科学技術者フォーラムH29年7月度見学会報告「日本水産(株)八王子総合工場」
2017年 08月 06日 NPO法人 科学技術者フォーラム 主催
2014年7月度 日本水産(株)八王子総合工場見学会 報告書
・見学日:平成27年7月6日(木) 見学時間:14:00〜16:00
・見学先:日本水産株式会社 八王子総合工場 (東京都八王子市北野町559−6)
・見学団体名:NPO法人 科学議受t者フォーラム(略称STF)
・参加者:42名
・応対者:八王子総合工場工場長瀬々義之様はじめ、吉田課長様、石原工場長様、加藤様、武田様
により会社概要説明、見学案内、質疑応答にご応対いただいた。
(注) 当初、会社及び工場概況説明、工場見学、質疑応答の順番が予定されていたが、
当日の工場操業の都合上、現場見学が先行実施された。
1. 工場見学(14時10分〜16時00分)
約20名ずつの2班に分かれ、魚肉ソーセージ、カニフレーク(カニカマをフレーク状にしている)の各製造工程を見学した。(各1時間弱)
【ソーセージ製造】
・原料は北海道、アラスカ、チリ、東南アジア等で調達した冷凍すり身である。この原料の冷凍すり身は魚種、肉質、添加物の有無により等級を分けそれぞれ色分けされたプラスティックシートで包装されている。主なる魚種はスケトウダラ、タチウオなどである。
これらを金属探知機の存在下カッターで裁断。(原料は、細菌、アレルギー等を検査)
・次いでトマト抽出液、塩(味付けと共にタンパクと結合して滑らかさを出す)等を加えて混合。
・このペーストを金属探知しつつ塩ビ等のフィルムにより成形、チューブ化。以前はアルミニ
ウム金属により止めていたが、現在は塩ビによる結束が中心。以降、中心温度120℃・4分間 相当で加熱殺菌し(昭和48年までは殺菌剤AF2を使用していたが、発がん性問題があり、缶詰に適用していた本殺菌技術を利用)、乾燥後ピンホールはワイヤブラシによる通電抵抗で検出。検査を経て包装。
【カニフレーク製造】
・ソーセージ工程と同様の原料パッケージを6枚刃のカッターで裁断(1800回転)。
・最初に少量の水(氷)を加え、さらに塩、調味料を加えて、昔は御影石の石臼で練っていたが、
現在はボールカッターにかけて繊維質を裁断する。
・次いで45秒間蒸しを入れ、シート化後0.8?の歯でつぶし切りする。
・トマトリコピンを配合した色素をビニルシートに塗布し、製品に転写。
・95℃、20分蒸したのち冷却し、押しつぶしてトレーに入れてラップ包装する。
・ホタテやウナギもどきの製品も同様に作られる。本物より衛生性や健康性が良い。
以上で見学は終了。感想は後記。
2.日本水産株式会社八王子総合工場の概要(15時10〜16時00分)並びに質疑応答
・魚を加工して種々の製品(練り製品、冷凍製品、健康食品、医薬品等)を製造、販売している。
国内各地(直営工場」は、八王子、姫路、安城、戸畑の4か所)、アフリカを除く世界各国で事業
展開。(全社的説明は殆どなかったが、同社沿革等HPに詳しいので参照されたい)
・八王子総合工場について
1962年設立。6.9万m2(東京ドームの約2倍)。
従業員570名(関係会社他600名)。
生産総量42,865T/年(2016年)。
首都圏に近く、高速道路も近接、高尾山系の地下水を利用でき、総合力を持つのが特徴。
年間1500人の児童見学、また、モノ作り体験を受け入れるなどの食育活動、地域との連携
(給食協議会との技術交流、食育フェスタへの参画)にも注力。
・安全、安心への取り組み
魚肉練製品には卵を使わず、タマゴアレルギーの人にも安心して喫食して頂ける。
2000年の黄色ブドウ球菌による他社が起した集団中毒事件を契機に、自社独自にHACCP基準を制定。
2013年の農薬混入事件を見て、直ちに「フードディフェンス」の考え方を導入して対応。
監視カメラを守衛所はじめ場内各所、工程内各所に設けており、入場門には熱センサーカメ
ラを設置(インフルエンザ患者阻止)するなど、安全、安心、衛生の確保に努めている。
不審者には悪事をさせない、思わせないという精神である。
品質管理・保証についても、ISO9001、ISO14001、HACCPの認証は取得済みであり、労働
安全についても訓練設備を設置するなどが災害発生の事前防止努力の徹底行われている。
3.質疑応答
以下の通り、多数の質疑応答が行われ、総合工場長より、懇切なお答えをいただいた。
改めて感謝申し上げる。
1) 地下水の利用は全製品か? →然り。但し、レトルト殺菌は再生水
2) 電気使用量の節減は? →今後の課題。
3) ソーセージのカットテープはどうする? →袋詰め前に超音波で。センターのシールは高周波。
4) 自動化があまり進んでいないようだが、何か考えがあってか?
