科学技術者フォーラムH29年9月度セミナー報告「再生可能エネルギーとしてのバイオマスの役割と今後の展開」
2017年 10月 16日科学技術者フォーラムH29年9月度(第183回)セミナー報告
「再生可能エネルギーとしてのバイオマスの役割と今後の展開」
1. 日 時:2017年9月18日(月)14:00 〜16:40
2. 場 所:品川区立総合区民会館「きゅりあん」4F第1特別講習室
3. 参加者:39名
4.題 目:「再生可能エネルギーとしてのバイオマスの役割と今後の展開」
5.講演者:(国研)産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所・所長代理
坂西 欣也 氏
<講演要旨>
福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は、政府の東日本大震災復興の基本方針を受け、2014年4月、郡山市に開所。国内外の研究者や職員計421名(H29年3月)、研究費28億円(H28年度)で、「再生可能エネルギーの研究開発の推進」と「新産業の集積を通した復興への貢献」を使命とし、以下の研究開発・技術開発を精力的に取り組んでいる。
1)主な研究開発テーマ
?再生可能エネルギーネットワーク(蓄電池や水素貯蔵、機器制御系)の開発・実証
?水素キャリア製造・利用技術
2)再生可能エネルギーの発電比率
・現在の再生可能エネルギー(水力を除く)の発電比率は、日本4.4%、独23.6%、スペイン25.9%、英17.6%、米6.9%。2030年の我が国の再エネ発電比率の目標値は22〜24%。
3)バイオマスへの期待
・バイオマスの利活用技術は、資源エネルギー安定供給・環境保全・経済発展のトリレンマを克服する資源循環型社会の実現に寄与。
・バイオマス産業は、2025年、5千億円の市場形成が見込まれている。
・我が国のバイオマスエネルギーのポテンシャルは、約11百万トン(炭素換算)、総発熱量約460PJ/Y、電力利用可能量は約130億kWh/Y。
・H29年4月、新たな「バイオマス利用技術ロードマップ」が策定され、リグニンのマテリアル利用や資源作物のエネルギー利用が盛り込まれた。
4)バイオマス発電
・バイオマス発電は、地域密接の林地残材や廃材を用いる「木質バイオマス発電」と家畜糞尿や下水汚泥を用いる「バイオガス発電」であり、地方創生の観点からも期待されている。
・バイオマス発電量は現在252万kW(発電比率:1.8%)だが、2030年度は602〜720万kW(発電比率:3.7〜4.6%9)の導入が見込まれる。
・バイオマス発電による電気の買取価格(2017年度)は、13〜40円/KWh(税抜)。
5)木質バイオマス発電
・木質バイオマスの過半を占める林地残置の間伐材等(2千万㎥/y)のほとんどが未利用。
・木質バイオマス発電の原価構成は、原料の搬出・運搬やチップの加工・運搬が約7割。
・小規模バイオマス発電は効率が低い。
・未利用材の利用促進のため、2千kW未満の電力の買取価格を¥40/kWhへと優遇。
6)バイオマス産業都市
・バイオマスを活用した産業創出と地域循環型エネルギーの強化を目指したまち・むらづくりに取り組み事例が紹介された(北海道十勝地域など)。
7)災害対応&エネルギー自立型農山漁村システム
・木質系災害がれきを活用したバイオマス発電に加えて、太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーと電力制御技術を駆使した地域に根ざした自立型システムの紹介。
・震災廃棄物の処理と放射性物質の適切な処理を可能にするシステム構築の取り組みも紹介。
8)再生可能エネルギーを組み合わせたバイオマスの高効率利用技術の開発例
・地中熱/地熱利用の木質バイオマス乾燥&半炭化・バイナリー発電&コジェネプロセス。
・CO2ヒートポンプや太陽利用による木質チップ乾燥・熱分解・ガス化発電プロセス。
・廃棄物系バイオマスの高効率乾燥・バイオガス/液体燃料製造・コジェネプロセス。
・低炭素社会に向けたバイオマスコンビナート構想の実現に向けた総合的な取り組み。
9)アジア諸国との持続可能なバイオマス利活用に向けた連携の紹介
10)世界のバイオマスエネルギー需要とポテンシャル、2030年目標の紹介
11)バイオマスの高効率利活用〜“太陽と木陰と木炭”=>温木知薪と産総研の役割紹介
<主な質疑応答等>
イ)水素キャリアとは?
→例えばトルエンを水素化してメチルシクロヘキサンにして輸送・貯蔵し、脱水素した水素を用いたあとはトルエンに戻る。
ロ)廃棄物系バイオマス(生ごみ等)利用の課題?
→生ごみは大半が水分で、ほかにプラゴミなどが混入し分別が難しい。焼却施設とバイオマスセンターを併設し対処している事例がある。賞味期限切の食品など素性の明確なものを使うなどの工夫も必要。
ハ)バイオマス発電について農林関係部署と将来構想を議論しているのか?
→地域特性に応じた取り組みをしている。
二) STFでも北海道下川町のようなヤナギ栽培によるバイオマスプロジェクトを関東で農研機構や森林総研と共同で進めたが、事業仕分けの対象となった。産総研のような全分野を掌握できる機関のご指導を頂ければよかったと考えている。今後のバイオマスプロジェクトは是非産総研のような大きな権限のある所のご指導を仰ぎたい(今後のお願い)。
(報告者:太田 哲夫)