H26年11月度セミナー報告:「生体用金属材料開発・実用化と最先端3Dプリンタの紹介」
2014年 11月 28日平成26年11月 第149回STFセミナー報告
STFセミナー担当 児山豊
1. 実施日: 平成26年11月18日(火) 14:00 〜 17:00
2. 場 所: 品川総合区民会館(きゅりあん)
3. 講 演:「生体用金属材料開発・実用化と最先端3Dプリンタの紹介」
4. 講演者: 東北大学 金属材料研究所 教授 千葉 晶彦 氏
5. 参加者: 53名(会員19名、有効会員17名、一般17名) セミナー後の懇親会参加者22名
6. 講演要旨
「生体用金属材料Co基合金「COBARION」の開発・実用化」
(1)代表的なCo合金は、「MP35N」Carpenter 社(米国)、「SPRON510」セイコーインスツル、「COBARION」エイワの3種である。
(2) MP35Nはぺースメーカー用ワイヤー、SPRON510は高級時計用ぜんまい、COBARIONは、人工関節、脊椎矯正用ロッドなどに使用されている。
(3)「COBARION」は、岩手大学(千葉教授)と岩手県および県内企業の産学官地域
イノベーションプログラムにより研究開発が行われ、実用化に成功した。
(4)これらのCo基合金は、高弾性、高強度、長寿命、高耐食、高耐熱、非磁性と
非常に優れた特性を有しており、特に近年、生体用材料として一般的に用いられているSUSやTi合金に替わり、有望視されている。
(5)Co基合金の生体材料応用としては、歯科補綴物用材料、脊椎固定具、脳動脈瘤
クリップ、ステントなどがあげられる。
特に、MRI撮影には、その透過性より、非磁性材料が必要となるため、本材料の
ニーズが高まっている。
「電子ビーム積層造形技術(EBM)」
(1)金属造形積層技術は、現在下記装置が市販されている。
<Powder Bed AM粉末ベッド方式>
・電子ビーム方式(ARCAM社スウェーデン)
・レーザービーム方式(EDS独、Concept Reser独、MTT英国、松浦機械製作所日本、Phenics Systems仏、Sodic日本)
<Leser Powder Injection AM粉末噴射方式>
・Laser Engineered Net Shaping(Optmec米国)
・Direct Metal Deposition(POM米国)
・Laser Consolidaration(Accufusionカナダ)
・その他、(DMG MORI日本、山崎マザック日本)
(2)電子ビーム積層造形技術の特長、
ビーム方向やスキャン速度やなどの最適化により、急冷凝固、一方向凝固
(単結晶成長)が発現し、均一微細析出物や単結晶が得られる。
これにより、高弾性、高強度、高耐食、高延性、高耐熱性の優れた材料を
創成することが可能となる。
(3)EBM応用事例としては、人工関節用新規CoCr合金では、従来に比べ高強度、高延性の材料が得られている。
(4)今後の課題と将来性
・課題は、EBMの溶解凝固現象の解明による固有の金属学の確立と造形
プロセスの最適化である。
・将来的には、粉末使用による造形プロセスの確立により、大幅な工程削減と
組織制御された高機能材料の創出が期待できる。
7.質疑応答
(1)材料純度は、どうなるか?
粉末使用と真空プロセスのため不純物は入りにくく、高純度が得られる。
(2)GEのガスタービンブレードへの応用化はどうなっているか?
マル秘事項となっており、状況は不明であるが、研究開発がかなり進んでいると思われる。
(3)粉末使用プロセスでは高コストになるのでは?
粉末の製造は容易であり、量が増えれば低下する。また装置も量産効果により低価格化する。多品種少量生産にも対応し易い。