→やりたいが、食品はチェックなど難しい。包装はでき
そうだが、スペースの確保の問題がある。今後の
課題である。
5) プラスチックのリサイクルは? →基本的はやっているが、一寸汚れたものは業者が
引き取らない問題があり、対応が必要。
6) クリップをアルミから超音波によるシール止めにしたが、そのメリットは?
→正直言って、以前に新商品が出づらい状態があり、
それからの脱却を意図したものであった。切り替え
直後には生産数量は1,5倍にアップした。経費減と
安全につながってる。
7)賞味期限は? →4カ月。店頭廃棄は不明だが、恐らくすべて売却され
ているのであろう。いずれにしてもそこまで行かない
ように管理しているつもりだ。
8)掃除は全ライン行っているのか? →然り。毎日1回。
9)安全カウントの基準は? →病院に行ったら1件。
10)安全基準は機械メーカーに出しているか?→然り。
11)従業員の安全教育は(含 外人)? →この部屋にも置いているが、機械を使った体験
教育取り入れている。
12)空中塵埃についてどのように考えているか?→そのレベルに行っていないのが実情。
さしみやクリーンルームが必要な製品ではなく、
掃除等が先決と考えている。
13)減塩には取り組んでいるか? →然り。
4.感想と謝辞
建屋等は新しいとは言えないが、食品工場としての清潔さは十分感じられ、それに必要な対応が随所に講じられていると感じました。ご説明によってもその精神とご努力を理解できました。
また、質疑・応答も多岐、多数にわたったが、一つ一つ丁寧にお答えがあり、できていることできないことが率直に述べられ、真摯な工場経営への姿勢の表れであろうと感服しました。
自動化についての質疑がありましたが、 わたくし(報告者)はいわゆる総合化学工場に勤務したが、合理化、自動化、低コスト化は常なる課題でありました。しかし、それとても、時代とともに変化してゆく運転者へのプラントの伝承法、事故や品質不具合の発生の本質的原因を考えるとき、徒な自動化はいかがなものかと、自動化を進めながらも工場経営者として仲間と考え続けたものです。食品や医薬の経験はありませんが、とくに医薬以上に生命に直結する食品にあっては、“手作り”の“モノづくり”ということは大変大切ではないかと思います。もし論、企業体である以上、コストダウン、利益の追求は為されるべきですが、安心、安全あってその上での利益追求であるべきと思います。
見学の案内をしていただいた方々にも、声の通りへの注文や説明を遮るような質疑もさせていただきご苦労をおかけしました。工場は見学のためにあるのではないので、見学者にとって多少の不便は2の次の問題ですが、今後の参考にしていただければと思います。
重ねて、皆様お忙しい中での受け入れと当日のいただいた対応、お土産までいただき、厚く感謝申し上げます。 以上
NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
文責 : 宮崎高嶺
監修 : 古西義正