株式会社桃屋 春日部工場 平成22年12月20日(月)
2012年 03月 14日NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
平成22年12月度見学会報告書
日 時:平成22年12月20日(月) 9時45分〜12時15分
訪問先:株式会社桃屋 春日部工場(所在地:埼玉県春日部市赤沼410)
見学者数:52人
1.春日部工場の概況説明(説明者:木本工場長)
?桃屋は大正9年(1920)に創業以来、今年で90年。本社は東京、工場は春日部(埼玉)の他に、
松坂(三重:のり加工)もあるが、主力の春日部工場は1970年に操業開始、現在の工場従業員数は105名、実質工場要員数は85名である。桃屋商品の8割がたの商品を生産している。
工場の敷地面積は、1万4,000坪強で、その中に事務所棟、研究所・品質管理棟、貯蔵庫、および
3つの工場棟が建てられている。
第1工場では、海苔の佃煮を中心に生産、第2工場では、ザーサイ、メンマ、五目ずしのたね、食べるラー油などを生産、第3工場では、キムチの素、液体調味料の鍋シリーズ、つゆなどを生産、各工場2ラインで2種類の製品を生産し、1日6種類の製品を合わせて1万ケース、50万本程度の生産能力を有している。因みに、当日は通常の8割程度の生産量である。 ただし、大ヒット中の食べるラー油(「辛そうで辛くない少し辛いラー油」)は品切れ状態で、フル稼働で生産している。
2.工場見学(二組に分かれて見学)
(ご案内:木本工場長、秋田副工場長および吉田環境対策課長(排水処理ご担当))
(1)一昨年既存の10トン(3基)の重油焚きボイラーを2.5トンの天然ガス焚きボイラー4基(完全自動運転制御方式)に切り替えたことにより、専門ボイラー技師が不要になるとともに、CO2ガス排出量を3割削減することができた。
(2)第1工場で製造している海苔の佃煮“江戸むらさき”、“ごはんですよ!”の製造工程
-1)原料の確保:海苔は国産品(主に三重県)を100%使用。
-2)原料中の夾雑物の除去・選別:数年前から画像処理による異物検出装置を導入し、目視検査と
併用。
-3)調味・加工:醤油、砂糖他調味料で味付けて専用釜で炊き上げる。味付け用の醤油は数種類 を使用。
-4)びん詰め:空びんは無菌状態で搬入し、使用前に空気洗瓶機で洗浄。1びんに180gづつ、自動充填機でびんに詰める。(200本/分)
-5)キャッピング:セーフティーボタン付キャップをする。
-6)殺菌:蒸気による商業的殺菌する。(蒸気による商業的殺菌とは、100℃以下で加熱殺菌し、商品のPHや水分活性を生かして、細菌類の増殖を抑える方法で、商品の色調、香り、味等の良さを残す手法)
-7)箱詰め:びんにラベリングして箱詰めする。
(3)貯蔵倉庫としては、-5℃の冷蔵室、-25℃の冷凍室、殺菌のためにオゾンを利用した10℃の定温
室を備えており、原材料や製品の保存条件に応じて使い分けている。
(4)調味料・つゆ関連は、ロータリーフィダー(容量計測)とウエイトフィダー(重量計測)を併用。
製品には賞味期限が表示されており、商品製造時間帯はアルファベットの組み合わせによってケースに印字管理されている。また、出荷前の製品ケースには、製造日と出荷可能日を表示した指示ラベルを貼って出荷を管理している。製造日から出荷可能日までの期間は検査期間(一週間)
で、実際には2日間(48時間)で検査を終了して、品質管理部門から出荷承認が出された時点で出荷することになっている。
尚、容器びんから製品までのトレーサビリティチェックが完璧に行われるシステムが確立しているので、何か問題が生じても素早い対応が可能である。
(5)工場排水処理施設は、CODの処理能力700mm2/日、通常のCODの処理量は400mm2/日程度である。
処理フロー(活性汚泥式):工場排水→固形・油分除去→源水貯留槽→曝気槽→沈降槽→河川放流
3.質疑応答
(1)製品のネーミングは開発部で考える。メンマ「やわらぎ」は竹の子の先端部のやわらかさに因んで命名された。海苔の佃煮「江戸むらさき」の「むらさき」は醤油の別称に由来するものである。
(2)すべての製品の採否は、社長の決裁によって決められている。味は完璧なものにはつくり上げてはいない。その理由はもう一味の拡大・応用を顧客に工夫してもらうことに狙いがある。品質第一に適正価格を思考している。
(3)にんにくなどの原材料を中国から調達するときは、社員が現地へ赴き、規格に合うものを生産するように指導しており、適時、農薬の使用状況を調査する。現地で採取したサンプルから、残留農薬などを自社分析する。また、現地で栽培履歴など生産記録を付けるように指導し、安全管理がしやすいようにしている。このようにして、安全確認ができた原材料のみを調達している。
(4)ガラスびん容器にこだわる理由:蓋をして脱気するとセーフティーボタンがへこむ。すなわち、びんは機密性が高く、適正にビン詰・密封されているかどうか全数検査を行う。
<参考>
(1) 第3工場には昭和45年まで海苔など諸々の原材料を煮沸していた内側が真鍮製の釜が展示され
ていて、桃屋の歴史を思い起こさせるものであった。
(2) 桃屋のトレード・マーク:桃と弓矢で構成されていて、桃を矢で射ることを意味し、桃屋の「屋」
と弓矢の「矢」とは同音異義を利用した掛詞になっている。また、桃屋のCMに使われている三木のり平のアニメは、現在も使われており、そのCMの声は三木のり平の息子のものである。
4.試食・試飲とおみやげ
工場見学後、昼食時に新商品の塩だしつゆを使った“キャベツと大根の浅漬け”、“キムチ味の漬物”と“青のりのスープ”の試食をした。なかなか美味であった。帰りには、おみやげに海苔の佃煮の“ごはんですよ!”とメンマの“やわらぎ”を頂いた。
5. 謝辞
今回の工場見学では現場説明、質疑応答など懇切丁寧なご対応に見学者一同、大変感激し、笑顔で工場を後にした。終始ご親切にお世話をして下さった木本工場長をはじめ関係者に、厚く御礼申し上げ、併せて、今後も株式会社桃屋殿がその独特の経営方針でますますご発展ご繁栄されることを祈りたい。
NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
見学責任者:古西 義正
記録:板垣 純司