H26年4月度セミナー報告「バイオ医療に貢献するナノマイクロ材料加工技術」
2014年 05月 02日H26年STF4月度(第142回) セミナー講演報告
1.題目 : 「バイオ医療に貢献するナノマイクロ材料加工技術」
2.講演者: 首都大学東京 先端材料加工研究室 教授 楊 明 氏
3.日時 :2014年4月8日(火) 14:00〜16:45
4.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 4F
5.参加者:講演 35名
<講演要旨>
サブミリからナノまでの広い範囲の微細加工技術の研究開発を行っており、微細プレス成形からMEMS加工までのを高能率で加工できる新技術およびその応用の研究開発が主たる内容となる。
マイクロプレス加工技術として「振動援与方式マイクロ絞り加工技術」や「連続一体プレス加工技術」、最近では「超塑性効果を利用したナノマイクロ部品加工技術」への挑戦を行っている。
特に、マイクロ医療における金属系部品の加工および応用として、「金属系マイクロバルブ・ポンプ」、「カーボンナノチューブを用いたバイオバイオ分析システム」、「金属ナノ粒子の3次元担持体表面への形成および応用デバイス」などのテーマを推進中である。
また「新型インフルエンザ検出装置」を東京都高度研究プロジェクトのメンバーとして参画中で、上記加工技術を用いた「3次元LSPRセンサー」の研究開発も進行中である。
<講演内容>
1. マイクロ金属成形技術(サブミリ〜ミリオーダー)
・マイクロ成形加工の課題としては、?成形性悪化(素材の結晶粒径/板厚比の減少による表面
粗さの増大)?成形精度低下(素材寸法精度、表面粗さ、金型精度、加工機械精度などに
よる精度低下)が挙げられる。
・成形品としては、?マイクロギア(SUS304、直径0.24mm、厚み0.1mm)
?円筒絞りカップ(SUS304、直径0.7mm、高さ0.5mm、板厚み0.2mm)
を使用し、一体成型加工によるデバイス組み立てを行った。
・また、金属マイクロバルブおよびそれを用いたマイクロダイヤフラムポンプ(直径12mm
高さ3.5mm)を創成した。しかし、実用化上は加工精度および表面粗さの確保ができず、
現在はMEMS技術を用いて実用化中である。(菊地製作所)
・H25−27年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)として、「SUS304
超塑性効果を利用したナノ精度マイクロ部品の加工技術開発」(小松精機製作所、他)を
推進中である。
・マイクロ金属成形加工に適した加工技術として、加振により微細表面の平滑度の向上を行う
「振動援用成形加工技術」および加熱により材料変形抵抗を減らす「熱援用成形加工技術」
を開発中である。
2. ナノ材料の自己組織化によるナノ・マイクロ構造の創成
・Si酸化膜上にFe触媒,Al補助材によるCVDによるカーボンナノチューブ(CNT)
の合成
・CNTなどのナノ材料のボトムアッププロセスによる自己組織化マイクロ構造
・自己組織化で形成されたCNTマイクロ構造およびパターン化CNT担体にAuナノ粒子を
担持したCNTマイクロ構造
・上記技術を応用したマイクロバイオ分析デバイスの研究開発
・上記デバイスを応用した「迅速・高信頼性感熱症スクリーニングシステムの開発」
(東京都高度研究プロジェクト)へ参画中
<質疑・応答>
1. 通電加熱の場合に加工材料電流分布ばらつによる温度ばらつきが発生するのではないか?
金型構造などの工夫により、電流の流れを制御している。±電極を3本にした場合のCAE
シュミレーションにより事前確認済である。
2. 振動援用成形の場合、加振による表面加工硬化が生ずるのではないか?
振動振幅が小さく、このエネルギーが材料内部欠陥に吸収されることと、熱エネルギーによる
高温化による変形抵抗の減少が起きるため、加工硬化は生じない。
3. 熱プレス時には、高温化に伴う材料表面の酸化膜が形成されるが、雰囲気はどうなっているか?
現在は、真空中で加工しているので酸化は生じない。
4. プラズマ焼結に用いられているパルス大電流を流して併用加工は適用可能か?
この方式を応用したHIPMS法による加工の研究も行われている。
以上 (記録者 児山 豊)