科学技術者フォーラムH29年11月度セミナー報告「IoT革命は電子デバイスに一大インパクト」
2017年 12月 28日H29年STF11月度(第185回)セミナー報告
1.日時 :2017年11月25日(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 6F 大会議室
3.参加者:80 名
4.題目 :「IoT革命は電子デバイスに一大インパクト」
5.講演者:(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷 渉 氏
<講演要旨>
1.市場規模から見たIoTの位置づけ
世界で一番大きい市場は、1300兆円のエネルギー産業である。
内訳は 石油 600 兆円
石炭 200 兆円
ガス 300 兆円
原発 100 兆円
次に、医療 560兆円、食料 400兆円、自動車 300兆円である。
IoTの市場規模は、360兆円でありインパクトが大きい。
2.IoTにおけるキー要素
1.AI 2.センサー 3.ロボットである。
2-1 AI
AIの分野は日本の不得手な分野で、日本の強みは発揮できないだろう。
AIに人間の仕事が全て持っていかれる心配があるようだが、それはないと思う。
IBMワトソン君の消費電量 200kW、人間は20Wで、エネルギー面からAIに置き換えられない。
更に、ノイマン型半導体は、人間の得意な同時並行処理は難しく、新たな変化が生じると対応できない。量子コンピュータなら可能かもしれない。
2-2センサー
日本人の五感センスは絶妙であり、センサー分野の世界シェアーは、50%である。
代表的なものは、スマホ用 C-MOS(ソニー 50%)である。
DRAMを搭載したC-MOSは、1000フレーム/秒の処理能力で100〜200km/hのスピードに追従できる。更に、0.005ルックスでも見えるC-MOSは、1km先の物も識別可能である。
IoTでは、45兆個センサーが使われ、現状3〜4兆円の市場が、2021年10兆円市場になる。
2-3ロボット
ロボット市場でのデファクトスタンダードを持っているのが日本の強みである。
ロボットの世界標準として
●ペット用ロボット(ソフトバンク)●HSR(トヨタ)を持っている。
人間は、歩くにしても500位の状況に合わせた筋肉の使い分けをする。
ロボットに近い動作をさせるには、多くのセンサーが必要となるという点が日本の強みの発揮どころである。
日本では少子高齢化に伴う人手不足で作業支援ロボットの導入がさらに進むだろう。
ロボットに付随するデバイスとして、電力制御パワー半導体がある。この分野も日本の強い所である。(三菱電機、富士電機など)
3.IoTへの半導体の関わり
半導体市場は、40兆円→100兆円へとIoTで飛躍的に伸びる。
既存の半導体市場は、伸び悩むがIoTでNANDは伸びる。
データセンターの記憶容量8ゼタバイト(2016年)→44ゼタバイト(2020年)と飛躍的に増加し記憶装置はHDD→NANDへ置き換わるだろう。
HDDは、現在全世界のエネルギー3%を消費し、2020年には、10%となり現実的ではない。NANDは、スピードが速く、電力も1/3と低い。
東芝は、技術面でもサムスンと唯一対抗できるメーカでもある。従って、強気な半導体設備投資をしているのが頷ける。
4.半導体製造の素材・装置
半導体製造に関わる素材・装置は日本が強い。
4-1 Siウエハー(世界シェア70%)・信越、SUMUKO
4-2フォトレジスト(世界シェア60%)・東京応化、富士フィルム
4-3フォトマスク(世界シェア50%)・大日本印刷、凸版印刷、HOYA
4-4エッチャー(世界シェア40%)・東京エレクトロン、日立ハイテック
露光、洗浄でも強みを持つ。
一般電子デバイス(世界シェア40%)・アルプス電気、太陽誘電、村田製作所など
Q&A
Q 東芝メモリー3社連合に対してのWDの訴訟があるが今後どうなるか。
A WDは旗を降ろすと思う。東芝からNAND供給されなくなり損失が大きい
東芝をコアにSK、WD、東芝連合でサムスンに対抗したほうが利益あり。
Q 日本の半導体が負けたのは、ビジネスではなく安く作れなかったから負けた。 センサーもそのようになるのではないか。
A NANDも価格でシェアー取られた。サムスン保証3年、東芝保証30年の
工程数の差である。
IoTに使用するものは、3年保証で良いかは疑問、それ以上の保証が必要なところでは勝てる。
Q 有機エレクトロニクスの今後の見通しはどのように考えていますか?
A サムスン90%,LG10%の市場シェアであるが、歩留まりが非常に悪いのが問題。
現状、消費電力が液晶より大きく、精細度は液晶にかなわない。
更に、焼き付きの現象が存在し寿命2年といわれている。
技術の安定という点で、20年程度はかかると思う。
日本勢もインクジェット方式で巻き返しを図っている。
Q パネルとしてのマイクロLEDについてはどの様に見ていますか。
A 有機EL(2018-2022年)マイクロLED(2023-2025年)でポスト有機ELと予想。
日本勢も投資し本腰を入れているが、マイクロLEDでもサムスンが先行している。
(報告者:東海林 節夫)