科学技術者フォーラムH29年7月度見学会報告「気象庁」
2017年 08月 06日NPO法人 科学技術者フォーラム 主催
国土交通省 気象庁 見学会 報告書
1.見学日時:平成29年6月23日および7月6日10時〜12時
2.見学場所:東京都千代田区大手町1−3−4 国土交通省気象庁
3.見学団体名:NPO法人 科学技術者フォーラム(略称STF)
4.見学者数 6月23日11名(特別見学会)
7月6日 35名(見学会本番)
5.見学概要
(1)6月23日の気象庁特別見学会
気象庁の見学は人数制限があったため、気象庁のご厚意により、7月6日の見学会本番の午前中に都合のつかないメンバー11名が、特別に6月23日に先行して見学させて頂いた。見学場所は、気象関係の情報発信現場(3階エリア)及び地震・火山関係の情報発信現場(2階エリア)並びに庁内1階にある気象科学館の3ヶ所見学。
(2) 7月6日の見学会本番
あいにく九州北部での豪雨被害の特別警戒警報が出されたため、気象関係の3階エリアの現場見学は出来ず、地震・火山関係の2階エリアと気象科学館の2ヶ所見学。気象関係はパンフレットの写真による説明。
(注)その後、8月18日午前中に希望者のみ再見学できることになった)
6.気象庁の仕事
気象庁の大きな仕事としては2つ、一つは大雨や台風などの気象観測およびその予報、もう一つは地震や火山噴火の監視およびその予知を行っている。この他には航空機や船舶の安全運航のための情報提供や航行に影響を及ぼす気象変動(悪天)の監視などを行っている。
※悪天=航空では、じょうらん(擾乱、揺れ)、雷、着氷など、
航海では、波のうねり、流氷、着氷など。
6−1気象観測およびその予報関係について(3階エリア)
(1)気象の数値予報の作成を行っている。現在時間の気象観測データをもと
にスーパーコンピューターにより気象の時間的変化を計算して気象予測(数値予報)を行っている。
気象状況データ:ひまわり8号気象衛星写真、気象ドップラ―レーダー
国内20ケ所)、ラジオゾンデ(地上約30?まで)、地上気象観測(160ケ所)、アメダス(全国1,300ケ所)その他国の機関や地方自治体や外国の気象データなど。
(2)全国各県の気象予報は各県の地方気象台で作成して予報をおこなっている。ここ東京の気象庁本庁では、東京都区内の予報も発表し、ここの班長(予報官)は全国の天気予報中枢として予報に関して全国的に指示をする役目も持っている。
(3) また、予報官は天気予報に加えて、気象警報や多くの気象情報を県単
位で発表している。しかし、警報の内、特別警報は例えば今回の九州北部豪雨の特別警報は大分県地方気象台と福岡管区気象台とで作成しているが、東京の本庁の予報官の支援も受けて発表している。
(4)さらに、天気図の作成も行っている。新聞等の天気図はコンピューターが作り出したものを、職員が一枚一枚気象データをもとに手書きで修正し、1枚1枚仕上げて発表している。
6−2.地震・津波と火山に関する仕事(2階エリア)
(1)地震が起こったときのこの部屋の職員の緊急時の対処:
(1a)大きな地震が起こった時最初に緊急地震速報を出す。地震波より速くに 自動的に機械が地震が起こった数秒後に自動的に判定して速報を出すようになっている。これは予知ではない。それがテレビやスマートホンのフロップに出る。
(1b) 地震が起きるとブザーがなり、この部屋の職員は緊急作業システム席で作業を開始する。まず、震源と地震の大きさを調べる。日本全体で地震計1600、震度計4400ケ所からのデータがここに集まるので、解析を行う。震源とマグニチュードが分かったら、震源と最大震度を地震速報として出す。この間1〜1.5分間である。これが海の近くであれば津波の可能性について検討する。特に津波の高さについては計算に時間がかかるのであらかじめ計算してある(10万通り)。それに基づいて津波の位置や高さなどを求めて津波警報注意報を発表する。その時間は3分後位である。
(2)その他の地震観測
(2a) 東海地震の予知を行っている。100〜150年ごとに起こるとされていて、現在のところ唯一の予知の可能性があるとされている。測定値に異変がおこれば東海地震予知情報を出すことになっている。
(2b) その外には平常時にも大小の地震がおきている。体に感ずる地震は1日2〜3回、 感じない地震200〜300回起きている。これらについてすべて観測・解析して、研究などに広く利用されている。
(3)火山の監視および噴火警報の発表
(3a) 火山のモニターを行っている。日本には活火山が全部で111がある。そのうち半分の50について北海道、仙台、東京と福岡の気象台の4ケ所でモニターを分担している。カメラで噴煙の量やモニターしている山に地震計など各種の測定器を設置してその変動を測定している。警報は噴火警戒レベルや防災対応レベルにより5段階に分かれて発表することになっている。
(3b) とくに航空機に対しては航空路に影響する噴煙の情報を提供している。これは国内ばかりでなく国際的に情報を提供・交換している。
7.気象科学館
気象庁の1階には気象科学館がある。気象庁の内部にあるので、入館手続きを行う必要がある。
館内は気象観測用アメダスをはじめ通風型乾湿計、積雪計、超音波積雪計、など各種の測定器が展示されている。気象現象の理解を深めるために竜巻発生装置などの展示もある。また、1時間先までの降水、雷および竜巻を1時間先まで予測する「高解像度降水ナウキャスト」の説明などもある。この他地震や火山の測定に関すること、津波シミュレーターなど沢山の展示説明がある。
8.見学感想
3階の気象観測および予報エリアおよび2階の地震および火山監視エリアの見学は廊下から内部の実際に日常実務を行っているところを拝見した。ここでの予測は単なる予測でなく、予測や予報に国民が生命を委ねることもあるような重要なことであるだけに、緊急事態などでは職員の方々が緊張した雰囲気で作業が行われていることが想像できる。気象情報エリアの現場見学は、6月23日の平穏な状態での作業は見学できたが、7月6日の見学会本番では、非常事態のため、見学できなかった。その原因となった北九州北部豪雨の状況観察及び事後の予報に関して緊張した作業がおこなわれていたものと想像した。
<謝辞>
今回の一連の気象庁見学会において、ご多忙の中、現場見学会のご案内・御協力をして頂いた気象庁広報室の職員の皆様に心より御礼申し上げます。
併せて、元職員の矢野様には、見学会の手配御協力だけでなく、気象科学館での詳しいご説明をして頂いたご親切に対して、見学者一同の感謝の気持ちをお伝えします。
文責:NPO法人 科学学技術者フォーラム(STF)会員 矢 文彦
監修:見学会幹事(STF副理事長) 古西 義正