【講演要旨】
1.はじめに:
A) 文明とは、捉え方はさまざまであるが、民族精神を重視した“知徳文明”とは、[自律心+智慧+利他行]である。
B) 基本的問題意識として、
① 現代資本主義・科学技術文明は智徳の進歩を指向しているか?
② AI(人工知能)&DS(データサイエンス)の第4次産業革命は智徳指向か?
2.第1部:科学技術者の20世紀の忘れ物
A) 20世紀科学技術文明は科学技術を人間の欲望(能力・生活空間)の拡大のために極度に利用してきた文明である。当初の”資本主義文明予測“からは大きく外れてきている。
B) 人工物の無秩序な投入が人類と環境にプラスとマイナスの影響を指数関数的に与えることが判った!20世紀は科学技術文明の実用実験の時代であった。
C) 文明の評価は「功罪あい半ば」と言える。科学者・哲学者の警告は20世紀の忘れ物であり、21世紀の科学者・技術者への宿題である。
D) これからの文明システムは、ポジティブフィードバック型成長文明からネガティブフィードバック・動的恒常性維持型文明へ、即ち文明の計測制御が必要となってくる。
E) 科学者・哲学者から本質的な問いかけもあり、基盤となる科学技術は使い方で功罪を発生させることが世界の一般市民レベルで徐々に認識され始めた。(例えばSDGs)
3.第2部:人工知能とデータサイエンス(AI&DS:IoE含むDXの影響と限界)
A) AIは広範な応用が可能な第4次産業革命の有力な手段である。
B) シンギュラリテイは起きないが,人びとの労働、生き方に大きな影響がある。
C) AIも功罪を発揮する(20世紀の宿題)
D) AIも“限界の科学”を超えられない。“限界の科学”を認識した科学技術の方が“成熟”した文明と言える。
E) AIの利用目的と社会への適用には慎重な吟味が必要で、新薬のように実用実験のステップを踏むべきだ。
4.第3部:人工知能(AI&DS)支援による知徳文明とは(基本的問題意識から)
A) 現代資本主義・科学技術文明は智徳の進歩を指向しているか? →このままではNO!
B) AI&DSの第4次産業革命は智徳指向か?
→産業革命ではなく「社会全体改革」なら智徳指向になりうる。その実現の為には、
①「全ライフステージ生存システム」の構築:人間の欲望拡大の緩和が必要。
②「国家・自治体予算の計測制御」による国家財政の健全化と国民の他律性からの脱却が必要。
C) 智徳文明のヒント
① カール・ボランニー:経済は、“互酬”、“再分配”、“交換”の3つ。
② 色々な資本主義の提言:現状は「成長資本主義」と「消費資本主義」。
→新たなものとして「公益資本主義」「脱成長コミュニズム」。
(例)モンドラゴン労働協同組合、気象危機問題が契機。
D) AI知徳文明”ビジョン“(自立心+智彗+利他行):
「一人一人を大切にする”柔らかな”資本主義・科学技術文明」の構築。
E) 具体例:「文明の計測制御システム」「一人一人のライフステージ生存システム」「半自律型田園産業都市構想」等いずれも“生存OS”がカギ。
5.結論:AI&DSによる知徳文明構築への道
A) 現状の資本主義社会では、アダム・スミスの「見えざる手」による需要と供給のバランスもスムーズな富の分配を目指す「トリクルダウン仮説」も十分機能していない。 AI&DSはこの両面を支援する手段になりうる。
B) 今求められて入るAI&DSを含むDX革命の目的は、現代資本主義・科学技術文明を計測制御し、成長拡大から動的恒常性維持型文明に相転移することである
C) 国民一人一人の「自由」と「平等」、文明の「進歩」と「調和」、このXY軸のゆらぎを計測するのはAI&DS、それを制御するのは国民の智徳の進歩である。