科学技術者フォーラムH28年6月度セミナー報告「水素医学の創始・展開・医療応用・メカニズム」
2016年 06月 20日H28年6月度(第168回)セミナーの報告
1.日時 :2016年6月3日(金) 14:00〜16:45
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第4講習室
3.参加者:51名
4.題目 :「水素医学の創始・展開・医療応用・メカニズム」
5.講演者:日本医科大学大学院医学研究科 加齢科学系専攻 細胞生物学分野 教授 太田 成男 氏
<講演要旨>
1.水素の性状、摂取法
・水素は4%以下では燃えない、また爆発しない。
・水素分子はアルミニウム以外のどんな材料でもすり抜ける。特に生体膜を透過でき、細胞のすみずみまで到達できる。
・水素の摂取法には、水素ガスの吸引、水素水の飲用、水素生食の点滴・腹腔注射、水素生食の点眼、水素入浴・水素化粧品(皮膚吸収)、腸内細菌の増加(水素製造)等がある。
・水素ガス有効濃度は1〜4%、水素水濃度換算で0.016〜0.064ppmである。
2.人の老化
・活性酸素は、ストレス、激しい運動、タバコ、排気ガス、飲酒、電磁波、紫外線、食品添加物、放射線、ウィルス細菌等で発生する。活性酸素は総称で、特に毒性の高いものがヒドロキシラジカル(・OH-)である。
・活性酸素の影響で、人は、酸化による破壊、遺伝子の損傷の蓄積、機能低下、細胞死、生理機能の減退を受け、生理機能の崩壊(死)に至る。
3.マウス、ラットに対する水素の影響
・ラットを対象に、水素が細胞内で抗酸化作用を発揮し、ヒドロキシラジカル(・OH-)だけを穏やかに還元し、細胞を守ることを発見した。また脳梗塞による脳の細胞死の抑制、虚血再灌流による肝障害の抑制、心筋梗塞への効果、心肺停止蘇生後の肺や心臓障害の抑制、敗血症・多臓器不全への効果を確認した。
・水素ガスはセボフルラン弊害を抑制する。
・マウスの長期身体的拘束実験で、水素水を飲ませると記憶力の低下が抑制された。
・認知症モデルマウスに水素水を飲ませると平均寿命が延長し、認知機能も改善した。
・マウスで、水素水が放射線による死亡を抑制することを確認した。
・水素は、従来の強い抗酸化物がすべてを還元するのとは異なり、選択的還元性と速い拡散性を有し、反応物(水)は無毒である。また体内には蓄積しない。
4.人体等に対する水素の影響
・現在、脳梗塞、心筋梗塞、心停止蘇生、肺移植、パーキンソン病、肝炎、網膜動脈閉塞症等に対する水素の効果に関する臨床試験を実施中である。
・水素は癌の放射線治療によるQOL低下(嘔吐、食欲不振、下痢、味覚障害)を改善する。
・水素水は、寝起きのだるさ、二日酔い、疲労感、便秘、胃のもたれ、美容(肌のツヤ、ハリ、荒れ、シミ、美白)等に良好な影響を与える。
・水素は抗酸化力以外に、抗炎症作用、抗アレルギー作用、エネルギー代謝促進作用がある。
・水素は生体膜上の脂質フリーラジカル連鎖反応に介入し、酸化脂質を改変し、その肥質がシグナル伝達を変化させ、遺伝子発現を制御する。
・水素はラジカル反応が起きているとき、部位でのみ作用し、副作用が生じないことを明らかにした。
5.質疑応答
・臨床試験用の水素ガスの状況
→濃度:1.3%、3%(脳梗塞);投与時間:1日(1hでも十分)
・水素の体内での拡散速度
→7分程度で全身まで行き渡る。
・水素の供給方法
→常時与えるのではなく、間欠的に投与するのが効果的である。マウスの例では10回/1日である。
・水素に着目されたきっかけ
→ミトコンドリアの研究中、発生する活性酸素に興味を持ち、その関係で水素に注目した。
・水素ガスと水素水の比較
→特に区別なく、同様な効果を与える。
・水素水の購入
→工場で水素水をアルミパウチ容器にパック詰めしたものが、抜けにくくて好ましい。ペットボトルでは抜けてしまう。
・風呂での水素利用
→水素ガスを混入する、あるいは水素ガス発生粉末を入れることで、水素を発生させる。
・水素化マグネシウムの応用
→風呂で利用する。食品として認可されてないが、自分で飲むのは問題ない。
以上
(報告者:木村芳一)