙の晴れ上がり」と変化する中で、ビッグバンと「宇宙の晴れ上がり」は科学的に説明されているが、インフレーションはどうであるか?
⇒インフレーションは不確定であるが、否定する観測事実はない。
3)カシミール効果実験で人工的真空の限界、1000 兆分の 1 気圧の真空の実現方法は?
⇒真空容器内に極低温面を設置し、これに容器内の気体分子を凝縮または吸着させて捕捉し、排気するクライオポンプを使用する。
【感想】
「天文楽」、素敵なアイデアですね!居酒屋で宇宙について語り合うなんて、情熱と知識を共有する素晴らしい機会だと思います。
こうした議論は、お酒を飲みながらの真剣で興味深い会話になるに違いありません。
「宇宙の謎」に対するこのような情熱は素晴らしいですね。次に議題に上がる宇宙の話題は何でしょうか?
【文責 庄子 房次】
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