株式会社ロッテ 浦和工場 平成22年9月16日(木)
2012年 03月 14日NPO法人 科学技術者フォーラム(STF) 2010年9月度見学会報告書
日時; 2010年9月16日(木) 10:00〜12:00
見学先;株式会社ロッテ 浦和工場
見学者;51名
1. 会社紹介 (説明:管理部・生産部責任者 高木部長)
・ ?ロッテは1948年創立で社名は「若きウェテルの悩み」のヒロインのシャルルロッテに因む。
浦和工場は46年前の1964年に誕生し、約12,900?で東京ドーム2.8個分の広さである。
第1、2,3工場、アイス工場とグランドで構成され、チョコレート54品種(200?/日:約330万枚)、アイス36品種150?/日:約90万個)を製造しており、日本一の生産規模の菓子工場である。
・ 環境活動としてはISO14001を取得し、活動としては工場内での環境改善やゼロエミッションへの取り組みにとどまらず、駅周辺の清掃や「Noポイステ運動」等に取り組んでいる。
・ 企業理念は?User Oriented(お客様の立場で!)、?Originality(独創的に!)、?High Quality(最上品質で!)の3つで、新宿工場、狭山工場、浦和工場、滋賀工場、九州工場等ISO9001及びISO14001の取得工場である。
・ 事業内容としては、国内では菓子製造の他に、ロッテリア、コージーコーナー等の外食産業、健康食品、皆吉台ゴルフ場、千葉ロッテ球団、ロッテホテル、韓国ロッテグループでは食品から重工業、ホテル、デパート、レジャー施設等を幅広く経営し、また他の海外進出先としては中国、インド、ベトナム、タイ等の東南アジア地域をはじめ、ロシアやポーランド等の東欧地域にも展開し、グループ連結の売上高は約4兆円/年を上回る。
2. 工場見学;
・ 「コアラのマーチ」と「パイの実」の製造ラインを3班に分かれ見学。
* 浦和工場の製造ラインは計25ラインあり、即ち・多で25品種の同時製造が可能である。
・ パイの実の製造工程: 混練→延伸→折重ね(64枚)→抜き→焼き(連続加熱;64M)→検査・選別交換(2名)→チョコレート注入(ノズル突刺し)→包装
3. 高木部長の見学後の説明;
・ チョコレートは約700年前メキシコで“苦い汁”状態で食されていたが、スペインに持ち帰られ砂糖を入れることにより、1875年にチョコレートの原型ができた。1902年にはアメリカで、また1910年には日本でも製造開始された。
・ カカオ豆はカカオの木の幹に花や実が直接なるもの(幹生花)で、小さなラグビーボール状の実(カカオポッド)の中の種が食用となる。カカオ豆はガーナ等の赤道直下の地域が産地で、豆は現地で全て醗酵乾燥処理された後日本に輸入され、使用される。
カカオポッド→種(豆)→発酵(風味と香り出し)→乾燥→出荷
・ カカオの種類はクリオロ種(原種:香りが良い)、トリニタリオ種(中南米:交配種)、フォラステロ種(西アフリカ、ガーナ等:80〜90%を占める、香りは乏しいが味が良い、生産性良)の3種があり、ロッテチョコレートは各豆の特徴を考慮し、混合して使用する。
・ チョコレートの製造工程: カカオ豆→クリーニング→皮むき→ロースト→ペースト化(磨砕機)→ペースト化(5段ロール微細化)→精錬:コンチング(約70℃)→成型機
5.質疑応答;
(1) チョコレートを家庭で作れるか?
処理工程からして、家庭でカカオ豆からチョコレートを作るのは難しいのではないか。
(2)国によるチョコレート味は?
アメリカは脂肪酸の匂いが強い独特の味、スイスは新鮮なミルクの風味が生きたフレッシュな味を出している。
(3)見学ラインとして、メインのチョコレートの製造ラインを何故見せないのか?
チョコレートの製造ラインは装置のみで、見ても面白くない。また見学者は約2万人/年であるが、殆どが小学生でコアラのマーチの方が今はなじみがある。なお来年にはガーナミルクチョコレートの成型および包装の見学ラインを作る予定であり、ぜひ見てもらいたい。
(4)製造ラインでの特に加熱工程での省エネ対策は?
ヒートポンプ方式の冷却機への更新による効率アップを実施している。
(5)カカオ豆の現地処理の“乾燥”の目的は?
豆中の酢酸をとばし、酸っぱさをなくしている。もうひとつは豆の湿気をとり保存性をよくしている。
(6)環境対策としての工場からの臭い対策は?
臭いの発生は豆の焙焼工程が一番多く、消臭装置を導入し外部に出さないようにしている。
(7)チョコレートの薬用効果は?
カカオはあくまで嗜好品であり、薬用効果は検討しているが期待していない。
(8)対メタボの糖分対策は?
現状では砂糖に勝るものはなく、シュガーレス製品では糖アルコール類も使用しているが、一般の
チョコレートでは砂糖がほとんどである。なおホワイトチョコは甘みを抑えるため、乳糖を入れている。
またチョコレートは栄養価が高く食べ過ぎれば太る。ただしカカオ油は吸収されにくい特性がある。
(9)チョコレートの製造工程のポイントは?
微粒化(→感触)と精錬:コンチング(→味)である。
(10)パイの実の工程検査で検査員が素手で製品を取り扱っていたが?
工場内では基本的に素手で扱う。素手の方が作業が正確で、清浄等の管理もし易いと判断している。
また、手袋は、繊維や手袋自体の異物混入事故が発生する恐れもあるので使用しない。
6. 謝辞;
本見学会は大雨の悪天候にかかわらず、高木部長の特別詳細なご説明をいただき、また工場見学等では御担当の懇切丁寧なご案内をいただき、チョコレートやパイの実等の菓子製造に関して、新たな知見を得ることができました。この見学成果は今後のSTF活動の大きな糧となります。
株式会社ロッテの皆様方に謹んで御礼申し上げます。
NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
見学会責任者; 古西義正
記録: 武笠吉久
以上