H25年5月度セミナー報告「明日を拓く超精密微細加工イノベーション」
2013年 05月 20日H25年5月度セミナー(第131回)報告
「明日を拓く超精密微細加工イノベーション」
報告者:木村 芳一
日時:平成25年5月10日(金)14時〜16時50分
場所:品川区立総合区民会館「きゅりあん」5F 第3講習室
講師:千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻教授 森田 昇氏
講演内容
1.超精密微細加工の現状と課題
超精密加工とは相対精度が10-6の世界であり、例えば直径10mmのレンズ金型を精度0.1μm以下に削ることである。
?マイクロナノ加工のトレンドは、ナノスケール機械加工やフォトリソグラフィー加工を3D化し、ホリスティックナノ加工を行えるようにすることである。
?半導体プロセスと超精密切削加工のロードマップで、半導体加工と超精密ダイヤモンド工具による切削加工の精度はほとんど同じレベルになりつつある。
?機械ナノ加工と半導体ナノ加工の統合、さらにはトップダウン(加工)とボトムアップ(材料)融合アプローチが重要である。
?ホリスティックナノ加工技術の基盤は、機械・半導体ナノ加工、ナノ材料、ナノ計測・実装、ナノマイクロシステム・デバイス、トップダウン・ボトムアップ融合などである。
?拡大する超精密微細加工の市場としては、特に最近では、ハイブリッド車・電気自動車、医療・バイオなどが考えられる。
?超精密微細加工の先端医療分野への応用では、マイクロカメラ、マイクロモータ、マイクロタービン、マイクロレンズ、マイクロカッター、マイクロリアクタ、ロータブレータ、マイクロギアなどを搭載するマイクロ体内ロボットが例として考えられる。
?超精密微細加工におけるトップダウン技術と開発課題
リソグラフィー、超精密工作機械、SPM(走査電子顕微鏡)加工などの技術を必要とし、加工精度、加工自由度、装置価格を満足する機械加工システムを構築する必要がある。
2.ナノファクトリーのための自立型微細加工・計測システムの開発とナノスケール機械加工
微細ダイヤモンド工具を製作し、そのダイヤモンドチップをカンチレバーに接着して、原子間顕微鏡を使用する方法でマイクロナノスケール3次元機械加工を実現している。またマイクロナノスケール機械加工技術とリソグラフィ技術を融合させたトップダウン技術を開発している。
?マイクロナノスケール機械加工のための原子間力顕微鏡(AFM)一体型ナノマシニングセンタを提案し、3次元ナノマシニング(切削、穴あけ、フライス、研削)と3次元ナノ計測を同一機上で可能にしている。
?加工中の2分力を測定できるAFM・ナノシェーパ、電動スピンドルモータを使用するナノフライス、積層圧電素子を使用するステージ移動機構(ナノステージ) などを開発した。
?ナノフライス、ナノシェーパによって単結晶シリコーンを加工した。
?ナノスケール機械加工と化学エッチング(アルカリエッチング、ふっ酸エッチング)によって、3次元微細加工を行った。
?ナノスケール機械加工と化学エッチングの併用:トライボナノリソグラフィ(TLN)
ダイヤモンド切れ刃で加工すると、加工時の応力により、シリコンはKOHに対し耐腐食性を持つアモルファスに相変化する。そこで試料に直接パターニングを行い、マスクレスで化学エッチングすることにより微細構造の形成を可能にした。
?TLNにより引き起こされるシリコンの相転移機構、TLNによるアモルファス層の
形成と変化、TLNによる高アスペクト比の微細構造の形成などを明らかにした。
?集束イオンビーム(FIB)照射による化学的作用の変化やFIB照射部分のTEM像によるエッチング作用のメカニズムを明らかにし、またイオン注入過程のモンテカルロシミュレーションを行った。
?FIB照射と化学エッチングを併用した三次元微細構造形成、FIB照射による極微細Siモールドの作製を実施した。
3.超精密微細加工の今後の展開
?3Dナノスケール複合・融合加工技術
機械加工技術とリソグラフィ技術の融合による3次元複雑形状のマイクロナノ表面
形状加工技術、マイクロナノ加工用超均質材料、極微細加工用工具の開発
?3Dナノインプリント技術
マスクレス高精度転写加工技術、半導体技術を利用しない量産・低コスト化技術、
3次元ナノインプリント法の開発
?ナノスケール機械加工技術を駆使した高機能製品の開発
光学、医療、バイオ分野等における高機能、低コスト製品の開発
上述内容以外に研究室で実施されている研究内容が紹介された。様々な超精密微細加工技術が開発されている。今後こうした技術を実際の製品に適用することが大きな課題となっており、本技術の更なる発展を期待したい。
以上