科学技術者フォーラムH28年7月度セミナー案内「核酸研究の歴史と新たな可能性〜DNA・RNAの化学〜」
2016年 06月 01日科学技術者フォーラムH28年 7月度セミナー(第169回)のご案内
核酸研究の歴史と新たな可能性
〜DNA・RNAの化学〜
信州大学大学院 総合工学系研究科 生命機能・ファイバー工学専攻 志田 敏夫教授
生物機能科学講座 (繊維学部 応用生物科学科 生物機能科学課程 兼任)
生物は遺伝子情報をもとに形作られていることはご存じだと思います。
その遺伝子情報は、DNA・RNAの各4種類の核酸の組み合わせにより記録されていますが、核酸は化学的に合成可能であることは意外と知られていないかと思います。
志田教授はその核酸合成の黎明期からこの研究分野に入られて、核酸の合成を起点として生物の姿を追いかけていらっしゃいます。
今回セミナーではDNA・RNAから生物を見た姿を話して頂けると思います。また、現在研究課題とされている古細菌、新規抗生物質についても紹介して頂けると思います。
1.日時:平成28年 7月30日(土) 14:00 〜 16:50
講演終了後近くの会場で参加者の懇親を目的に懇親会開催します(19時頃まで)。
2.会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」5F第3講習室
(JR大井町駅中央改札出て左直進、ヤマダ電気裏側)
地図:http://www.shinagawa-culture.or.jp/curian/
3.講演要旨
今から約6年前の段階では、ゲノム配列が解析された生物種(ウイルスを含む)は約1,500種であったものが、今では8,000種を優に超えている。高速で廉価なゲノム配列解析技術の開発の結果、現在進行中や計画されているゲノム解析プロジェクトは数万種に及びます。2008年に始まった国際共同研究「1,000人ゲノムプロジェクト」はヒトの遺伝的多様性に関する詳細なカタログを確立するためのゲノムプロジェクトであり、2012年には1,092人のゲノム配列がNatureで発表されている。このような膨大な情報は例えば、日本人のルーツ解析や医薬品開発、遺伝子治療、将来の病気罹患の危険度判定などに応用されていくことが想像に難くありません。
ヒトの場合、受精卵として命が宿ったとき、その受精卵に含まれるDNA(遺伝子)は高々2メートルの長さしかありませんが、成人して細胞数が60兆個に達したときには1個体当たり120兆メートルになります。この長さは地球と太陽を400回往復する距離に相当します。我々の遺伝子(DNA)は、現代人の共通先祖が出現して約15万年受け継がれ、そして受精卵から成人になるまでの正確に複製によって保たれています。DNAは生体物質の中で唯一、化学的な損傷(ダメージ)を受けても修復される物質です。メッセンジャーRNAやタンパク質、その他生体物質は化学的損傷を受けた場合、分解されて捨てられるか、一部は再利用されます。DNAの活性酸素による損傷や修復メカニズムが分子レベルで視覚的に明らかになったのは合成DNAや合成RNAが容易に手にできるようになったことが、それら研究を大きく推し進めた原動力になっています。DNAの化学合成は1980年代にほぼ確立し、現在では蛍光色素でラベルしたものや化学的に損傷したDNA、ヌクレアーゼなどの核酸分解酵素で分解されない化学修飾されたものなど多種多様な合成DNAが受託合成で供給され、特殊なものでさえ一、二週間で手に入る時代になりました。
現在、合成核酸は遺伝情報の流れ、則ち、DNA複製や転写、遺伝子修復などの基礎研究ばかりではなく、様々な応用分野で広く使われています。特定の遺伝子を大量に複製するPCR (Polymerase Chain Reaction)法や変異タンパク質を得るためのタンパク質工学、体内で分解されずに遺伝子発現をコントロールするアンチセンスRNA、人工塩基対を形成する核酸オリゴマーなどの応用研究で無くてはならないものになっています。
最近では、人間などの遺伝情報が書き込まれたDNAをデジタルデータの記録媒体に使う”DNAストレージ”について、実用化研究が本格化したとの報道がありました。日本はDNAシーケンサー(DNA配列の読み取り装置)の開発ではその基礎技術と構想はあったものの、対応が後手に回り遅れ、今や米国企業が市場を席巻しています。核酸の研究は分子生物学や医薬品開発の分野はもちろんのこと、遺伝病の遺伝子レベルでの解明、作物の品種改良、異分野との融合等に広がり続けています。これからもいろいろな産業の振興にも益々役立っていくと思われます。
4.略歴
1978年3月 大阪大学・薬学部・製薬化学科(池原森男教授)卒業
1983年3月 大阪大学大学院 薬学専攻 博士課程 修了 (薬学博士)
1983年4月 名古屋大学化学機器センター 教務職員
1985年6月 名古屋大学化学機器センター 退職
1985年7月 ジョンズホプキンス大学 公衆衛生学部 生物物理部門 博士研究員
1986年8月 ジョンズホプキンス大学 退職
1986年9月 信州大学 繊維学部 応用生物科学科 講師
1992年4月 大阪大学 蛋白質研究所 共同研究員 (〜93/3)
1997年4月 信州大学 繊維学部 応用生物科学科 助教授
2007年4月 信州大学大学院 総合工学系研究科 准教授
2009年4月 信州大学大学院 総合工学系研究科 教授 現在に至る。
*主研究テーマ:
1. 特異な構造をとるDNAの構造研究
2. DNA修復酵素の機能構造解析
3. タンパク質の基質特異性および熱耐性改変に関する研究
4. 超好熱古細菌のタンパク質分解酵素に関する研究
5. 微小真正細菌の検索とゲノムDNA解析
6. 新規抗生物質産生菌の信州地域での検索
*所属学会:日本農芸化学会、日本生化学会、日本分子生物科学会、日本蛋白質科学会
5.参加費 会場でお支払いください。
・科学技術者フォーラム(STF)正会員,学生 1,000円
・BCC-NET会員、ティー・エムレポート会員、経営支援NPOクラブ会員、NPO-BIN会員、
異普奇会会員、生体環境保全交流会会員、千葉県加工技術研究会会員、表界研会員、
BEST-JAPAN研究会、NPOエルダーシステム、その他友好団体会員 1,500円
・一般 2,000 円
*講演中の写真撮影などは、ご遠慮願います。
6.参加申込:下記の申込書に記入して、セミナー担当の碇 貴臣 宛メールまたはFAXでお申込みください。
TEL,FAX:04-7179-5280 E-mail:ik-3780@trust.ocn.ne.jp
*************セミナー参加申し込み ***************
<科学技術者フォーラム(STF)平成28年 7月度セミナー(第169回)参加申込書>
●お名前: (ふりかな: )
●所属(会社,事務所、団体):
●メールアドレス:
●TEL: FAX:
●参加区分:
・科学技術者フォーラム(STF)正会員、学生 1,000円
・BCC―NET会員、NPO−BIN会員、ティー・エムレポート会員、経営支援NPOクラブ会員、異普奇会会員、生体環境保全交流会会員、千葉県加工技術研究会会員、表界研会員、BEST-JAPAN研究会、NPOエルダーシステム、その他の友好団体 1,500円
・一般(紹介者: ) 2,000円
●懇親会:参加 不参加 (いずれか残す)
●領収書(講演会)の必要有無: 有 無 (いずれか残す)