H27年1月度セミナー報告:「低炭素社会構築の為に」1部太陽光発電、2部発光ダイオード
2015年 02月 06日平成27年1月 第151回STFセミナー報告
1. 実施日: 平成27年1月24日(土) 14:00 〜 17:00
2. 場 所: 品川総合区民会館(きゅりあん)
3. 講 演:「低炭素社会構築の為に」1部太陽光発電、2部発光ダイオード
4. 講演者: 芝浦工業大学名誉教授 長友隆男 氏 5. 参加者: 41名
6. 講演要旨
スマート社会実現にはクリーンなエネルギー源と節電技術が必要不可欠となっています。
中でも無尽蔵な太陽のエネルギーを取り出す太陽光発電と、従来の白熱電球や蛍光灯に比べて遥かに低消費電力なLEDは低炭素社会の柱となる日本が誇る重要技術であります。
第1部で太陽電池開発の背景と太陽電池の種類と特徴、及び太陽電池システム
第2部はLED発光メカニズムと青色LEDの特徴と応用
7講演内容。
第1部太陽光発電について
化石燃料に依存しない新エネルギー源の研究開発を進めるために“サンシャインプロジェクト”が1974年にスタートし、太陽光エネルギーの有効利用は大きな課題の一つであった.
太陽光発電は新しい発電システムで、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する.
主な太陽電池には、(1)シリコン太陽電池(単結晶、多結晶)、(2)アモルファスシリコン太陽電池、(3)InCuSe2系薄膜太陽電池がある.
【半導体のエネルギー間隙と変換効率】
太陽電池に用いる半導体のエネルギー間隙Eg(eV)光電変換効率を理論限界変換効率とともに示して、理論限界変換効率はEg=1.4 e付近で最大値30%になる.Eg=1.4 eVを境に、Egが小さくなると開放電圧Vocが低下しEgが大きくなると短絡電流Iscが小さくなる.
【発電の仕組み(光起電力効果)】
バンドギャップ以上の光が照射されると、価電子帯の電子が伝導帯に励起し、電子・正孔対を形成する.これらの電子・正孔対は空乏層内の強い電界で分離され、電子はn形領域へ、正孔はp形領域に移動する.端子が開放されていれば、開放電圧Vocを得る.太陽電池に最適な負荷を接続すれば、負荷に最大の電力を供給する.
【半導体の光吸収と反射防止】
太陽電池の変換効率を左右するのが半導体の光吸収の強さである.結晶Siに比べ、化合物半導体の多くが2桁程度大きな吸収係数を持っている.従って、化合物半導体は1〜2μmの薄膜も十分な光吸収が起こる.CuInSe2は最も高い吸収係数を持っているが、バンドギャップ(1.04eV)がやや小さいのでCuGaSe2との混晶(Cu, In, Ga, Se)を用いる.
変換効率を高効率にする方式に光反射防止装置などがあるが太陽電池の製造工程に難があって市場性に出ていない.
【SIS太陽電池と透明電極】
透明電極は、ラップトップのパソコンの表示装置、液晶テレビ、携帯電話などの表示装置に使用され、大量に出回っている.
2010年の世界の発電容量において風力や太陽光などの再生可能エネルギーが原発を初めて逆転した。原発は、安全規制が厳しくなったことや建設費用の増加で1980年代後半から伸び悩み、2010年の発電容量は3億7500万kW.一方、再生可能エネルギーは地球温暖化対策で注目されて急激に増加.風力と太陽、バイオマス、小規模水力の合計は億8100万kWになり、初めて原発を上回った.
太陽光発電の特徴はon-site generation(その場発電)であり、必要なところに必要なだけの発電ができる送電線フリーの発電システムである.(地産地消)捨てられていた太陽光エネルギーから太陽光発電システムを用いて発電でき、大きなメリットとなる.
一方欠点もある。地上に降り注ぐ太陽エネルギーの量はピーク時で、1kW/m2程度であるのでエネルギー密度が低い. ⇒ 集光する.
