H24年11月度(第125回)セミナー報告 「機能水と電解機能水について」
2012年 11月 29日H24年11月度(第125回) セミナー報告 「機能水と電解機能水について」
1.日時 2012年11月13日(火) 14:00〜16:30
2.場所 品川区立総合区民会館「きゅりあん」 5F 第3講習室
3.参加者 46名
3.題目 「機能水と電解機能水について」
4.講演者 神崎 氏
神奈川工科大学客員研究員(前 昭和薬科大学教授)
講演要旨
改めて「水」と問われると多くの人は「まか不思議な力を持つ水」の話を思い浮かべます。西欧で言えば「ルルドの泉」、近年では「ポリウォータ」など数え上げれば切りがありません。また良く話題に上るものに「クラスター」があります。しかしH2Oと言う分子式で表される純粋に近い水でのクラスターの平均寿命はpsオーダーと非常に短いもので、そこに奇跡を起こす原因があるはずがありません。水のもつ数々の力はそこに溶け込んでいる物質に原因を求めることが正しい方向付けと言えます。
日本では「機能水:functional water」という言葉が使われ、商品化されているものでも非常に多くの機能水が存在しています。この混乱状態の交通整理をする目的で平成14年日本機能水学会が設立されました。そこでは、「機能水とは、人為的な処理によって再現性のある有用な機能を獲得した水溶液の中で、処理と機能に関して科学的根拠が明らかにされたもの、及び明らかにされようとしているもの」と定義されています。これによって機能水と称していた多くのものが消えていきました。現在この定義に基づいて機能水と呼ぶ資格があるものに「電解機能水」があり、実際我々の身の回りでもその活躍の場が広がっています。今回の講演では主に電解機能水について話題提供を致します。
<演者原稿より>
主な内容
講演の内容は大きくわけて、機能水の話と電解機能水の話の二つからなった。
第一部では、機能水とは何かについて神崎先生の解釈もまじえて話された。機能水については、すでに日本機能水学会によりキチンとした定義がなされている。機能水とは水だけの構造に基づくような機能ではなく、何らかの物質が溶解していることが必要で、それを機能水と称するには、その溶解物質がどんなもので、どのくらい溶けており、その効果を計測でき、かつ再現性のあることが大切であることが話された。
次に物が溶けた時、どのように水の性質が変わるのかについていくつかの例を話された。例えば、金属イオンが溶解すると、その回りに水が配位し、クラスターの寿命が長くなる。その平均的寿命は金属イオンの種類によって10―9hから何日までの範囲で大きく異なり、クロム、ルテニウム、ロジウムイオンなどが存在する場合に寿命は何日の単位となり、高分子になるとさらに寿命が長くなる。また、サントリーのウイスキーの熟成がクラスターによる効果と一時言われたこともあったが、じつは樽材からの成分とエタノールとのカプセル化が原因であることをサントリーの研究員が明らかにしたという。つまり、水のクラスター自体は10-11乗〜10-12乗sととても寿命の短いものであり、機能水の作用として考えにくいという。
従って、機能水を考えるときは、まず、「何の溶液か」を考えることが必要である。神崎先生が実験された例として、生薬抽出成分がペットボトルの水の銘柄によって大きく変化することが話された。芍薬(しゃくやく)の中にあるペオニフロリンの抽出では、水のpH、カルシウムイオン濃度、炭酸イオン濃度が負の効果をもたらすことがわかった。これは、水の硬度が高いと薬効が低くなる経験則と一致している。
第二部では電解殺菌の話をされた。電解殺菌は特別な薬品を使わないので、二次汚染の恐れがなく、製造装置のダイヤル一つでコントロールでき、耐性菌出現の恐れもない。機能水と称されている商品の多くは、この電解水を用いているものだという。電解殺菌のメカニズムとしては、
(1)菌の電極への接触による
(2)電解生成物の作用による
の二つが考えられるが、実験の結果、陽極で発生するオゾン、次亜塩素イオンなど、電解生成物が殺菌に効果のあることが示された。従って、電解液中には塩化物イオンが存在することや、そのような生成物を作り出せる酸素過電圧の高い白金やダイヤモンドなどの電極が有望であることを電流電位曲線から説明された。説明の途中で、フロアーの堀田先生(日本機能水学会事務局長、元国立感染症研究所生物活性物質部室長)から貴重なコメントがいくつかあった。例えば、酸化還元電位−pHダイアグラムと微生物の生菌域の対応性はあまりないということや、人間の健康への効果を見る場合、水そのものが直接効果をもたらす原因となっているのではなく、観察実験をすることによってもたらされた生活習慣の変化などが原因になっている場合があることなどが話された。また、二次会で堀田先生から、次亜塩素酸の殺菌効果は次亜塩素酸が細胞内に入り込み、DNAを破壊するためであることを教えられた。
<感想>一般に売られている機能水と称する商品には信用できないものが結構あり、それを識別する判定基準を教えていただいた。特に効果を求める対象が人間である場合、効果があると言うことも、ないと言うことも証明することがなかなか難しいらしい。その場合、科学的根拠があるのかどうか、測定可能なのかどうか、数値化されているのかどうか等をチェックして接することが大切であることを教えていただいた。
(記録:佐々木英夫)