第214回セミナー報告「宇宙誕生最初の1秒の謎と、素粒子の標準模型を超える物理」2020年9月
2020年 10月 23日R2年9月度(第214回)セミナー報告 2020.10.19水越
1.日時 :2020年9月22日(火) 14:00~16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F第4講習室
3.参加者:48名(web参加38名)
4.題目 :「宇宙誕生最初の1秒の謎と、素粒子の標準模型を超える物理」
5.講演者:東京大学理学系研究科物理学専攻物理学科准教授 濱口 幸一 氏 (自宅からZOOM接続)
*今回、WEBセミナー&一部会場視聴と二元的な開催をおこなった。最初は音声トラブル等もあったが、10分遅れ程度で、無事開催出来た。今後の二元的セミナー開催のための有意義な経験となった。
<講演要旨>
1.宇宙の膨張の話し:
・宇宙誕生から140億年、ビックバンから30万年後に出た光が、今観測出来る、背景輻射となっている。
・宇宙に残された謎、消えた反物質、ダークマター、暗黒エネルギー。
・1sec~3分の間に出来たHeの量は、理論と測定が一致している。
・素粒子は、ラグラジアンと標準模型で説明される。右巻きスピン電子、左巻き電子スピンから電子が構成される。10-10sec後で3つのクオーク、中性子は、0.01sec~1sec後。
・最初の1秒の謎を解くためには、素粒子物理が必要。
2.素粒子の話し:
1970年頃からクオークが、更に第3世代のクオーク、レプトン、ゲージ粒子と続き、2012年に標準模型の最後の粒子のヒッグス粒子が発見された。しかし、謎は残った。
3.宇宙の謎と素粒子の標準模型を超える物理
・宇宙の謎、はじめは凄く平坦。|Ω-1|<0.002→1万分の1の揺らぎは謎の一つ。インフレーションの予言に合っている。
・消えた反物質の謎。3億分の1だけ、反物質より物質が多かった。3億分の1多かった理由は、CP対称性の破れだけでは説明出来ない。有力候補は、レプトジェネシス。右巻きニュートリノは一人三役。①クオーク・レプトンが統一される。②何で軽い?ニュートリノ質量説明。③物質が多い理由を説明出来る。
・宇宙にある27%のダークマターとなれるものは標準模型に無い。超対称性理論SUSY粒子が有力候補。SUSY粒子によって、①大統一理論の三つの結合定数が一致、②ヒッグス粒子の不自然さが解消、③暗黒物質の候補がある。④ひも理論も超対称性である。
・暗黒エネルギーは、宇宙が膨張して密度は一定。エネルギー項は、ゼロではないが小さい。お手上げの状態で、新しい枠組みが必要。今世紀最大の謎になるかもしれない。
4.最近の研究の話し
・WIMP暗黒物質は、中性子星の中で対消滅する?中性子星を暗黒物質が温める。古くても温かいものが見つかっている。
・DMヒーティングは、3000KであればOK、2000K以下であれば否定される。
・赤色変光星のペテルギウスが将来超新星になった時、ダークマター物質(アクシオン)を観測出来るかも知れない。その装置を提案した。
5.Q&A抜粋
Q:左巻き電子と右巻き電子がヒッグス粒子で結びついて電子になるということは、その質量は、ヒッグス粒子によるということですか?
A: Yes!
Q:反物質が対消滅で光になると、宇宙は明るくなってしまわないのですか?
A:宇宙は膨張しているので、明るくならない。
Q:宇宙の膨張の速度が光の速度を超えることは、将来ありますか?
A:超えることはないと思うが、遠い将来あるかも知れない。
Q:既知の物質界においては、物質は原子、分子によって表現され、原子、分子は素粒子の組み合わせによって定義されている。『暗黒物質』も同じように素粒子を基本単位として定義されると考えてよいですか?
A:Yes.ただし、暗黒物質固有の新たな素粒子が存在し、素粒子間の結合を司る別の素粒子も存在するのではないかと想定されている。その新たなる素粒子が探索対象となる。
Q:先生の研究は、どんなことに役に立つのでしょうか?
A:1000年先、1万年先に役に立つかも知れない。アインシュタインの理論が、GPSに生かされているように。
Q:宇宙の外はどうなっているのでしょうか?
A:光の速さも有限なのでその先は見えない。そのまま続いているだろうがさらにその先は不明。
Q:ヒックス粒子は8年前に始めて分かったのか?
A:粒子があるだろうと言うことは分かっていたが、実際に見つけたのは8年前。
Q:膨張に伴って光の波長が長くなるとエネルギーは減るのでしょうか?
A: 光子のエネルギー密度は減少するが、その分は宇宙を膨張させる仕事に使われる。
Q:1秒後と現在でどのくらい大きさが違うのでしょうか?
Q:参考文献は?
A:HPにスライドがある。 大栗先生の「強い力と弱い力」等