CORELEX三栄レギュレーター 東京工場 平成23年9月23日(金)
2012年 02月 09日NPO法人 科学技術者フォーラム 2011年9月度見学会報告
見学日:平成23年9月23日(金)
見学先:CORELEX三栄レギュレーター 東京工場・・所在地:川崎市川崎区水江町6ー10
(世界初のゼロエミッション製紙工場)
参加者:60名(2グループに分割):第1グループ28名(13時見学)、第2グループ32名(15時見学)
対応者:事務部長 石井陽一様(工場説明と見学案内)
1. 工 程
第1グループ 13:00 〜 14:40 工場の概要説明の後、工場見学
第2グループ 15:00 〜 16:40 工場の概要説明の後、工場見学
2. 工場の概要説明
この工場は、回収した古紙からトイレットペーパーを製造する工場で、24時間体制で製造している。
材料の古紙を投入して水に溶かしてから2日後にはトイレットペーパーになって出荷される。
川崎に立地した理由は、近隣の省庁、警察、銀行、証券会社等から出る機密書類が大量にあり、原料の古紙が入手しやすい。毎月7000トンの回収紙が処理され、毎日110万個のトイレットロールを生産している。グループ名のCORELEXは当社が開発したCore less(芯なし)ロールに由来する。
1) 紙のリサイクル
原料は、機密書類入りのファイルが半分以上を占め、残りは、川崎市内の紙ごみ(約1000トン/月)。
牛乳パックは非常に良質の繊維が詰まっており紙質はよくなる。原料として利用し始めて20年近くになるが、購入品のためコストは高くなる。
(参考)トイレットペーパー1ロールを牛乳パックだけで製造する場合は5〜6枚必要である。
鉄道の切符も再生しており、裏の磁気塗料を分離し易くするために切符メーカーと打ち合わせした。切符は、芯なしトイレットロールの原料として使われている。芯なしロールは鉄心に巻きつけて生産するため、強く巻けるので、通常の約3倍の180m巻くことができ、交換回数が減らせるためJRの駅の公衆トイレなどで使われる。
2) 水のリサイクル
1トンの紙を作るのに、100トンの水を使う。本来、製紙工場は、水が豊富な場所に建てるものであるが、ここでは原料古紙の入手が優先であり、水供給条件は2の次になった。
この工場で使用される水の大半は、下水の汚れをある程度取り除いた中水(高度処理水)である。
水は工場内で何度もリサイクルされた後、場内の排水処理設備(多段式円筒型排水処理施設)により魚が住めるほど綺麗な水(COD=20ppm以下)にして、河川に排出している。COD排出基準は25ppmと製紙工場としては日本一厳しい基準の立地となっている。
3) その他質疑応答
[質問1]シュレッダーで破砕した紙の再生はできないという自治体があるが?
<回答1>当工場では、シュレッダー紙の比率も少なくはない。一般的には5?幅以上のものであれ
ば歩留もさほど落ちない、と言われている。 段ボールや新聞紙だけを原料にした場合は、時間がたつと変色してしまうように、比率が多いと問題になる。再生紙の場合、原料の変動で品質は多少変化するが、ユーザーが感じるほどの差はないように品質管理している。当社は、採算面から処理費用がもらえる機密書類の再生処理を最優先としている。
[質問2]他の廃棄物の処理は?
<回答2>水処理で出たヘドロには、細かくなった繊維かすが混ざっているので燃料として利用している。燃やして出た灰はセメントの原料などに利用されている。
[質問3]震災後の節電対策は?
<回答3>この工場は、隣のJFEの工場からの電力供給を受けているので影響は受けなかった。
3.工場見学
1) 溶解工程:回収紙を水でほぐし熟成させながら膨潤させる。
ファイルは段ボール箱に入ったまま処理できる。機密書類など丸ごと処理できる世界で唯一の工場。
2) 精選工程:ファイルには、紙以外のものも多く混ざっており、分離していく。
? 金属類など重いものをサイクロンの遠心分離効果で分離する。金属類は、金属回収業者に売却し再利用される。(分離されるものは、フォルダの金具、クリップ、ホッチキスの針など)
? 表紙のコート剤などの軽いプラスチック類を分離し、燃料として紙のドライヤーの熱源となる。
3) 脱墨工程:インクを除去して、初めて紙の原料となる。
4) 滅菌・漂白工程:次亜塩素酸で殺菌、過酸化水素で漂白する。
海外では漂白されず色の悪いものも販売されているところがあると聞いている、環境面からみると漂白剤は使わない方がよいが、日本では白くないと売れないため、漂白剤を使っている。
5) 抄紙工程:薄く抄いた紙をドライヤーで高温殺菌・乾燥してジャンボロール(約3トン)として巻き取る。
6) 加工工程:全自動で製品サイズに巻き直し、規格幅に切断した後、フィルム包装され製品になる。
工程は自動化されており、作業員は少なく、工場はきれいであった。
[謝辞]:特別に手配頂いた休日の見学会であったが、多数の見学者に対して、事前説明から工場現場見学に至るまで懇切丁寧にご説明頂き、古紙からのトイレットロール製造に特化した工場というはじめて見学経験に感銘を受けた。参加者一同からの評判もよく、感謝している。
NPO法人 科学技術者フォーラム(STF)
記録 : 木村 茂雄
監修 : 古西 義正
(注)この報告書は、科学技術者フォーラムのホームページに掲載するという条件で、CORELEX
三栄レギュレーター?東京工場 事務部長 石井陽一様による査読を受けたものです。(監修者)