科学技術者フォーラムH29年8月度セミナー報告「マテリアルライフの評価技術とその周辺
2017年 09月 18日H29年8月度(第182回)セミナーの報告
1.日時 :2017年8月19(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第2講習室
3.参加者:39名
4.題目 :「マテリアルライフの評価技術とその周辺」
5.講演者:クレスール(株)(元ダイプラ・ウィンテス(株)/ 木嶋 芳雄氏
<講演要旨>
身近な事例から様々な劣化現象を取り上げ、その現象を掘り下げて評価技術の現状などを解説された。
★人造物は変化する
・ 地球に存在するものはすべて経年で変化する。あのナイヤガラの滝も3cm/年で後退しており、25,000年後には無くなってしまう。 身の回りの看板、標識を見ると、退色して赤が飛んで読めないもの、プラスチック部が朽ち果てているもの、鉄部が真っ赤にさびているものなど、設置目的や使用に耐えないものが数多くある。これらはすべて「変化・劣化」現象である。「変化・劣化」を表現する言葉は数多くあり、老化、劣化、崩壊、変質などがある。
・ 「寿命」とはその商品が、使用目的に耐えられなくなった時、機能を喪失した時と言えるのではないか?
★耐久性の重要性
・ 劣化が進み、耐久性に劣る材料は改修しなければ、性能を維持できない。建築構造物などは顕著で、イニシャルコストだけで考えていくと大変なことになる。過去の新聞記事から東京都庁の改修費は1,000億円規模に達することや屋内用を誤って屋外に使用し事故になった例など紹介があった。
★耐候性試験に関して
・ 屋外暴露は時間がかかるため、人工光源を用いた促進耐候性試験機が利用される。1.キセノンアーク灯式、2.紫外線蛍光灯式、3.サンシャインカーボンアーク灯式、4.メタルハライドランプ方式などがあるが、1.のキセノンアーク灯式が世界主流である。
・ 耐候性は同じプラスチック(たとえばポリプロピレン)を使っても、顔料配合、添加剤配合、加工条件などによりまったく異なるデーターとなる。また、キセノンアーク灯式を使用したといっても、フィルターの新旧、照射エネルギー強度の違い、運転条件(照射、降雨、BPの設定温度など)により劣化スピードは異なる。
★規格試験の位置づけ
・ 企業における促進耐候性データーの位置づけを考えてみると、実暴との相関性、促進性は研究、製品開発には有用であるが、商取引では促進性と再現性が重要となり、規格試験という説得力で営業的には有効な手段である。
★促進耐候性試験データーは「ばらつく!」
・ 促進耐候性試験機自体の性能が変化し、それが「ばらつき」の原因となる。
・ 人工光は短波長カットフィルターのUV透過率が変化する。また、ブラックパネルや、ブラックスタンダードなどセンサーの汚れや、塗膜劣化により変化する。
・ 水もイオン交換樹脂の使用限度を超えて使用を継続すると吸着したイオンの漏出がある。これら機器に関するメンテナンスを怠ると信頼できるデーターがとれなくなる。
★見える化技術の紹介
「見えない」ところを「見える化」する技術として、表面の傷やごみを見やすくする「グリーンライト」、コーティング膜のクラック発生過程を観察できる「カッピング試験法」、多層膜の内部分析や劣化塗膜の深度分析などに使用可能な「サイカス法」や塗膜と界面の破壊状態を評価する「フィルメータ」、高温の塩水噴霧を利用し、従来法より短時間で腐食性を評価可能な時間短縮「SACTEST」試験法の紹介があった。
★質疑応答:
1. メタハラ開発時の苦労は?
他にない評価機器であったため、売れるまでに時間がかかった。大手会社に採用されるようになると売れるようになった。
2. サイカスの刃先のRは?
ダイヤモンドで50nmから100nmくらい?
3. サイカスで、切削スピードを速くするとどうなるか?
切削でなく、むしり現象となるため不適切。
4. サイカスのJIS化は?
モノポリであるため困難
以 上 (報告者:佐熊 範和)