第115回 セミナー報告「機械の振動・騒音防止技術と最近の動向」
2012年 02月 11日第115回 科学技術者フォーラムセミナー報告
記録者:木村芳一
1.講師:佐瀬 敏次氏 (技術士事務所 T&T company)
2.題目:「機械の振動・騒音防止技術と最近の動向」
3.日時:平成24年1月10日(火) 14時〜17時
4.会場:品川区総合区民会館「きゅりあん」5階 第4講習室
5.講演概要
機械の振動・騒音の低減対策については、特に比較的振動・騒音が大きい流体機械である送風機、圧縮機、ポンプ、バルブ等、およびジェットエンジン等を対象に古くから取り組まれ、低振動・騒音化の研究や開発が行われてきた。最近では、さらに自動車、列車、車両に関して、高速化や軽量化とともに低振動・騒音化の要求が一層高まってきている。また、家庭やオフィスにおいても空調機、換気扇、OA機器の冷却換気ファン、回転機械が含まれる家電製品でも同様に静粛化が求められ、付加価値を高める上での重要な課題となっている。
これまで実際の機械の振動・騒音に対しては、経験則やその機械の特性に対応した個別の対策で低減化が行われてきており、多くの場合、クレーム対応で早急な低減対策を実施することが要求され、その対策が本質的に最適なものかどうか十分に分かっていないことが多かった。
機械の振動・騒音解析技術は、コンピュータの計算能力の向上による高速化によって、ここ20年程度で飛躍的に進歩してきている。一方、流体機械の振動・騒音の発生は流体の圧力変動、流速変動、共振、共鳴等によるものであり、その対策は急激な変動を緩和したり、発生エネルギーを低下することである。その考えは昔から変わるものではないが、数値解析技術の発展によって振動・騒音の発生メカニズムの理解が可能となり、音源の特定や発生音の予測に有効であり、また低減対策のための本質的指針を得る強力なツールが開発されてきている。
本講演は、流体機械の振動・騒音問題、対策事例と最近の数値解析の動向について以下の内容が紹介された。
(1)騒音とは
?音の性質
可聴範囲:20Hz〜20kHz、波長:17mm〜17m、音圧:2×10-5〜2×102Pa
?騒音・振動の対策
音、振動の発生:爆発・燃焼、衝突・衝撃、流体現象(キャビテーション、圧力変動、サ
ージング、水撃、カルマン渦)、電磁気、共鳴・共振、回転・直進運動
対策:発生エネルギーの低下、流速低下、圧力変動低減、卓越周波数の変化、制振処理、
共鳴・共振の防止(固有振動数の変化、減衰機能の増加、動吸振器の利用等)
(2)圧力脈動
ポンプの圧力脈動による騒音・振動トラブル
対策:羽根車の端と羽根車の巻き始め部のすきまを大きくする。ボリュート巻き始め部に
スキューを付ける。
(3)構造物と関連する振動
ポンプの高速化とポンプ機場のコンパクト化による建屋の振動増大
対策:有限要素法を適用し、機械加振力と流体加振力による機場建屋の振動特性予測とその
低減対策
(4)空力音
?流体機械の主要騒音:噴出気流の混合域での乱れ流れ、噴出気流の吹出し口でのランダム渦放出、激しい乱れ流れ、軸流送風機・案内羽根での翼後流の乱れ運動・乱流と翼の衝突干渉・翼厚効果・羽根の曲げ振動、遠心送風機・案内羽根での乱流と羽根の衝突干渉・翼厚効果・羽根車の流体連成振動・羽根後流と舌部の衝突干渉、プロペラでの乱流と羽根の衝突干渉・翼厚効果・羽根の曲げ振動・先端からの渦放出、ダクト出口のディフューザでの乱流と羽根・壁面との衝突干渉、吸排気口のガラリでの羽根面の乱流境界層や剥離流れ・羽根の流体連成振動、遠心ポンプの羽根後流と舌部の衝突干渉
?キャビティノイズ(笛吹き音):壁面に空洞がある場合
?管群共鳴音:カルマン渦
?空力騒音低減の考え方
低速一般空力音:渦の急速な加速度運動抑制、負荷インピーダンス低減、音響減衰の利用
高速空力音:早めの流れ拡散、自励音の低減、性能向上による周速低下、翼面上の圧力均一
化、静動翼干渉の低減
?対策事例
滑らかな形状による流れの平滑化、柔毛材・多孔材の利用、ガスエンジン排気音の低周波音
低減対策(キャビティノズル)、ガスタービン排気音の低周波音低減対策例(多孔側壁),熱
交換器の管群を横切る流れによるカルマン渦による共鳴(干渉板の設置)、高速増殖炉もんじ
ゅ・温度計さや折損によるナトリウム漏洩(疲労破壊)―構造強度向上
(5)空力騒音の数値解析
空力音響解析手法は、圧縮性流れ解析、あるいは非圧縮性流れの流体解析と境界要素法ある
いは有限要素法による音響解析を連立する。
以上