科学技術者フォーラムセミナー報告:「生物から学ぶ可逆的な接着技術」−歩くために必要な摩擦や接着−
2017年 04月 20日H28年10月度(第172回) セミナー報告
1.日時 :2016年10月4日(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第2講習室
3.参加者:24名
4.題目 :「生物から学ぶ可逆的な接着技術」−歩くために必要な摩擦や接着−
5.講演者:物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 表面・接着科学グループリーダー
細田 奈麻絵(なおえ)氏
<講演要旨>
1.バイオミメティックスの世界動向
バイオミメティックスは、古くて新しくガリレオの時代にさかのぼる。
材料系のバイオミメティックス(Biomimethics)は、政府主導でドイツが先行している。
アメリカ 2010年 15年後 30兆円市場と予測し、軍事利用が中心である。具体例としては、自己治癒するタンク(3層構造)などがあげられる。
フランス 農業と密接なbiomimethicsが盛んである。
日本はデータベースの整理提供が中心である。産業界での特許出願に際しての科学技術文献引用件数が少ない。
2005年以降、急激にヤモリに関する検索件数が増加している。2000年に分子間力でくっついていることが報告されている。
国際標準化に関しては、議決権のある10か国と議決権のない15か国からなっている。
具体的展開には、バイオロジープッシュとテクノロジープッシュの二つの形があるが、現時点ではテクノロジープッシュの展開が多い。
2.バイオミメティックス(Biomimethics)の要件
●生物をモデル
●生物の原理を抽出て技術移転
●生物そのものを利用することなしに技術移転
3.生物・植物から学ぶ接合技術
3.1接触部の分割化、薄片化、水などによるセルフクリーニング
●ヤモリの例:階層構造(100μm→2μm→200nm)で、毛が斜めになっている。
接触角を90°にし、瞬時に剥がすことができる。したがって、毛が斜めの状態なら
ヤモリは死んでもくっついている。
●昆虫の例:Contact Surfaceがfuriction(マジックテープ構造)でくっついている。
足の汚れは、滑りで判断している。足先より細かい表面を作ると、虫はいつもグルー
ミングをしている。
3.2植物の落葉は、離層がホルモン濃度が濃くなると成長し、応力が発生し落葉する。
●はんだ接合の例:離層(LaNiはんだ)、成長ホルモン(H2,Ga) で、LaNiにH2を
反応させ、粉体化し剥離させる。
(文責:東海林節夫)