H25年6月度見学会報告「宇宙航空研究開発機構(JAXA)調布航空宇宙センター」
2013年 08月 12日平成25年6月度 NPO法人科学技術者フォーラム見学会報告書(2)
見 学 先:宇宙航空研究開発機構(JAXA)調布航空宇宙センター
(所在地:東京都調布市深大寺東町7-44-1)
見学日時:平成25年6月26日(水)14:00〜14:45
見学者数:44名
NHK放送技術研究所の見学後の移動で、電車事故や雨の影響で交通が乱れ、JAXAでの見学開始予定時間(13時40分)に間に合わず14時から14時45分の短時間の見学になってしまったが、JAXA広報の方々は、要領よく各種展示物について説明していただいた。
以下に見学の概要を述べる。
1)独立行政法人「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」全体の説明を受けた。
宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)の3つの機関が統合して10年目である。
2)調布航空宇宙センターの概要
このセンターはJAXAの中で航空科学技術の研究を主として行ってきている。代表的な設備としてアジアで一番大きな風洞実験設備を所有しており、日本の航空機開発のために使われてきている。
3)垂直離着陸(VTOL)研究のためのフライングテストベッド
1955より研究に着手。垂直離着陸(VTOL)の開発のためのフライングテストベッド機。現在、VTOL旅客機は世界中でも作られていないが、1990年代のハイヤーやオスプレイなど戦闘機では実用化している。
4)低騒音STOL「飛鳥」
飛鳥は、低騒音STOL開発のための基礎技術確立の目的で、航空宇宙技術研究所(現JAXA)によって研究開発された実験機。
航空自衛隊が使用しているC-1輸送機を母機として、つばさの上に国産のJR710/600sジェットエンジンを置いて、エンジンからの排気をUSBフラップにより下向きに曲げることで揚力を得る方法により、滑走距離は500〜600mで離陸できる。1980年代、97回、167時間10分の飛行実験が行なわれた。
5)FJR710ジェットエンジンの開発
このエンジンは航空宇宙技術研究所(現宇宙航空研究開発機構)が要素研究、運転試験を担当して、株式会社 IHI、三菱重工業株式会社および川崎重工業株式会社の3社が設計試作を担当して開発した国産ジェットエンジンである。
その後高度な技術が認められ、国際共同開発エンジンV2500に繋がり、現在エアバスA320等に搭載されている。
6)実験用航空機「飛翔」
最近導入された実験用航空機「飛翔」は、飛行実験用のフライングテストベッドで、研究開発の成果の実証することに役立っている。
7)小型超音速実験
次世代の超音速輸送機を開発するために、2005年にオーストラリアで500個以上のセンサーを付けた実験機で飛行実験を行った。
今年はさらに、低ソニックブーム設計概念の確認・実証を行う。超音速試験機を気球で上空約30km近くまで上昇させたのち分離・落下させ、飛行速度のマッハ数が約1..3となったときに発生するソニックブームを計測して設計コンセプトの確認・実証をスウェーデンで行う予定である。
現在は静かな超音速機マッハ2を目標としているが、さらにマッハ5を目標とする極超音速機の研究も行っている。将来、米国までの飛行所要時間が現在の10時間以上から2時間に短縮されるものと期待されている。
8)スペース・ミッション・シミュレータ
体験型展示のひとつとしてスペース・ミッション・シミュレータがある。スペースプレーンは滑走路から離陸し、そのまま大気圏をぬけて宇宙ステーションへ。そして、再び地球へ帰還する。キャビンの2名の操縦者に命を委ねる。統合計器を模擬した大型のディスプレイで構成され前方のスクリーンに投影された模擬視界映像は迫力がある。
キャビン内は2名の操縦席に10名の客席と統合計器を模擬した大型のディスプレイで構成されている。CGで再現された模擬視界映像は前方のスクリーンに投影される。着陸の時には操縦者が行うので迫力がある。
<感想>
当NPOは、JAXA関係施設のうち、すでに筑波宇宙センター(つくば市)および地球観測センター(埼玉県鳩山町)を見学させて頂いたが、今回の調布航空宇宙センターは、航空機技術を中心に様々な研究開発が行われていて、見学内容は非常に興味あることばかりであり、その研究成果に感銘した。
当方の交通トラブルのせいで開始時間が遅くなり、ご迷惑をおかけしたが、快く受け入れて頂き、時間がない中、要領よく且つわかりやすく説明して頂いたJAXA広報ご担当の方々に心より感謝したい。
以上
報告者: 矢崎 文彦
監 修: 古西 義正(見学会責任者)