曇天や雨期および夜間にはほとんどエネルギーを直接的に利用できないためにエネルギ需要のタイミングと合致しない場合があり、供給に不安定性がある.⇒ 蓄電池を用いる.コストアップになるが、電気自動車が普及しつつあり、夜は車に充電する.
これらを解決するには、電力システム全体の需給調整を行う「スマートグリッド」を構成することが重要である.「作る」「貯める」「使う」「節電能力」をもつ日本の家庭部門への太陽光発電導入実績は世界の中でも群を抜いている.しかし2014年10月末現在、原発は停止.電力の供給を海外からの化石燃料に頼っており、その依存度は過去最高の水準になった.
第2部のLED照明
あかりには2つの発生メカニズムがある.
熱放射:炎、太陽光、ガス灯、白熱電球など.
ルミネセンス:白熱ガス灯、蛍光灯、有機EL素子、発光ダイオードなど.
蛍光灯は蛍光管内の水銀蒸気にフィラメントから出た電子が高速で衝突して放電、プラズマができる このプラズマが蛍光管壁の蛍光体を叩いて発光する.
発光ダイオードの発光メカニズムは電子と正孔がPN接合部付近で再結合する際に光を放出する。
LEDの分野では、1980年代半ばに、MOVPE法を用いてサファイア基板上に低温で作製したGaNバッファ層を堆積させ、その上に極めて良質のGaN膜を堆積させることができた.これはサファイア基板とGaN膜の間の格子不整合(〜17%)が低温バッファ層の堆積によって緩和されたことによるものである.
発光波長を変化させるためにInGaNのエピタキシャル成長に成功.(1989年) 芝浦工大 長友隆男ら
GaNやInGaNの良質のエピタキシャル成長膜を得るためにサファイア基板上に低温(500℃)GaNバッファ層(緩衝層)を堆積させ、その上にGaNやInGaNを堆積させる。比較的欠陥の少ないエピタキシャル成長膜を得る.(1989年) 芝浦工大 長友隆男ら
p形のGaNやInGaNエピ膜の成長.(1989年)名古屋大 赤崎勇
GaN pn接合による青色発光ダイオード.(1989年)名古屋大 赤崎勇
発光層にInGaNを用いる時点で、SH接合、DH接合を取るようになり、発光効率のアップ、発光スペクトルの線幅が狭くなる(スペクトルがシャープになる).この結果InGaN層の組成を調整して目的の波長の光を発光させることができる.
【青色LED応用に白色LED照明技術】
白色光源として広く利用されている白熱電球、蛍光ランプ、高圧放電ランプを代替可能な次世代省エネルギー型照明光源として期待されている.LEDは長寿命で、消費電力が少なく、低炭素社会を目指す我々にとって相応しい「あかり」となった.現状ではまだ価格が高いが、利用が拡大すれば量産効果で下がる.
【GaN系半導体の電子デバイスへの応用】
GaNは広いバンドギャップ(3.4 eV)に起因する高い破壊電界(2x106 V/cm)と高い飽和電子速度(2.5〜2.8x107 cm/s)という優れた物性定数をもつので高周波・高耐圧動作の電力素子が期待されている.マイクロ波帯高出力素子として期待されている.
【LEDの普及率・市場規模】
2013年におけるLED照明普及率 約23%.内閣府ICT-WGでは2020年にはLED照明と有機EL照明を合わせて100%を達成することを目標にしている.
【LED市場】
日本ではLEDの性能向上と価格低下により、LED電球の市場が拡大、その動きを追ってLED照明器具の市場が拡大.電球類の国内市場動向を見ると2009年上半期5億円、2009年下
半期40億円、2011年上半期100億円、2011年下半期120億円、照明器具については2011年2200億円を超える市場になっている.
ご質問内容
エネルギー間隙と変換効率の再度説明依頼
LED照明器は室内が暗いのはどうしてか
報告者 下川 三郎