H27年4月度科学技術者フォーラムセミナー報告「ロボットと共生する社会」
2015年 04月 28日H27年4月度(第154回)セミナーの報告
1.日時 :2015年4月18日(土) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第4講習室
3.参加者:34名
4.題目 :「ロボットと共生する社会」
5.講演者:千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長 先川原 正浩 氏
<講演要旨>
○ロボットとはコンピュータ、センサ、およびモータなどのアクチュエータで構成される知的機械で、その形状は自由である。
1.千葉工大・未来ロボット技術研究センター開発のロボット(除原発災害対応ロボット)
*Halluc?(2007年):56個の超多モータシステムを搭載し、高精度・ハイパワーな関節制御を実現する。形態変形し、状況に応じて変幻自在に移動できる。
*core(コア)(2010年):世界最大級の可搬重量100kgを備える二足歩行ロボット脚部である。電磁ブレーキを組み込む関節駆動用大型モータシステムと足部の衝撃吸収機構を搭載している。
*ILY-A(アイリーエー)(2015年):アイシン精機?とともに開発し、3輪構成、1人乗りのロボット技術を応用した電動小型のパーソナルモビリティである。ビークル、キックボード、カート、キャリーの各モードに変形し、多様な移動・行動を安全に支持する足となる。
2.原発災害対応ロボット(千葉工大)
*Quince:災害現場に入り、状況調査を行うキャタピラ付きレスキューロボットで、階段や瓦礫などを含む災害空間での走行、2kmの遠隔操作、および物体や空間の3次元形状の計測、映像、音声情報の取得を可能とする。2011年にQuince1号を福島原発の2,3号原子炉建屋に入れ、ダストサンプリング、スプレー冷却系の保全状態調査、線量測定と写真撮影を行った。特に放射線の影響はなかった。また2012年に互いに動かせる無線機能付きのQuince2,3号を2号原子炉建屋の使用済み燃料プールに投入した。
*Sakura:福島第一原発の地下施設内の情報収集を目的に開発され、階段の急傾斜、狭い幅に対応可能である。
*櫻弐號(2013年): Quinceの技術を基に、改良を重ねたソフトを継承し、新たなボディ、モータ、電気制御系を備え、ガンマカメラとレーザスキャナを組み合わせて放射線源を撮影した。登坂性能、防水性能、耐久性に優れ、特に原発内で放射能汚染されたロボットを水中に通し、除染できる。本技術は三菱重工に提供し、原子力分野向けロボットを共同で開発生産している。
3.介護ロボット
介護ロボット市場(経産省)は、2015年で167億円、2035年には4000億円超の予定である。
*食事支援ロボット・マイスプーン(セコム):手の不自由な人が体の一部を動かすだけで、自分で食事をできるようにする。
*洗髪ロボット(パナソニック):20数個の突起を持ち、頭部を気持ちよく洗髪する。
*?介助ロボット:排泄、移乗(移動)、入浴支援
・ロボッティックベッド(パナソニック):ベッドが変形して車いすになる。
・介助ロボット(理化学研究所、トヨタ):人をトイレに抱きかかえて運ぶ。
*マッスルスーツ(東京理科大、菊池製作所):圧縮空気使用の装着型動作補助装置で、物流用や介護用等があり、50kg程度の重量物を支持介助し、腰の負担を軽減する。2013〜2014年に770台サンプル出荷し、1台30〜50万円である。
4.医療ロボット
*外科手術システム・da Vinchダ・ヴィンチ(米):前立腺、心臓等の内視鏡手術支援ロボットで、患者への低侵襲手術を可能にする。2014年9月末現在3174台(米2185台、日本188台)活躍中。
*全身患者ロボット・シムロイド:歯科医の練習用に使用する。
5.その他のロボット
*BigDog(米):2005年に、荒い砂利道、雪上、砂浜、海の浅瀬、急な勾配を持つ坂などでも問題なく歩行でき、厳しい地形で歩兵に随伴できる四足歩行ロボットとして開発された。姿勢制御技術が高い。通常は左右の脚を交互に出して進むが、馬のギャロップのように疾走し、ジャンプして障害物を飛び越えることも可能である。
*WildCat(米):2013年に、戦場で荷物を運ぶ4本脚ロボットとして開発された。時速25kmでケーブルなしで走行でき、ギャロップとバウンド走法が可能で、転んでも起き上がれる。
*Spot(米):2015年に、体重が約73kgで階段の昇降やギャロップができる犬型ロボットが開発された。思い切り足蹴しても体勢を立て直せる。
*セコムロボット(警備ロボット):指示追尾型ロボット(現金輸送)、屋外巡回監視ロボット(工場、倉庫、危険区域、騒音・臭気の激しい環境などを巡回監視)、防犯用自律型小型飛行監視ロボット(施設敷地内で自律飛行し、犯行を画像記録)。
*ソニー・AIBO、ERS-110:初代、ビーグル犬似、ERS-111:改良版、ERS-210:ライオンの子供がモチーフ、ERS-311,312:通信機能搭載、ERS-220:ヘッドライトやLED搭載、ERS-7:初代の丸みを持たせ、AIBOシリーズの集大成、2006年に生産終了。
6.2025年の次世代ロボット市場
家事支援、看護・介護支援、警備支援、消防防災、インフラ保守支援、エンタテイメント等で活躍し、4兆8千億円の市場規模を予測し、産業用ロボットから共存するロボットに変化する予定である。
<感想>
様々なロボット技術が紹介され、非常に有用な技術が成長していることを良く理解できました。現在、日本の原発事故の放射能による大気、海洋の汚染問題は喫緊の課題であり、それに対応できる大きな技術要素の一つはロボット技術であると思います。是非、信頼性と機能性の更なる向上を図り、一日も早い放射能汚染問題の解決を期待します。
以上
(記録者:木村芳一)