第249回セミナー報告「銀河はどのように生まれ進化してきたのか」2024年1月
2024年 01月 28日科学技術者フォーラム2024年1月度(249回)セミナー報告
「銀河はどのように生まれ進化してきたのか」
日時:2024年1月20日(土) 14:00~16:45
会場:品川区総合区民会館(きゅりあん)第1特別講習室 + ZOOMオンライン
参加:40名(会場26名、web14名)
演者:文教大学教育学部教授 博士(理学) 長島 雅裕 氏
【講演要旨】
1.銀河とは
我々の銀河系は直径10万光年くらいの渦巻型銀河で約1000億個の星で構成されている。この中で太陽系は辺境部に位置し、中心方向を見ると天の川のように見える。
我々の銀河系は大きい方で、太陽は典型的な恒星。 恒星間はおよそ3、4光年くらい。太陽から最も近いαケンタウルスで4.4光年。 ※天文学では数倍、数分の1は誤差の範疇のこと。
多くの銀河の中心にはブラックホールがあり、近年その撮影に初めて成功、ブラックホールが可視化された。
銀河には、年に数個ぐらい星が誕生する①ガスが多い「渦巻き銀河」、古い星がほとんどの②「楕円銀河」、③「レンズ状銀河」、④「不規則銀河」があり、③④は、①②に変わっていき、①は合体して②になっていく。 ※銀河は合体する、合体しても星の衝突は殆ど起こらない。
2.宇宙の構成要素
銀河は中心にブラックホールを持ち、盛んに星形成が行われている「ディスク」部、まばらな「球状星団」とダークマターが主で圧倒的サイズの「ハロー」と呼ばれる部位に模式される。 エネルギー密度的には「バリオン」と呼ばれる通常原子(H、He、Oなど)が5%、その他のほとんどが「ダークマター」「ダークエネルギー」で占められている。ダークマターの実態は謎であるが、未知の素粒子などが予想され、これがないとさまざまな現象が説明できない。例えば、銀河周辺部の回転速度(ドップラー効果で測定できる)が落ちないことや、銀河団の高温ガスが飛び散らないことは、銀河を形成する星の重力エネルギーだけでは説明ができない。
3.宇宙の膨張と熱史
宇宙誕生と形成のシナリオである。約138億年前、高エネルギー密度の真空が相転移を経て急激な膨張(インフレーション:まだ実証されていない)が起こり、相転移が終了して、ある種の潜熱が生じ、宇宙は再び熱くなった。(ビッグバン)その後は重力により減速しつつ膨張した。
最初の3分でプラズマ状のH、He核が生成、40万年後に温度は低下し、原子の中性化(宇宙の晴れ上がり)がおこり、その数億年後にfirst startが誕生した。
宇宙は均質な密度ではなく、銀河による網目構造を形成している。このムラは宇宙の初期における揺らぎが原因であり、ダークマターの影響が含まれる。
4.天体の形成
宇宙の密度の異なるムラムラの領域では重力が支配的となり、ガス(原子)や塵が自身の重力によって集まり、収縮し、高温、高密度の核が形成され、核融合により星が生まれる。小質量ハローの合体により大質量化、星形成がなされ、銀河同士の合体、銀河中心にブラックホールの形成が起こって、現在の宇宙が誕生したものと考えられる。
5.ガスと星
初期の宇宙は均質であったが、微小な密度の揺らぎはあり、ダークマターがこの揺らぎのもと集まり、ダークマターハローを形成、孤立した天体にまで行きつく。
H、Heなどのバリオンもダークマターの重力場に集まってガスのハローを形成、ガスのハロー内ではガスが重力により収縮し、高温、高密度の領域が形成される。ハローサイズが1/10程度まで収縮していくと星となるようだが、不明な点が多い。
太陽の8倍より質量の大きい星は超新星爆発を起こし、物質(重い元素)、エネルギーを放出し、周囲のガスを拡散、まわりのハローへ影響を与え、しいては宇宙全体の均衡に影響を与える。この現象が超新星フィードバック。
銀河形成の準解析的モデル化は大型コンピューターを駆使し、盛んにおこなわれている。ダークマターハローの形成をモデリング化し、その中でバリオンの挙動を計算し、ガス~星の形成がシミュレーションされ、評価される。
6.銀河中心ブラックホールと活動銀河核
銀河の合体に伴い、ブラックホールも合体する。この過程で重力波を放出する。重力波は空間のさざ波のように伝わり、これをきちんと観測、検出されるようになれば、ビッグバンからブラックホールまで宇宙のさまざまな情報が解明される可能性がある。
【質疑応答】
Q1:2つの銀河が衝突した場合、どちらが新銀河の中心となる?
→均衡をとるようになる
Q2:ブラックホールの写真、手前が明るいのはなぜか?
→こちらから見て、裏側から来た光も加わるから明るく見える
Q3:渦巻銀河の渦はどちら廻りか?
→まだわからない
Q4:地球上には多くの元素があるが、クラーク数であらわされる存在比はどのように決まるのか?
→星形成時の核融合により重い元素は作られる、安定な元素の存在比はその時に決まる。
Q5:ダークマターの運動と通常の物質の運動との違い?
→ダークマターは重力と相互作用しないので、中心に集まらず、中心に対し行ったり来たりする。したがってダークマターは収縮不能で、回転せず、径方向に運動するだけである。
Q6:渦巻銀河の中心にバルジが形成されるが、どのように膨らみ、円盤と分離されるか?
→初期、大銀河でガスが降ってきてそれが遠心力との釣り合いで収縮し、円盤が作られた。
バルジはそれ以前に形成されている。またブラックホールとバルジとの関係は不明である。
Q7:真の真空の温度とはどんなもの?その温度の測定手段は?
→温度によって真空の定義が変わるということである。またその温度測定は不明である
Q8:マルチバースという考え方の評価?
→マルチバースの存在を考えると、様々なことが理解される。特に我々の宇宙は特別でなく、多くの宇宙の中の一つで、たまたま人間が生まれるような宇宙があったということである。
Q9:宇宙の膨張の妥当性?
→観測事実によって明らかにされた。
【所感】
ビッグバン、銀河の合体、超新星爆発、ダークマター、ガスとちり、ハロー、宇宙背景放射、真空の相転移、インフレーション、星の形成、重力波とセミナーが進んでいくと、とてもわくわくして、ブラックホールがなにかとても身近なものに見えてきました。これは本間先生の観測写真のせいもあるかもしれません。
私は、今回のセミナーに参加して、10年前のアメリカのSF映画「インターステラー」の最後の部分(主人公がAIロボットとブラックホールに落ちていき、多次元の世界を体験、データーを娘に送り人類を救う)を思い出し、鳥肌が立ちました。
今後も、宇宙は未知で、新発見がどんどん出てくる領域であると思います。その折には、先生に3度目のご登壇をいただき、また熱弁をお聞かせいただければと思います。最後になりましたが、長島先生の益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。
【報告者】佐熊 範和