科学技術者フォーラムH27年11月度セミナー報告「日本の火山活動と火山災害」
2016年 05月 30日H27年11月度(第161回) セミナー報告
1.日時 :2015年11月13日(土) 14:00〜16:45
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F
3.参加者: 43名
4.題目 :「日本の火山活動と火山災害」
5.講演者: 東京工業大学 火山流体研究センター 教授 野上 健治氏
<講演要旨>
人類は、月に到達しているが、地殻を抜けたことはない。
地球のことは、ほんの表面だけしか判っていない。
1. 日本列島と活火山
マグマの発生個所は、海嶺、ホットスポット、プレートの沈込み場所であり地球上では偏在している。
アイスランドは、海嶺上にあり二つに割れている。
日本は、プレートの沈み込み場所に位置し震源と活火山は略一致する。
1-?日本列島の構造
日本列島は、4プレートが重なる特異な場所に存在し、富士山は、3プレートの交差する特異点にある。
●東北地方:北米へ太平洋プレートが沈み込み
●伊豆・小笠原諸島:フィリピンへ太平洋プレートが沈み込み
●桜島:ユーラシアへフィリピンプレートが沈み込み
1-?火山の分類
昔:活火山、休火山、死火山 → 今:活火山のみ
活火山の定義 ?噴気孔がある。?2000年以内に噴火したことがある。
?10000年以内に噴火したことがある。 に変更になり全て活火山となった。
1-?日本に存在する活火山の数は110個
東京 21 、鹿児島 10 、沖縄 2 、中部近畿圏には無い。
東京は、伊豆諸島、小笠原諸島に多く、西ノ島が噴火中である。
活火山がある有人の島は、伊豆大島、新島など14島である。
2.火山活動とは(火山活動≠地震活動)
2-?火山活動
ガス、水蒸気、温泉、噴火など熱エネルギーを出し続けている状況を火山活動という。
噴火は火山活動の一つである。
火山活動は、地下構造の調査を積み重ね分析している。
2-?地震活動
プレートの動きで発生する断層現象で火山活動とは異なる。断層は、逆断層が多い。
ただし、3.11以降は、正断層になっている。
ずれ断層の左右は、自分の立っているところから見て左右を判断する。
余震は、本震を超えない。
3.火山災害とは
3-?物理的な破壊で噴火時に発生
→噴石、火山灰、溶岩
3-?化学的な非破壊で非噴火時に発生
→水蒸気(98%)、残りSO2、H2S、CO2である。
→火山により、SO2、H2S、CO2の比率が異なる。
阿蘇山は、SO2のみ、八甲田山は、CO2、他ほとんどの火山は、H2Sである。
3-?災害の例
●噴石→有珠山、国道上に、大きさ人の背丈を上回るものが飛んできた。
●火山灰
→2010年エイヤフィヤットラヨークルト火山、成層圏に届き、航空機が飛行できない。
→桜島、1914年、東京まで降灰、現在なら大きな空港は千歳以外使用不可となる。
●崩落型火砕流→雲仙普賢岳
●土石流→ハザードマップ活用せず、逃げなかったため泥流で多くの死傷者発生。
●噴石と火山灰→2014年御嶽山、63人の死者。1900年の安達太良山以来の惨事。
4.防災と課題
4-?火山予知
噴火予知のためには、静穏期の観察が重要、その後の変化が噴火の兆し。
●地球物理的観測量
地震・地殻変動・地磁気・重力
●地球化学観測量
火山ガス放出量・組成・熱量
小澤竹二郎教授が、火山ガスの観測技術を確立(採取法・定量分析)した。
途上国での観測は、純粋な試薬の入手が困難なため出来ない。
●地質学的観測量
マグマの組成・噴出物
噴火警戒レベルのの範囲は、山によって異なる。
【火山噴火は何時まで続く?】
化学的手法では、火山灰に含まれる水溶性成分比から予測
火山ガス中の HCl、HF、SO2が火山灰に水溶性塩類の形で付着
抽出液中のCl,SO4から予測
4-?課題
活火山 110の内、50が常時観察対象→予算がなく有人観測は少ない。
国立大学の重点火山観測点の推移 34→19→25(御嶽山噴火で6増加)となっている。
資金源の影響で10年前19へ減少した。資金源・人変わらないが6増となっている。
本来、大学は基礎、予知に注力のはずが、成果求めると長いスパンの観察できず、人材が
得られない。
【観測体制の脆弱】
●1992年 全国地球化学移動観測班が設置されたが、担当1名
●海域
