H24年7月度STFセミナー(#121)「電気自動車の量産技術と将来動向(車両、バッテリ、モータ)」
2018年 07月 20日H24年7月度セミナー(第121回)「電気自動車の量産技術と将来動向(車両、バッテリ、モータ)」
H24年7月度セミナー(第121回)報告
「電気自動車の量産技術と将来動向(車両、バッテリ、モータ)」
報告者 木村 茂雄
日時:平成24年7月3日(火)14時〜16時50分
場所 品川区立総合区民会館「きゅりあん」5F 第3講習室
講師 日産自動車株式会社 先進車両生産技術部 エキスパートリーダー 岸田 郁夫 氏
参加者 58名
講演内容
序.ゼロエミッションに向けた日産の経営戦略
背景、CO2の排出量の削減、石油依存からの脱却が急務であり、我が国はエネルギー自給率が17%で、特に中東へのエネルギー依存度高く対応が急がれている。また、世界的見ても近い将来の石油エネルギーの調達計画に不透明な部分も多く、従来のガソリン自動車比べてCO2排出量が約1/4と、最も少ない電気自動車の量産に取り組んだ。経営目標に「ゼロエミッション車でリーダーになる」を掲げた。
1.日産の電気自動車の特徴
低速域での加速力が大きい。低ノイズ(エンジンノイズが)。冠水路700?とガソリン車では不可能な深さまで走行が可能。再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)が利用できる。ITサポートの充実。
2.EV普及に抜けた取り組み
充電インフラの普及、電力インフラ会社、官公庁への充電器設置協力、再生可能エネルギーの利用に力を入れている。充電は普通充電と急速充電の方法がある。急速充電器の開発と同時にリーフの電力を家庭で有効に活用するためのシステムを開発、夜間電力を充電し電力ピーク時に利用や停電時の電源としての活用可能とした。
3.LEAFの生産
日産が従来から導入している同期生産方式により複数の車種を同一のラインで生産してきたが、この方式を応用して、現在はEVとガソリン車を同一ラインで生産している。ガソリンタンクに替わってバッテリーユニット、エンジンとトランスミッションに替わってインバータとモータを組み込むことで同一ラインでの生産を可能にしている。
4.モータ、インバータ生産
モータ、インバータ生産技術で多能ロボットを多用することで組立の自動化を実現し、将来については更なる性能向上に向けて生産技術を中心に現在も開発を進めている。
5.リチウムイオンバッテリーの開発とグローバル展開
低コストと信頼性から資源豊富なマンガンを選択、スピネル構造のマンガン酸リチウムを採用。
日本の座間工場での生産方式を確立、北米、イギリスでバッテリーの量産を計画している。
6.バッテリーの生産技術の取り組み
電極シートの製造までをNECエナジーデバイスで生産、電極シートの裁断からセル、モジュールの組立を座間工場で行い、車載のバッテリーパックの組み込みは車両生産工場の近くで生産する。また、バッテリー単体でも部品点数が多く、6σの品質管理が要求される。
まとめ.
車両の軽量化、空力特性の向上、回生エネルギーの活用、バッテリー用高性能材料開発など、今後進めていかなければいけない課題である。
質疑応答
1.軽量化のために航空機などで使用されているカーボンファイバーを車体に使う可能性はあるか?
量産にはコストと加工性の問題がありまだ実用化は時間がかかると考えている、当面は超高張力鋼板を使った軽量化を図っていく。
2.バッテリーの充電費用はどのくらいか?また、車体重量はガソリンと比べてどうか?
急速充電と100V充電で差はない、LEAFの満タンでの電気代は100〜200円。
重量は一般の車と変わらない。
3.電気自動車になってスペースは広くなったか?
LEAFの場合エンジンルームは小さくなり居住空間は広くできたが、バッテリーが床下にあるため、車高は低い車にはならなかった。
4.バッテリー交換の方式はやらないのか?
ベタープレス社と共同で、タクシーで実証実験はやっているが、日本国内では法律の問題でできない。海外では可能性はあると考える。
5.バッテリーの寿命はどうか?また、バッテリーの再利用は?
5年13万Km走行で80%以上を規格で開発している。80%以下になると走れなくなる。
規格以下になったバッテリーの用途は、風力発電等の蓄電が本命でと考える。
6.バッテリーの充電方式など海外の方式に対しての対応はどうか?
日本国内では共用化を検討しているが、海外に対しても対応できるように考えている。
7.バッテリーの性能は限界か?
まだ限界とは考えていない、容量と航続距離で、チャージ回数と容量のバランスを取る必要がある、
まだ改善の余地がある。
8.インホイールモーターとの優位性はどうか?
インホイールモーターは低重心、伝達ロスがない、多様な動きができるなどの優位点はあるが、バネ下荷重が大きくなり乗り心地が悪くなるなどの欠点があり、コンセプトカーなどで検討している。
9.チタン酸リチウムや鉄系(オレフィン系)のバッテリーを使う予定はないのか?
チタン酸リチウムは大電流で急速充電できるが発熱性の問題があるので今は使う予定はない。
オレフィン系は容量が稼ぎにくいので、現時点では使う予定はない。
10.モータのレアアース対策は?
レアアースについては、代替技術も出てくると思うが、現状はレアアースを減らす方向で進め、新しい技術を視野に入れながら、時期を見て切り替えることになるだろう。
以上