第218回セミナー報告「知っ得!“たまご”のお話し ~農場から栄養、販売、ヨード卵まで~」2021年1月
2021年 01月 29日科学技術者フォーラム 2021年1月(第219回)セミナー報告
「知っ得!“たまご”のお話し ~農場から栄養、販売、ヨード卵まで~」
1.日時 :2021年1月16日(土) 14:00~17:00
2.場所 :ZOOMによるオンライン(WEB)配信のみ
3.参加者:23名
4.題目 :「知っ得!“たまご”のお話し ~農場から栄養、販売、ヨード卵まで~」
5.講演者:日本農産工業株式会社 ヨード卵部 横山次郎氏
<講演要旨>
1) “たまご”の生産と流通
・食用たまごは100%国産。採卵鶏の飼育戸数は1970年からの10年で急激に減少、今は2000戸ほど。採卵生産量は1990年から現在までほぼ約250トンで推移。
・たまごの消費の50%は家庭消費、30%が中外食向け、20%が加工向け。
・世界でたまごを一番食べるのはメキシコ、日本は2番目で338個/年。また、生卵を習慣的に食べるのは日本だけである。
2) たまごの安全性
・鳥インフルエンザ及び食中毒菌のサルモネラの感染リスクに対しては、採卵環境、流通とも万全の措置を取っている。よしんば菌がいたとしても(3個/10万個)「食品衛生法」や「鶏卵取引要領」で定めた賞味期限(最長21日)と保管条件(10℃以下)ではサルモネラ菌は増殖できない。従ってこの条件下では、殻にヒビ割れが無ければ生卵で食べて良い。賞味期限を過ぎたら、加熱処理すること。
・サルモネラ菌食中毒としては、以前は、卵や畜肉が原因食品だった。熱に弱いので、加熱で死滅する。発生件数は20件/年程度に減少した等。
・高病原性鳥インフルエンザが発生し、周囲の鳥に感染拡大させないために大量の鶏が殺処分されるニュースを耳にする。このインフルエンザウイルスに濃厚接触すると人は気道から感染することがあるが、「鶏肉や鶏卵を食べることによって、人に感染したという事例の報告はない」。
3) 卵と鶏の構造の特徴
・卵の卵黄の両側から出ている“からざ”の役割:卵黄を卵の中央に固定するための紐。シアル酸(細胞のアンテナを構成する糖の一種で様々な情報を受信。加齢と共に減少、アンテナが短縮し、免疫力低下 )が含まれる。
・白身の役割:胚の発生に必要な水分を保持しつつ供給し、加えて胚と卵黄を物理的、化学的に保護する役割も持つ。含有されるリゾチームには殺菌作用があり、アルブミンは細菌が増殖に必要とする鉄と結合しているので細菌には不利な状況である。
・鶏卵はなぜ楕円形?:転がりにくく、巣から落ちないため。
・そ嚢、筋胃(肝)、膀胱:鳥は空を飛ぶために軽量であることが重要。全ては軽量化するためで、消化時間を短くし体に余分な水分を保持しないようにする。
・膀胱はなく、排泄は尿酸として総排泄腔へ。卵巣、卵管の右側は消失した。歯はくちばしになった。
・骨の構造:骨の中は中空で軽い。つぶれないように含気骨という支柱・筋交いが入っている。
・鳥類は恐竜の行き残り?:鳥類の祖先も獣脚類の恐竜の原鳥類から進化した。始祖鳥はあくまでも“鳥”であり、恐竜との繋がりを示すものがなかったが、羽毛の痕跡が見つかっている恐竜は20属以上にのぼり、そのほとんどが獣脚類である。
4)栄養が豊富な卵:
・食品栄養基準や食品成分表を見ればわかる通り、卵はビタミンC と食物繊維以外をバランス良く含む完全栄養食品である。(1個/日おすすめです)
・脂質の1種であるコレステロールは生体が必要とするものであり(ホルモン、細胞膜の原料等)人体には140gが含まれる。食品からの摂取が2-3割、肝臓での体内合成が7-8割である。
