第199回セミナー報告「3Dプリンターの基礎から最新動向まで」2019年1月
2019年 02月 12日H31年1月度(第199回) セミナー報告
1.日時 :2019年1月26日(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 4F第1特別講習室
3.参加者:45名
4.題目 :「3Dプリンターの基礎から最新動向まで」
5.講演者:株式会社マイクロジェット、株式会社3Dプリンター総研 山口修一氏
<講演要旨>
1.3Dプリンターの基礎
積層造形法(additive manufacturing)によって3次元オブジェクトを造形する3Dプリンターには以下の各方法がある。
1)材料押出法:樹脂をヒータで溶かし、圧力を加えてノズルから押出して積層
2)液槽光重合法:光造形法、紫外線硬化樹脂を紫外線で硬化させて積層
3)シート積層法:紙・樹脂・金属のシートを接合しながら積層
4)結合剤噴射法:樹脂・金属・セラミックの粉末をインクジェット噴射のバインダーによって固めて積層
5)材料噴射法: 紫外線硬化樹脂をインクジェットにより噴射させ、それを紫外線で硬化して積層
6)粉末床溶融結合法:金属・樹脂粉末をレーザや電子線で焼結して積層
7)指向性エネルギー堆積法:金属粉末を吹き付けながらレーザ等で溶解させて積層
光造形、インクジェット、レーザ方式等が着実に展開されている。
2.3Dプリンターの市場動向
産業用に関しては、ここ数年前までは販売台数は伸び悩んでいたが、高額な粉末床溶融結合法が伸びてきたので、金額は増加していた。最近はベンチャーの参入が続き次世代型の3Dプリンターが市場を拡大しており、数量も上向きだした。
3.formnext2018(ドイツフランクフルト)に見る最新動向
BigRep(独、材料押出法、高速extruder・プラスチックのみ)、Desktop Metal(米、材料押出法&結合剤噴射法、ステンレス鋼・銅・インコネル等)、Carbon(米、液槽光重合法、高速造形)、Lithoz(オーストリア、液槽光重合法、セラミック粒子を含むUV樹脂で造形、その後焼結してセラミックス化)、HP(米、インクジェットによる粉末床溶融結合法&結合剤噴射法、ナイロン・金属)、Xjet(イスラエル、材料噴射法、ステンレス・セラミックス等のナノ粒子jetting技術搭載)、Nano Dimension(イスラエル、材料噴射法、試作用多層基板造形3Dプリンター)、Sintratec(スイス、粉末床溶融結合法、低価格)、SPEE3D(オーストラリア、指向性エネルギー堆積法、コールドスプレー法、高速造形)等の新製品や新技術について紹介。
4.3Dプリンターの今後
2021年頃には、ノズルを多数配列したインクジェットを応用した結合剤噴射法による高速の金属造形機や安価なダイオードレーザを多数配列した樹脂用の高速造型機の投入が各社より予定されており、3Dプリンターの生産性が大幅に向上する事が見込まれる。この分野で出遅れている日本は、2D印刷分野で得意であるインクジェット技術を活かした造形装置、工法、造形材料開発に集中すべきであり、ユーザ主導のものづくりである個別仕様適量生産のマスカスタマイゼーションへ移行する必要がある。
5.インクジェット技術と産業応用
1)インクジェット技術は、エプソンではピエゾ方式、キャノンではバブルジェット方式を採用している。ピエゾ方式はプリントする液体の入った圧力室の上面にピエゾ素子が設けられ、信号電圧により変位し、液体をノズル(直径約30μm)から液滴として噴出させる。
2)インクジェット技術は、特殊印刷(カーシート、ネクタイ、バッグ)、バイオテクノロジー(遺伝子検査用DNAチップ、細胞のパターニング)、3DPrinting(人口骨、フィギュア、ジオラマ、鋳型、樹脂サンプル)、エレクトロニクス(液晶テレビの配向膜・導光板、銀ナノ粒子液で形成したRFIDセンサの回路形成)等の分野に応用展開されている。
3)エアロゾルジェット:インクを超音波等でミスト状にし、そのミストを窒素でヘッド部まで送り、収束・加速し、対象物に当てて描画する。対象物とのすきまは5mm、最小線幅10μm程度でパターンを形成し、500mPa・sの高粘度液材料にも対応可能である。携帯電話などへの3Dアンテナ、センサ印刷に応用されている。
<質疑応答>
1)3Dプリンターによる金型製作
→冷却水路を備えるような金型造形に関して日本は得意であり、3Dプリンターで製造できる企業がある。またレーザ焼結によって製作する金型は密度が高く、実際の使用に十分耐える。
2)インクジェット技術について
→液体噴出のノズルはオリフィス形状の精度が±1μmであり、液体にゴミ、空気が混入されていないことが重要である。ノズルからインクを吐出する場合、いったんノズルにかける圧力を負圧にしてインクを内部に引き込み、それから圧力をかけて押出す引き打ち法が採用されている。この方法により液滴の大きさを小さくし、液滴スピードをアップしている。
3)インクジェット技術のバイオテクノロジーへの応用で、人工臓器製造への応用の現状
→ヨーロッパやアメリカでは盛んに研究中、日本はまだこれからである。
4)パソコン印刷用のインクジェットプリンターのインク
→純正品を使用するのが好ましい。使用済みの純正品カートリッジにインクを詰め替えたものは比較的良いが、一旦トラブルが起こると回復しにくい。注射器で注入するようなものは空気が侵入しやすいため、あまり好ましくない。
<感想>
インクジェット技術が印刷だけでなく、エレクトロニクス、バイオ等の分野に応用展開されていることを知り、驚きました。また非常に変化の速い状態で、省資源、省エネルギーに優れる新たな生産革命が始まっているとのことです。日本の企業にとって、大きな活躍の場がありそうで、今後とも大いに期待されると思います。
(木村芳一)