科学技術者フォーラムH29年6月度セミナー報告:「再生可能エネルギーの現場・最前線」
2017年 07月 08日H29年6月度(第180回)セミナーの報告
1.日時 :2017年6月17(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第3講習室
3.参加者:49名
4.題目 :「再生可能エネルギーの現場・最前線」
5.講演者:NPO法人日本環境技術推進機構/サーキットネットワーク 理事青木正光氏
<講演要旨>
1. 水力発電は再生可能エネルギーである。1955年時点、日本の水力発電は電力全体の79%を占めていた。その後、石油を原料とした火力発電の比率が上がり液体エネルギー革命と言われた。2回のオイルショックにより燃料依存を天然ガス発電、原子力発電に代わっていった。
2. 再生可能エネルギーとは自然界に存在するエネルギーであり、1度利用してもなくならない性質のものを再生可能エネルギーと言う。太陽光、風力、バイオマス、中小規模水力発電、地熱、波力、温度差・・
3. 中国のゴビ砂漠に太陽光発電を設置すれば、世界の全電力はカバーできると言われている。ソフトバンクの孫さんが前向きに考えている。
4. 震災以降注目を浴びているのが太陽光発電で発電して、電気自動車(EV)のバッテリーに蓄電、この組み合わせで災害時、3日は過ごせるという。テスラモータースは創・畜・省(電)をキーワードに開発を進めている。
5. 身近なところで、透過型屋根で光のみならず、エネルギー創造をおこなう高機能屋根が出現。東京駅9-10ホーム、JR平泉駅、四ツ谷駅、海浜幕張駅などで見ることができる
6. 地産地消型発電はインフラが整っていない山岳地、僻地、災害地での利用が当然のごとく行われている。日本の山小屋、復興住宅、産官学大型建物、中国山間部、牧畜農家での太陽光発電、マイクロ水力発電、フランス道路に埋没型太陽光セル、スペイン雨どい型太陽熱利用・・
7.風力発電:
・古くから揚水ポンプ、粉ひきの動力源として利用。2回のオイルショックで見直され、技術開発、大規模発電所が各国で建設され、進展した。
・日本でも風レンズ付き風車の開発(効率アップ)、洋上風力発電など産業ビジネスへの展開が盛んであるが、欧米に比べると普及率は僅かである。
8.マイクロ水力発電:
・水力発電は、水車の利用から始まり、最も古くからの再生可能エネルギーである。近年、日本では河川法が見直され、200kw未満の発電量であれば県の認可で済む自由化が進む。
・マイクロ水力発電は山間部、僻地、または工場配管内の水力で発電が可能な地産地消が達成できるシステムである。
9.太陽熱利用:
・日照量が見込めれば、どこでも利用可能な地産地消型再生可能エネルギーである。
10.バイオマス発電:
・バイオマス発電は、生物資源を直接燃焼する方法とガス化して利用する方法。家畜の糞尿からメタンガスを採取、発電に利用するなど
11.地熱発電:
・公害の無いクリーンエネルギーで日本のような火山国には適す。日本は世界第3位の地熱資源を有する。
12.電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)を利用したエコシステムが提案されている。インフラ整備が不可欠となる。
13.世界の動向
・ノルウェーは2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を0にする取り組み。デンマークはオイルショック後、エネルギー自給率を高め、さらに2050年には再生可能エネルギー率100%を目指す目標がある。アイスランド、ブータン、ラオス、屋久島も再生可能エネルギー自給比率が高く、水力発電を動力源としている。
14.質疑応答:
?MgH2、Siを燃料電池に利用する動きがあるが?
→コストが問題。北九州で鉄鋼の副生物の水素(H2)の利活用は実証レベルで終了し、実用化されていない。
?アイスランドがH2をEUに売っているという話は?
→可能性はあるが問題は輸送手段。
?日本における波力発電、潮力発電などの動きは?
→門司で実証している。英国、オーストラリアでも実証実験が始まっている。
?なぜ日本は再生可能エネルギーに対する実施が進まないのか?
→EUと日本では問題意識が全く異なる。3.11の東日本大震災での体験が全く生きていない。
?日本ではなぜバイオマス源利用が進まないのか?
→急峻な山に適した機械が開発されていない、コストの問題。ペレット化、どこも支援しない。できない理由ばかりあげている。世界で3番目の森林率を有する日本は目の前にある資源を利活用すべきである。
?SCiB(負極にチタン酸Liを採用した2次電池)はどんな利用がされているのか、小型化は?
→イオン2次電池は500回で×、SCiBは5000回OK。溝の口はSCiBを使っている。
以 上 (報告者:佐熊 範和)