H28年5月度セミナー報告無機-有機ハイブリット樹脂開発--機能性コーティングへの展開--」
2016年 06月 08日H28年5月度(第167回) セミナー報告
1.日時 :2016年5月17日(火) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F
3.参加者:28名
4.題目 :「無機-有機ハイブリット樹脂開発--機能性コーティングへの展開--」
5.講演者: 元 アトミクス株式会社 機能材料部マネージャー 佐熊 範和 氏
<講演要旨>
●塗料の種類と用途
1.道路舗装用白線・・炭酸カルシウム+色調整用TiO2
道路舗装用黄線・・炭酸カルシウム+色調整用PbCrO4
2.家庭用塗料 ・・床から1m高さ、スイッチ回りの塗装用としての壁紙用塗料は有用な用途
3.電子・光学材料・・コンポブリット(2008年から市販)
4.機能性塗料 ・・高輝度雨天夜間反射材料
ガラスビーズによりヘッドライトを全反射させ視認性向上(再帰反射性)
●機能性フィルムとコンバーティング
良いコンバーティングメーカーとタイアップしないと塗料材料だけでは良い機能性フィルムは得られない。
●ハイブリット樹脂
有機高分子(主骨格がC-C結合)と無機高分子(主鎖にC-C結合を含まぬポリマー
及びホモポリマー)のメリット、デメリットを併有している。
●ハイブリットUV硬化機構
無機サイト 有機サイト
-SiOH- -C=C-
縮合(吸熱) 重合(発熱)
-SiOSi- -C-C-
●耐熱性ハイブリット樹脂・デュアルキュアによる。
アクリルの分解温度 520℃
Siがアクリルを抱え込む形で存在することで、分解温度が620℃まで向上
このことは、密度でわかる。
ハイブリット樹脂:密度がSiに近い。
ブレンド樹脂 :密度がアクリルに近い。
●ハードコートの硬度と耐擦傷性
硬度が高くても耐擦傷性が高いとは限らない。
耐擦傷性の高いものは表面硬度も高い。
硬度が同じでも耐擦傷性は ハイブリット>ブレンド の関係にある。
有機高分子の硬度(Nr値)は、ダイヤモンド、無機セラミックスの硬度より一桁以上低いためハイブリット化は不可欠と言える。
●今後の展開
1.耐擦傷性
テーバー摩耗試験 1000cycle、Δhaze≦2%(グレイジング材料)
2.ハードコート
熱硬化2コート2ベークシステムからUV硬化2コート2キュア+高エネルギー線表面
処理(PC下地)
3.成形・キャスト材料
無溶剤型UV硬化型ハードコート材そのもので成形したレンズ(9H位)
4.光学・FPD・情報端末の防曇
ナノインプリントで展開
●Q&A
1.PCベースのハードコートの実用化の例は。
→フィルムのインモールド成形によりUVカットも同時付与。
2.3Dプリントの材料は課題が多い。ブレークスルー原料としてゾル-ゲルは可能か。
→可能性は高い。
3.船舶の船底への貝殻付着防止できないか。
潤滑性塗料と考えれば、
→シリコン塗料(NTT開発)がすでに実用化されている。
→落書き対応のシリコンオイルを使用した塗料もある。
4.シャッターなどの塗装後、即乾燥するものがないか。
→工業塗装では紛体塗装が相当するが、現場では現状が精いっぱいであろう。
5.表面硬度・耐擦傷性・摺動性向上のハイブリット材料はありますか。
→ハードコートによるトライポロジー向上に関する特許は出ている。
6.ハイブリッドの密着性はどのように付与しているのか。
→有機材料で付与している。
7.ナノ粒子は、球or異形ですか。
→真球になっている。
8.道路の白線に少量のTiO2が入っているがその目的は何か。
→アナターゼ型チタニアを使用することにより、光触媒効果で白線の表面がチョーキングで脱落し白線を白く維持している。
9.電波吸収材料は
→低周波と高周波の領域が対応できていない。
10.コンタクトレンズの防曇処理は可能か。
→生体適合性の塗料もあるので可能かもしれない。
11.ナノ粒子の合成過程での体内への吸入など健康面は。
→SiO2ナノ粒子が化審法などで規定される方向にある。
→ナノ粒子分散体(湿体)を使用し、ドライアップさせなければ大丈夫ではないか。
以上
(記録者 東海林)