・卵にはコレステロールが200-260mg/個含まれるが(体内量140gの1/600)、卵白のシスチンや卵黄のレシチンの働きでコレステロール値が上がりにくい食品である。
・卵を沢山食べても少なくても、血中のコレステロール値は同じであった実験例、またコレステロール値と総死亡率の関係ではコレステロール値の低い男性群の死亡率が高いという調査結果報告もある。
・過去に食物中から、コレステロール摂取制限が設けられたことがあったが、根拠となるデータが不適切なものであったので、現在摂取基準はなくなった。
5) マーケティングにおける卵の特徴
・①卵は、スーパーでお客様を引きつけるマグネットであるので、店内を循環するような場所に置き、特売にも利用する。②相場は夏安く冬が高い。従って卵をたくさん使うクリスマスケーキは夏場に作り、冷凍保管しておく場合が多い。③九州では赤い黄身が好まれる。④名古屋ではモーニングでの需要があり、小さい卵が好まれる⑤北陸では大きな卵が好まれる。⑥大阪の卵サンドには厚焼き玉子が入っている。⑦北海道では茶わん蒸しは甘く、具の定番は栗の甘露煮。
6)ヨード卵 光
ヨード卵・光の以下に示す主な機能はin vitro 、動物実験あるいは臨床実験で全て実証され、科学雑誌に掲載済みである。
・①血中コレステロール改善作用、②乳がん予防作用、③抗老化作用(アンチエイジング)、④活性酸素消去作用、⑤血糖改善作用、⑥抗アレルギー・抗炎症作用、⑦創傷治癒作用、⑧ヨード卵抽出脂質の発毛育毛効果 in vitro
・調理特性・ヨード卵の味覚:ヨード卵と普通の卵でスポンジケーキを作り味覚の比較を大学との共同研究で実施した。ヨード卵では生地が良く膨らみ球状の泡が連続、ふわっ!、しっとり触感、こくがあるとの結果であった。
<Q&A>
Q1.大規鶏舎の卵と地鶏の卵の違いは?
・卵に関しては、違いはない。
Q2.採卵鶏の原種はアメリカより輸入が大半と聞いているが?
・原種鶏は、大半がドイツ、オランダ、アメリカなどからの輸入。
Q3.卵の洗浄とクチクラ層の有用性と相反する考えは今後どのような方向にいくのか?
・クチクラ層は残さず洗浄を優先している。オゾン水あるいは次亜塩素酸水を使用し、卵の中に洗浄水が入らないように、卵より5℃高い温水で殺菌洗浄している。
Q4.冒頭お話の合った千葉の養鶏場は日本で一番大きいのか?全国でこうした養鶏場はいくつくらいあるのか?
・ヨード卵の農場では最大。日本の養鶏場は2000か所程度有るが、内、数十万羽鶏を使用する大規模農場が100か所有る。
Q5.鳥以外ではスーパーで見かけるウズラの卵以外の他の鳥の卵は?
・ダチョウの卵がある。
Q6.ヨウ素の食品強化はどのような方法で行うのか?
・鶏の飼料に海藻粉末を入れることで、ヨウ素を増やしている。
Q7.ヨード卵のヨード含量は?
・1300μg/100g(全卵)
Q8.ヨード卵と昆布粉から取ったヨウ素の違いは?
・同じ成分であるがいずれも他成分との結合状態は不明。ヨードは水溶性でありまた単独ではヨード卵の様な健康効果はない。
<その他>
・ヨード卵の技術保護については、特許は切れたが、販売力(口座開設等を含む)が重要であり、現状では市場では独占的立場にある。
<所感>
・身近な完全栄養食である卵、鶏の知っ得情報が面白かったです。またヨード卵の機能性の実証を通して、微量元素であるヨードが甲状腺ホルモンの原料であるだけでなく、生体内の多くの臓器・細胞レベルで働いていることがわかり有意義でした。
(報告者:後藤 幸子)