H25年12月度セミナー報告「日本から世界へ発信する植物工場」
2014年 01月 23日H25年12月度(第138回) セミナー報告「日本から世界へ発信する植物工場」
1.日時 :2013年12月2日(月) 14:00〜16:50
2.場所 :品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F
3.参加者:講演 38名
4.題目 :「日本から世界へ発信する植物工場」
〜サスティナブル・低環境負荷ナレッジ産業の新展開〜
5.講演者: 株式会社キーソトーンテクノロジー
代表取締役社長・CEO 岡崎 聖一 氏
<講演要旨>
植物工場は栽培技術、栽培環境制御技術、人工光源技術、情報ネットワーク技術、流通および販売チャネルの整備などの複合技術とそれらを精緻に組み合わせることが求められる。とりわけ完全制御型植物工場は閉鎖環境で植物生産を行うため、人工光源が重要なポジションを占めることになる。演者は栽培用LED及び植物工場プラントシステムの開発、販売を主宰している。6次産業を実践する立場から、今回は植物工場栽培装置面の話題にとどまらず、生産した野菜の販売までを、都市型の新しいビジネスとして、実例を交えながら、概要と展望をお話し頂きました。
・一次産業+二次産業+三次産業=六次産業
キーストーンテクノロジー(KST)の事業内容は、以下の各産業に該当する。
一次産業:野菜の「生産」、「研究開発」
二次産業:栽培装置の「開発」、「製造」、「コンサルティング」
三次産業:野菜の「販売」、「マーケティング」、「ブランディング」
六次産業化に取り組み、日本から食関連産業の変革に取組むことがKSTのミッション!
第一部 なぜ、植物工場なのか?
・世界的に見ると人口増加と食料供給は不整合の状態にあり食糧難時代となっている。また、国内を見ると農業所得は低下、就業者は高齢化し、東電原発事故の放射能汚染拡散で農地が消失している。
・生産地と消費地の輸送距離(フードマイレッジ)が大きいと、輸送エネルギー消費とCO2排出が大きくなり環境負荷が大きい。フードマイレッジの数字を小さくするには、消費地である都市に、特に葉物の生産機能(植物工場)を持たせることで農業を新産業に再生できる。少子高齢化に伴う遊休不動産の有効活用対策としても期待される。
・完全植物工場への期待では、まず国産食料の安定生産と産業化が、「太陽光利用型」と 「完全人工光型」で進んでいる。「完全人工光型」の大部分では安価な蛍光灯が利用されている。しかしこれからはLEDの時代(後述する)。現在、両者合わせて約150の植物工場がある。
第二部 植物工場事業化必須科目
・完全人工光型植物工場を支える様々な栽培技術の重要項目である「植物はどのように光を利用しているのか?」を考えるとLED光源の有用性が明白になる。
・植物は可視光の一部を利用し、赤色光で光合成(成長)を、青色光で光形態形成(茎長、葉の形態、開花時期)を、両者の組み合わせで機能性成分合成(ビタミン、クロロフィル、フラボノイド等)を行う。従って栽培光源は植物の生活環で必要とする波長だけや組み合わせを照射すればよく、効率が良くなる。
・植物栽培に利用可能な光源としてのLEDは発光波長特性がシャープで、目的の単色光だけを発光、放熱が少ないので近接照射が可能、ランプの寿命が長く、大きさが小さいので、設計の自由度がある。
・LED栽培光源は太陽光より短期間での、葉ものの栽培が可能。発根を促す作用もあるらしい。
光合成補光用LED照明と太陽光の両者を利用した植物工場としては、ミニトマト、イチゴ(ハイカラ野菜で販売)、ランの栽培事例がある。
・一方、蛍光灯は元々ヒト用に作られ、蛍光体で発光波長が規定されるので、生活環に合わせた管理はできない。25%のエネルギーが可視光になっているが、蛍光ランプからの発熱が、植物工場の空調コストを押し上げている。
第三部 生涯学習と技術経営(MOT)
・異業種からの参入と事業化:元々は高周波測定器の回路設計技術者であり、プリント回路基板の設計会社を経営していたがITバブル崩壊し、仕事量が激減。
・新たな事業化に向けて以下の4つを考え、研究開発にチャレンジした。?受託産業からの転換、?外貨が稼げる産業「グリーンビジネス」「環境関連産業」への移行、?エレクトロニクスをプラットフォームに、?環境、食料問題の解決の貢献出来る新規事業。
・日本全国の経営者共通の悩みは、既存事業の頭打ちと先行きに対する漠然とした不安がある。だからこそ、新規事業に挑戦したい。
・新規事業成功には?戦略・ビジョン、?有望かつ自社にあったもの、?人材確保と経営者の思いの刷り込み、?経営者自らが学び、成功するまで諦めない姿勢が重要。粘着気質と勇気ある撤退ができるバランス感覚が必須。
・イノベーションを起こすことでグローバル時代を生き残る。?動機、?戦略シナリオと基本コンセプト、?研究と技術開発、?障害と抵抗、?フィードバックとイノベーションの連鎖的展開、?リーダーシップの6つの要素がある。
第四部 植物工場事業で注目の集まるキーストーンテクノロジーのビジネスモデルと事例紹介
・都市型完全人工光方式植物工場の世界標準を目指すLED生産設備を家庭用、レストラン用、いわゆる植物工場向けに以下をラインナップしている。トルネードACE、収穫ACE、 Sodatsu、Piccolo菜園、LED菜園Mini、LED菜園、大型LED菜園。
・完全制御型植物工場稼働事例の紹介
〜外食産業活用編〜:外食大手、仙台 杜の市場、レストラン
〜福祉関連産業活用編〜:知的障害者の雇用、就業支援事業
〜流通産業活用編〜:野菜仲卸・野菜加工業ハイカラ野菜の生産、デパ地下
〜異業種参加活用編〜:自動車メーカー、津波被災地、南極昭和基地
第五部 ブランド構築とマーケティング
・植物工場の特徴を活かした機能性野菜の販路開拓戦略とは⇒顧客の創造
・植物工場と植物工場ビジネスの違い:植物工場ビジネスは、「生産革新(植物工場)」「流通改革」「マーケティング」「ブランディング」から構成され、高付加価値農産物を価値に見合った価格で販売する仕組み作りである。
・エネルギー利用効率の高い植物工場の生産設備があり、高付加価値の野菜を生産し。継続販売の仕組みとしてのファン作りが成功の鍵(KSF)。
・各新型と従来型の対比
革新型 従来型
「ブランド」「機能性・特徴」「品種名」 「産地名」「品種名」
・六次産業化の成功:農産物生産の・マーケティング、ブランディングノウハウの有無が、植物プラント選びの必須要件。
第六部 海外展開のススメ
・シンガポールから海外進出を本格化している。
先日NHK WORLD NEWSで、岡崎さんとLED菜園がされた。
アラブビジネスフォーラムに出展して、JETROがオーサライズする唯一の植物工場メーカーとして取材を受け、それがNHKワールドニュースで世界中に流されたとのこと、いろいろなメディアに取り上げられているとのこと。
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsline/201312162018.html
?イノベーションを起こすことでグローバル時代を生き残る“です。
(記録者 後藤幸子)