科学技術者フォーラムH28年3月度見学会報告「本田技研工業株式会社・埼玉製作所・寄居工場」
2016年 04月 18日NPO法人 科学技術者フォーラム 平成28年3月度見学会報告
1.見学日時:平成28年3月29日(金)13時30分〜15時30分
2.見学先:本田技研工業株式会社・埼玉製作所・寄居工場(所在地:埼玉県大里郡寄居
町富田2354)
3.見学者:51名
4.見学の概要
会議室で、会社案内資料および工場案内ビデオによって工場の概要が説明され、その後に工場見学が実施された。
4.1 工場の説明
寄居完成車工場は、狭山完成車工場と小川エンジン工場とともに埼玉製作所を形成しており、2013年に完成した。効率良い生産技術、省エネルギー技術、環境配慮の技術を大きな特長としている。東京ドーム20個分相当の敷地面積95万平方メートルで、小川エンジン工場で生産されるエンジンの供給を受けて、プレス(サーボモータ駆動での高速成形、金型変更の時間短縮実現)、溶接(設備の小型、軽量化、および小型ロボットによる自動化実現)、塗装(下塗り、中塗り、上塗り、ワックス防錆処理を短い自動化ラインで実施)、車体組立(オンラインシステムで制御されたラインで自動化実現)、完成車検査(全数検査で、ブレーキ、サイドスリップ、スピードメータ補正、灯火類、排気ガス測定、足回り、シャワーテスト等実施)等の各工程を行い、「フィットシリーズ」等の小型車を中心に年間25万台の完成車を生産している。従業員数は2200人である。
また各工程では、徹底したロボットの活用による生産効率の向上が実現されている。さらに8.73MWコ・ジェネレーション発電システム、2.6MWメガ・ソーラ発電システム等を導入し、エネルギーの効率的利用とCO2削減を可能にしている。工場内空調は人間の居る場所に限定して行うようにし、省エネを実践している。
4.2 工場見学
(1)溶接工程
・溶接作業は、すべてロボットで行っている。またロボットの把時部分は車種の違いにより交換する必要があるが、ロボット自身が自動交換するようにしている。
・側面、屋根、窓パネル部の組立、溶接は10台のロボットによって打点126PT/10台のスポット溶接を行っている。
(2)ヘミング(ヘム折り)加工
・ボンネット等の内側と外側の2枚の鉄板を張り合わせるヘミング加工は4台のロボットで小型ローラHEM(Roller Hemming)治具を使用して行っている。使用金型は下側だけで済み、効果的である。
(3)組立工程
・サスペンション、インパネ、ガソリンタンク、ハイブリッド電池、ワイヤーハーネス、
タイヤ等の組立は、コンピュータを導入したオンラインシステムでコントロールされたラインによって行われている。重量物は補助装置を用いて人が効率よく組み込んでおり、人が行うのに難しい作業や品質・精度を求められる作業は、優先的に自動化させている。
4.3 質問
(1)ナットの素材、トルク管理
・素材は鉄+亜鉛めっきであり、トルク管理はトレーサビリティの明確なナットランナー
で行っている。
(2)プレス工程時間
・金型交換時間は2分、プレス加工時間は3秒程度である。
(3)抜き取り検査時の寸法測定
・毎日車種ごとに抜き取り、レーザーセンサで900個所の3次元寸法測定を行っている。
(4)ロボットのメンテナンス
・2交代の終了した深夜にメンテナンスを行っている。大がかりなメンテナンスは稼働し
ていない休日、あるいは大型連休に行う。メンテナンス要員は約70人いるが、今後とも
その要員の育成が重要課題になっている。
(5)従業員
・組立工程では外国人を直接採用することはない。期間工として、言葉等の基本的条件を
満たしていれば採用することもある。また女性は全従業員の4%弱程度である。
4.4 感想
ロボットを活用した効率的生産方法、および環境負荷低減を考慮した諸工場設備対策は極めて革新的であり、大変充実していると感じました。またこのような自動化を安定して継続するために、メンテナンス体制が非常に重要であり、それに大変苦労されていることを良く理解できました。
懇切丁寧なご案内、ご説明に対し深く感謝申し上げます。
NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
記録 : 木村 芳一
監修 : 古西 義正