科学技術者フォーラムH28年2月度セミナー報告「デュアルハルバッハ型電気機械の高効率化の実現と課題」
2016年 03月 05日H28年STF2月度(第164回) セミナー講演報告 H28年2月18日発行
1.題目 :「デュアルハルバッハ型電気機械の高効率化の実現と課題」
2.講演者: 工学院大学 名誉教授 工学博士 横山 修一 氏
3.日時 :2016年 2月 6日(土) 14:00〜16:50
4.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第3講習室
5.参加者:講演 32名
<講演要旨>
電気機械の代表的なモータ・発電機について、経済産業省「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー基準部会 三相誘導電動機判断基準小委員会」にてモータのトップランナー化に向けた「最終取りまとめ報告書」がまとめられ2015年よりトップランナー化がスタートし、が設定されている。
低速回転、高出力かつ高効率のモータや発電機の開発に取り組み、ネオジム系の永久磁石(PM)を利用し、固定子はコアーレス(鉄心が無い)化を図りコギングレス、低速(300rpm)、出力(1kw)、高効率(95%)を実現した。高効率のモータを実現するための方法は、従来から考えられている磁束密度を2倍程度(デュアルハルバッハ配列)にすることと、コイルと鎖交する磁束の最大値を理論的に算出し設計の基本に取り入れたことで実現できたと考えている。またコアレスのコイルは空心であるために従来のモータに比較して軽く回転させることができるので、風力発電用にも利用できると考えている。より一層、高効率にするための方法も検討しており、これまで効率向上のために色々と議論してきた研究内容についても講演された。
このクラスでは、効率の目標値(IE3)が84〜85%の効率目標設定であり、今回開発したモータは十分に達成している。
<講演内容>
1. 発電機、モータの原理と理論
・電気の基礎から特殊相対性理論まで、電磁気の世界を理解するための考え方を、方程式の解説を交えて原理や原則について解説。磁気回路を身近な電池や抵抗に置き換えた、等価回路で説明。
2. 高効率モータ・発電機の開発の背景
・高効率モータ・発電機の損失を機械的なものと、電気的、磁気的なものを徹底的に排除できる構成とした。
・磁界については、永久磁石を用いたハルバッハ配列に着目、磁石の片側に集中する磁界を、対向して配列して、漏れ磁束を極力低減できる、デュアルハルバッハ配列を採用。シミュレーションで磁石の長さ、ギャップを最適化。環状に配置した場合の磁石の角度など最適配置を、解析して、磁束密度を最大に活用できる構造を設計した。
3.応用例
・デュアルハルバッハのリニア配列で小口径(φ250?)のボイスコイル駆動のスピーカで、100dBの大出力を得た。
・ロータにデュアルハルバッハ配列の磁界を使用、コアレスコイルのステータの組み合わせで300rpm回転時に出力300W(効率90%以上)を実現できた。
・90%以上高効率が実現でき、同じ出力のモータ・発電機と比較して損失による発熱を低減しており、使用定格を拡大できるメリットがある。
4.今後の課題
・コイルの銅損、機械的にはコイルの組み付け精度、磁石の組立、組み付け精度による効率低下。
・磁石側をロータとしているため、芯ブレが発生しやすい構造となっている。
<質疑・応答>
1. コイルを回転したら遠心力でコイルが広がってしまうのではないか?
コイルの固定方法を検討している、良い方法があったら教えてほしい。
コイルを回転した場合はスリップリングを使用する。
2. 高速回転のモータは実現可能か?
スーパーチャージャ用のモータ用のモータを設計した、立ち上がり10万回転まで、100msec、出力1kW。
3. 通常の永久磁石の配列で鉄心なしで効率は上がるか?
通常の磁石配列はギャップが狭いほど磁束密度が高くなるのでギャップがあれば極端に効率は下がる。
4. 20kW、100kW大型モータの製作はできるか?
3MWまで設計してある。直径5m、高さ1mの大型になる。
5. 磁束密度を上げられるか?
磁石の着磁密度を上げる必要がある。ネオジの磁石では資源が戦略物質となっており限界にあり、新しい磁石の開発が必要である。
以上 (記録者 木村 茂雄)