H25年9月度見学会報告「昭和電工株式会社川崎事業所プラスチックリサイクルプラント」
2013年 10月 21日 第47回 NPO法人科学技術者フォーラム見学報告
昭和電工株式会社川崎事業所プラスチックリサイクルプラント見学
1. 見学日:平成25年9月2日(月)13時30分から15時頃まで
2. 訪問先:昭和電工株式会社 川崎事業所(川崎市川崎区扇町5−1)
3. 参加者:50名
4. 案内および説明者:川崎事業所
プラスチックケミカルリサイクル推進室 廣橋 順子氏 他数名
5.昭和電工株式会社(概要:パンフレット参考)
この川崎扇町地区は大正時代からの埋立てにより工場が建設され、1928年(昭和3年)に肥料会社として設立され、1931年(昭和6年)わが国初の国産法によるアンモニアと硫安を製造開始した。
現在の昭和電工?は川崎埋立て地区として扇町、大川および千鳥の3地区があり、総面積約56万?で1000名以上の方が働いている。
現在の事業の大きな流れとしては、3つの流れがある。?塩の電気分解事業による水素、塩素、苛性ソーダ製造の流れ、?空気の分離事業による窒素、酸素およびアルゴン製造の流れ、?アンモニアの合成事業の流れである。
アンモニアの原料となる水素を、一度使用した石油製品であるプラスチックから得る事業を2003年(平成15年)から開始しており、今回の様な工場見学を行っている。
6.プラスチック廃棄物および容器包装リサイクル法についての説明
プラスチック廃棄物の現状から処分場の問題、リサイクルの必要性から平成9年容器包装リサイクル法が施行され、事業者、自治体および消費者のそれぞれが役割を担うことが決められているとの説明があった。消費者は分別排出、自治体は分別収集そして事業者はリサイクル化を行うことを義務付けている。3Rについても説明された。
日本のプラスチック排出量は2011年(平成23年)で、総量年間952万トン、その内、一般家庭からのものは465万トン(容器包装リサイクル法の対象品67.8万トンを含む)である。
リサイクルには?マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルおよびサーマルリカバリーがあり、廃プラスチックの78%が利用されている。(残り22%は単純焼却または埋立処分)。ケミカルリサイクルには、?コークス炉化学原料化、?ガス化、?高炉還元剤、?油化があり、昭和電工はガス化によるリサイクルである。
7.使用済みプラスチックからアンモニアの製造プロセスの説明
技術の特長として最も大きな技術は加圧二段式ガス化炉であり、処理能力は195トン/日でプラスチックを処理できる日本最大の設備である。以下にプロセスを説明する。
使用済みプラスチックは、自治体にて各種機器で圧縮梱包し、番線・PPバンド等にて結束の後、運送されてくる。
プラントでは、まず破砕成形設備?破砕機に投入され、破砕され、?金属選別機にて金属異物を除去したあと、?成形機(押出機)にて減容成形品(RPFという)に加工される。
次に、RPFはガス化設備プラントへ移送され、貯槽を経て、?低温ガス化炉に投入される。低温ガス化炉は熱した「砂の流動床炉」で圧力1Mpa,温度600〜800℃の条件下で少量の酸素および蒸気をガス化剤として熱分解および部分酸化され、<分解ガス><タール><チャー>から構成されるガスになる。つぎに、このガスは?高温ガス化炉へ移され、1400℃の高温で少量の酸素と蒸気により熱分解および部分酸化され、水素と一酸化炭素を主体とする合成ガスに改質される。この合成ガスはダイオキシンの再合成を防止するために一挙に200℃まで急冷された後、?ガス洗浄設備に送られ、含まれる塩化水素(塩ビ等に由来)はアルカリ水で中和されて塩として分離される。次に、?CO転化設備で、350℃まで加熱され、一酸化炭素(CO)は水蒸気との反応で水素と二酸化炭素に転化される。次に、?脱硫設備にて硫黄が回収されて、水素と二酸化炭素を主体とする合成ガスとなり、?アンモニア合成塔にて合成ガスは窒素ガスと共に圧縮してアンモニアが合成される。
能力は使用済みプラスチック195トン/日からアンモニアが175トン/日生産される。この他不純物分離によりスラグ、金属・ガラス、塩、硫黄などが分離されそれぞれ適した用途に向けられ、不純物も含めて100%のリサイクルを達成している。
8.感想
多くのプラスチックのリサイクル関してはいつも疑問を持ちながら見てきた。それは、リサイクルの筋書きのどこかに無理が有った。
この度のガス化リサイクルによるアンモニア合成プラントを拝見して、プラントの大きさと技術レベルの高さに感銘した。廃プラスチックを原料としたアンモニア合成の筋書きが見事である。
加えて、全体のプラント技術が、すべて昭和電工?殿の得意なユニットプロセス技術の集合体であり、なおかつ製品そのものが昭和電工?殿の基本商品であることも見事である。
たとえば、レアーメタルの原料を携帯電話などのリサイクル品に見出し、これを都市鉱山と称した。昭和電工?殿の場合には、アンモニアの原料を廃プラスチックに見出したので、廃プラスチックを都市油田と考えたい。10年間製造を継続されてきて、より完成した技術となっている中で、廃プラスチックの調達に苦労されていることは皮肉に思うが、最も良い筋書きの技術として応援したいと思う。
廣橋さんの素晴らしい説明は良く理解できた。とくに我々消費者にもっと分別に協力してほしいという言葉が心に残った。
記録 矢崎文彦
監修 古西義正