H26年5月度セミナー報告「ここまで来た内視鏡の現状と将来」 ―世界に誇る医療機器―
2014年 05月 28日H26年2月度(第143回) セミナー報告「ここまで来た内視鏡の現状と将来」 ―世界に誇る医療機器―
1.日時 :2014年5月9日(金) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F
3.参加者:講演62名
4.題目 :「ここまで来た内視鏡の現状と将来」 ―世界に誇る医療機器―
5.講演者:オリンパスメディカルシステム株式会社 第2開発部長 斎藤 吉毅氏
<講演要旨>
医療機器関連産業の中で内視鏡は消化器ガンの診断から治療まで実施出来る機器として、今や欠くことのできないものになっており、外科手術のイノベーションに多くの貢献をしています。これまでの発展の歴史、そして技術課題や今後の動向についてお話し頂きました。詳しい講演要旨は以下の当セミナーの案内をご参照下さい。
http://www.stf.or.jp/top/news.php?SN=305&page=1&cate=cate01
●オリンパスの内視鏡の開発のきっかけは、寿命延長に伴うガン患者が増加し、外科手術が増加してきた状況下、日本人に多い胃ガンの早期発見に自社のカメラ技術が応用可能と考えたことであった。オリンパスではカメラの発想を変え、真っ暗の身体の中にミニカメラを入れて写真をとり、その画像から診断すれば良いと考えた。そして世界初の胃カメラを創造した。画像から診断するというアプローチについては、日本だけが受け入れたとのことでした。
●世界の主要医療機器メーカーの30社に日本のメーカーとしては、オリンパスとテルモが入っている。
●内視鏡のメリット:医療用途では身体に低侵襲であることから患者の負担が少なく、入院日数も圧倒的に少ない。工業用途では対象物を非破壊で検査できる。
●内視鏡の歴史は140年程前に始まった。硬くて曲がらない硬性鏡(1877,Ntze)、軟性胃鏡(1932,Schindler)、胃カメラ(1950,オリンパス)、ファイバースコープ(1958,Hirshiwitz)、ビデオスコープ(1982,Melch Allyn)、超音波内視鏡(1982,オリンパス)と発展してきた。
●内視鏡でこれまで見えなかったものが見えるようになると、患部を触りたい、処置したいと、外科医の欲求は進化する。これらの希望を叶えるべく、オリンパスは外科手術のイノベーションに多くの貢献をしてきた。結果的に内視鏡の種類は非常に多種になっている。
●進化:胃カメラに続きファイバースコープが開発されたことで、胃あるいは腸の中が写真でなく、ライブ映像で見られるようになった。また、消化管の表面だけではなく、その先の状態を見る内視鏡として、超音波内視鏡が開発されている。この超音波内視鏡の開発のきっかけは、すい臓ガンの早期発見であったが、胃ガンの早期診断に大いに貢献した。超音波内視鏡は演者も開発に関与した機能性内視鏡であり1988年に発売した。内視鏡カメラは挿入部位の一周360度をスキャンでき、罹患部位の断層像が得られるので、ガンがどの組織層まで浸潤しているのか画像で判る。病理組織所見ときれいに一致する。また、口から飲み込み、胃、小腸大腸を経て排出される小型カメラ内蔵の小腸内視用のカプセル内視鏡もある。
●医学的価値から見た内視鏡:内視鏡の活用は診断から処置・治療に及んでいる。
・内視鏡で得られた肉眼写真で、まず形態診断が出来る。ついで異常な形態部分からバイオプシー用の処置具で小組織片を切り出し細胞診、組織診で(ガンの)確定診断が行われる。
・口腔経由で、胃や大腸のポリープに対してはポリペクトミーが、ガンの処置・治療としてはEMR(内視鏡的粘膜切除術)、EST(内視鏡的乳頭括約筋切開術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)がある。また内視鏡下の外科手術では、胆嚢摘出、腸切除、ヘルニア、肺切除等が行われている。身体のどの蔵器にも内視鏡は適用されている。
●HV-TV内視鏡画像:ハイビジョンにすることで画像の解像度が上がり、正常とガン組織の血管走行の差が明確になった。また、適用される臓器に合わせてファイバースコープの直径も最適化して、医家・患者の利便性を向上させて来た。
●不可視光利用:通常の白色光と異なる光を使用する、ヘモグロビンに吸収しやすい狭帯域光を照射することで、新生血管の場所を観察出来るようになり、病変が判別し易くなった。ガンが早期に発見出来るようになって来た。
●組織診断用、処置・治療用の処置具では組織・用途(組織採取用、ポリープ切除用、異物摘出、砕石・採石など)・サイズなどに応じ約3360種を開発してきた。
●内視鏡の将来動向:内視鏡診断は細径化、画像処置技術が向上している。近未来ではより高精度診断、非可視光診断、超・拡大観察が進み、またカプセル内視鏡も進展するだろう。治療としては経内視鏡的処置・高度手術、シミュレーション、内視教科外科手術、ロボッテックサージャリー、テレサージャリーへの時代が始まっている。
以上
(記録者 後藤幸子)