H27年5月度科学技術者フォーラムセミナー案内「人工関節の40年」
2015年 03月 18日科学技術者フォーラム H27年5月度セミナー(第155回)のご案内
「人工関節の40年」
北里大学医療衛生学部 医療工学科 臨床工学専攻 教授 馬渕 清資 氏
高齢化社会となって関節に問題を抱える人が増え、身近でも人工関節に頼る人が増えてきました。馬渕先生は工学部に在籍しているときから人工関節に取り組み、医学部に移られてさらに発展させ、40年にわたって研究開発を続けられています。その苦労話を含めたお話しをしていただきます。また関節の潤滑に似ていると感じられたバナナの皮の潤滑に大変興味をもたれ、その潤滑機構を解明され、昨年イグノーベル賞を受賞されました。大変実用的な人工関節とユーモラスなバナナのすべりについて語っていただきます。
1.日時:平成27年 5月16日(土) 14:30 〜 16:50
講演終了後近くの会場で講師を囲んで懇親会開催(19時頃まで)
2.会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」5F 第4講習室
(JR大井町駅中央改札出て左直進、ヤマダ電気裏側)
地図:http://www.shinagawa-culture.or.jp/curian/
3.講演要旨
1972年,卒業研究の指導教官,笹田直先生から提示していただいた人工関節に関する研究課題に,生命科学の息吹を感じて身を投じて以来,人工股関節の潤滑に関する研究の博士論文,さらに,医学部に就職,医療衛生学部に移籍という経過の40年間以上にわたって,人工関節の基礎研究に従事してきた.当初,医工連携のかけらも存在しない頃のこと,周囲の学生や他の研究室の先生方は,何を物好きなと冷ややかな目で見ていた.ちなみに,昨年受賞したイグノーベル賞の受賞理由となった,バナナの皮の摩擦測定に取り組むきっかけになったのは,卒業研究で最初に手にした論文に示された関節の潤滑機構が,バナナの皮の滑りの良さと共通していると感じたことである.バナナの皮の摩擦は,幸運にも5年前に私が世に出すまで,正確な測定がなされていなかった.ただし,バナナの皮の摩擦の研究は,学会報告などで好奇の目にさらされた.それは,40年前に,人工関節の研究に対する周囲の目と共通するものだった.また,本人自信が,そこにサイエンスの香りを感じていたことも共通している.
現在,人工関節は,年間出荷数が20万を越える成熟した産業である.しかし,耐用年数(臨床使用年数)が20年以上に延びるに従い,人工関節の摩擦面から排出される摩耗粉の問題,あるいは,金属部品から溶出する金属イオンの有害反応など,いまだに,多くの問題が発生している.人工関節は,工業製品である.しかし,人体に設置されて,関節部分の代替治療に用いられる.人体の内部という環境に置かれるという特殊事情がある.たとえば,人工関節の設置スペースは,骨や筋肉などの人体組織に穿つ空隙によって確保される.よって,人工関節の外形状のデザインは,外科手術で我々の体をどの範囲まで切除するかという臨床医学の問題に直結する.たとえば,人工関節の力学強度を獲得するために,より大きいサイズにすると,周囲の骨組織の力学強度を低下させてしまう.従って,人工関節の安全率だけを議論することはできない.常に,人工関節を設置した骨組織を含めた全体の安全率を評価する必要がある.しかも,人工関節と骨組織の境界にも,力学的安定性が要求される.こうした,医学,工学の両面にまたがる問題に正面から取り組むには,医工連携というような両者の立場を維持した個別の取り組みでは,不十分である.私は,医工融合によって医工学という新しい分野においてのみ,未来を切り拓く力があると考えている.本講演においては,過去40年に人工関節技術がどのように変遷して来たかについて,主に,工学部の大学院生から受けた質問内容から,一般のエンジニア諸氏が抱く人工関節についての疑問点を類推整理して,お話しできればと考えている.
4.経 歴
昭和25年名古屋市生
昭和48年 東京工業大学工学部生産機械工学科卒業
昭和53年 東京工業大学大学院理工学研究科生産機械工学専攻博士課程修了
同年 工学博士号取得
昭和53年 北里大学医学部助手
昭和55年 北里大学医学部講師
昭和60年 東京工業大学工学部非常勤講師 (兼務)
平成3年 北里大学医学部助教授
平成4年 東京工業大学大学院非常勤講師(兼務) 現在に至る
平成6年 北里大学医療衛生学部教授 現在に至る.
平成23年 名古屋大学工学部非常勤講師
平成24年 首都大学東京大学院非常勤講師(兼務)現在に至る
受賞歴
ig Nobel Prize 2014, Physics Prize
所属学会
バイオトライボロジ研究会会長,日本人工関節学会評議員,日本臨床バイオメカニクス学会評議員,バイオマテリアル学会評議員
5.参加費 会場でお支払いください。
・科学技術者フォーラム(STF)正会員,女性、学生 1,000円
・BCC-NET会員、ティー・エムレポート会員、経営支援NPOクラブ会員、NPO-BIN会員、
異普奇会会員、生体環境保全交流会会員、千葉県加工技術研究会会員、表界研会員、
BEST-JAPAN研究会、NPOエルダーシステム、その他友好団体会員 1,500円
・一般 2,000 円
*講演中の写真撮影などは、ご遠慮願います。
6.参加申込:下記の申込書に記入して、セミナー担当の木村 芳一 宛メールまたはFAXでお申込みください。
TEL,FAX:045-301-2563 E-mail:yt.kimura@sea.plala.or.jp
*************セミナー参加申し込み ***************
<科学技術者フォーラム(STF)平成27年5月度セミナー(第155回)参加申込書>
●お名前: (ふりかな: )
●所属(会社,事務所、団体):
●メールアドレス:
●TEL: FAX:
●参加区分:
・科学技術者フォーラム(STF)正会員、女性、学生 1,000円
・BCC―NET会員、NPO−BIN会員、ティー・エムレポート会員、経営支援NPOクラブ会員、異普奇会会員、生体環境保全交流会会員、千葉県加工技術研究会会員、表界研会員、
BEST-JAPAN研究会、NPOエルダーシステム、その他の友好団体 1,500円
・一般(紹介者: ) 2,000円
●懇親会:参加 不参加 (いずれか残す)
●領収書(講演会)の必要有無: 有 無 (いずれか残す)