H24年7月度見学会報告「日産自動車株式会社横浜工場」
2012年 08月 21日2012年7月度 科学技術者フォーラム見学会報告(?)
見学日:平成24年7月12日(木)
見学先:日産自動車株式会社横浜工場 一地区〜三地区(神奈川県横浜市神奈川区宝町2ほか)
参加者:56名
見学時間:14:00〜15:30
1. 横浜工場の概要説明
説明者:黒須課長殿
日産自動車株式会社の横浜工場は同社創業の地です。現在も登記上は横浜工場が日産自動車株式会社の本店となっています。同社は1933年に創立し、日本で初めての自動車一貫生産工場として、1935年にダットサン14型の生産を横浜工場で開始しました。現在横浜工場は、エンジンやサスペンション部品を一貫生産する主力ユニット工場として3つの地区から構成されています。2010年度の実績としてエンジン約53.4万基を生産しました。
一地区はサスペンション等の溶接工場、二地区はエンジン組み立てを主とした加工工場、三地区はエンジン素形材工場に加えて、モーター生産と減速機組み付け等の電動パワートレインの工場になります。それぞれ高品質なエンジンを供給するため、品質管理体制にも万全の体制をとっています。
3地区を合わせた広さは、54万平方メートルもあります。従業員は、1990年の約6000人をピークに現在は約3400人です。
2. 工場見学
今回の見学は午前の部の追浜工場に続き、横浜工場一地区にあるゲストホールのエンジンミュージアム(旧エンジン博物館)の自由見学からスタートしました。このゲストホールは、同社の旧本社ビルで歴史的建物の多い横浜市においても、戦前期の工場事務所建築として貴重であり、2002年に横浜市より歴史的建造物として認定を受けました。また2008年には、経済産業省より近代化産業遺産にも認定されています。
エンジンミュージアムは2003年に完成し昭和初期のダットサン14型ロードスターのエンジンから最近の高効率エンジンまで約200台を収蔵し、その中の28台を年に2〜3台づつ入れ替えながら常設展示しています。またエンジン展示ホールの上階には、日産自動車の会社そのものの歴史と、同社で生産された車両や技術の歴史が詳細に展示されており、こちらも見ごたえがありました。
最後に、三地区のパワートレイン工場の見学です。午前の部と同様に、3班に分かれての見学になりました。時間と所在の関係で質疑は見学中に行い、終了後解散となりました。
同工場は、電気自動車用モーター及びハイブリッド車用モーターの生産と、減速機の組付を行っています。工場内に入場する前の注意として、電子時計や磁気カードなどが強力な磁力の影響を受けるため、組み立て中のモーターには近づかないことなどの説明がありました。
主な工程としては、ローターに銅線を巻く自動巻き線装置、モーターを組み立てる自動ライン、モーターと減速機を組み付けるラインになります。ドラムに巻かれたかなりの太さの銅線は、自動的に一定回数ローターに巻かれ組立ラインに送られます。銅線の断面形状は機種により丸と角を使い分けています。角線はむき出しのドラムではなく、安全のため鉄缶に封入されています
自動組立ラインは自動巻線装置群の奥にあり、近くで見ることはかないませんでしたが、吊り下げられたモーターが周回していく光景は見学できました。ちなみにリーブのEV用モーターは、最大トルク280N・M、最大出力80kWと強力なものです。
モーターと減速機を組み付ける作業は、かなりの重量の機器同士を組み合わせる作業ですが、それを女性作業員が単独で行っているのには驚きました。
3.感想
前述の女性作業員の重量機器組立だけではなく、日産自動車全体に言えることですが、工程の改善
改良と安全なパワーアシストの導入は、作業者を選ばない非常に高効率な生産体制です。これは積極的なQCサークル活動の賜物でしょう。他社では薄れつつある日本のものづくりの原点ですので、今後もしっかりと継続し守っていただきたいと思います。
また横浜工場のゲストホールは、歴史的建造物に認定されただけに、石造りのしっかりした構築の中に、無垢板の大柄な建具の組み合わせは、確かに、重厚な歴史を感じさせるものがあります。
追浜工場の複数の旧海軍建家の活用保存のこともあり、技術の最先端を行く日産自動車は、日本の産業の歴史と未来の姿を合わせ持つ希な存在と思います。今後ますますの発展を期待しております。
記録: 小林 健一
監修: 古西 義正(見学会責任者)