人の住む火山島 14(27000人)、海底火山 10
住民の安全、海上・航空安全の担当は海上保安庁
しかし、海上保安庁担当 2名
4-?予知の事例と課題
●桜島
観測体制は、京大・5人 24時間体制 充実している
データが多い。
非爆発的噴火→爆発的噴火の予知→連続噴煙
物性の変化が起きていた
●草津白根
観測体制は、東工大・火山流体研究センターで世界で唯一の流体研究。
火山活動のモリタリングは物質観測が必須。
東工大・化学の研究者が火山観測しガスと温度の関係を見出した。
【火山ガスと化学組成と噴気温度】
高温?H2O HF HCl SO2 >H2S CO2 N2
?H2S HF >
低温?H2S HF
【草津白根山の例】→化学的観測による世界初の噴火予知(直前にH2Sが増加)
1960年の初期に火山ガス分析開始 【140℃】
1973年8月 1 日SO2 0.2%,H2S 18.5%,CO2 【 94℃】
1975年5月24日SO2 0.2%,H2S 16.6%,CO2 82.3%【100.1℃】
1975年7月29日SO2 3.1%,H2S 10.8%,CO2 85.1%【101.2℃】
→水釜付近で近々噴火の可能性発表(地球化学的観測)
→微小地震挙動からは火山の活発化兆候なし(地球物理的観測)
→1976年3月2日水釜噴火
1982年10月6日〜1983年12月21日
→湯釜、涸釜の水蒸気爆発も化学的観測で予知
●雲仙普賢岳
九州大学・地震分布調査していた。
雲仙温泉・ガス分析結果、H2Sの量変化し噴火の可能性を九州大に連絡した。
噴火後、結果、地震分布も山に近づいていた。
→ガスは、マグマより早く離れるので予知に役立つ事を証明した。
●海域火山観察
?センサーの設置できない。?電源がない。?データ通信手段がない。
海水の変色を観察している。
→Si,Fe,Alを含む酸性熱水が吹き出しSiO2-Al2O3-Fe2O3-H2Oのアモルファスゲル状の
沈殿物が生成している。
【最近の海域火山の例】・・西ノ島
●1973年9月14日噴火とその後の拡大
旧西ノ島?+噴火による新島?その後は潮の流れの変化による砂州の形成などで島間に
陸地が形成された。
●2013年11月20日の噴火とその後の拡大
旧西ノ島?(旧西ノ島?+新島?+砂州など)のすぐ隣に新島?が誕生し、
一時、噴火は止まったが、変色海域と溶岩流が観察され、噴火は続くと判断した
12月26日 旧西ノ島?と新島?が繋がった。
火山活動開始から陸地出現までがきわめて短く、溶岩流の流出が半年間続いている。
結果、新島?が旧西ノ島?を飲み込む形で拡大が続いている。
5.質疑
Q 海嶺・ホットスポット・沈み込み部ののガス成分は違うのか。
A 海嶺部でのガス観察は難しい。ガス成分は、山ごとに異なっている。
Q 火山も活断層のようなハザードマップできないのか。
A 地震・活断層→推進本部(政府)
火山→推進本部無→法律改正でやっと地震・地盤・火山が載った。
Q 水蒸気爆発は予知できないのか。
A 観測し分析していないとできない。
御嶽山は、センサー観察はしていた。データ分析が出来ていなかった。人手不足。
後日、分析しSO2の濃度濃くなっていた。
箱根もSO2濃度が濃くなっていた。
Q ガスの採取は、ドローンを活用できないか。
A ドローンではできないと思う。
大気中のガスを採取しないように現場で採取方法を変更するため。
Q 人材少ないなら、県・地域の大学など活用できないのか。
A 地域の大学に専門家の先生がいない。
Q アイスランドは地熱利用が盛んで観測体制はどのようになっているか 。
A アイスランド大学に1元化されている。また、トップダウンで決定している。 アイスランドは、ホットスポット上に国があり危機管理が出来ている。 しかし、日本と異なり、住んでいる範囲が狭く管理しやすい。
Q イタリアで地震予知できなっかた人が裁判に訴えられた。
A 結果は、2審で無罪となった。
その中の1人バレベリがその後大臣となり観測体制の充実を決めた。
Q 富士山は、3プレートの沈み込み部にあり今後どうなるのか。
A 今は何もない。変化起きたら噴火の予知がしやすい。
Q 噴火の予知や、海水の変色は日本と他国で異なるか。
A 基本、世界共通で、海水変色では
赤:Fe2O3
白:Al2O3、SiO2 のゲル状アモルファスである。
以上
(記録者 東海林節夫)