科学技術者フォーラムH29年10月度セミナー案内「科学捜査と化学テロ対策における計測技術の現状と研究開発」
2017年 09月 05日科学技術者フォーラムH29年 10月度セミナー(第184回)のご案内
「科学捜査と化学テロ対策における計測技術の現状と研究開発」
警察庁 科学警察研究所 副所長(法科学研修所長兼務)農学博士 瀬戸 康雄 氏
犯罪現場では、冤罪をなくすためにもより正確な計測・分析技術が要求されています。また、この計測・分析技術は3年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テロ現場への対応にもより重要な課題となっています。これらの点につき、約7年前に講演をして頂いた、瀬戸副所長よりその後の計測方法の進展とともに、最新の状況を話して頂きます。テレビドラマ等でも鑑識に関する説明はありますが、この講演ではより高度な内容になりますので、興味のある方は是非ご参加下さい。
1.日時:平成29年 10月7日(土) 14:00 〜 16:50
講演終了後近くの会場で参加者の懇親を目的に懇親会開催します(19時頃まで)。
2.会場:品川区立総合区民会館「きゅりあん」5F第4講習室
(JR大井町駅中央改札出て左直進、ヤマダ電気裏側)
地図:http://www.shinagawa-culture.or.jp/curian/
3.講演要旨
凶悪化、グローバル化、巧妙化する犯罪に対して、警察などの法執行機関は、公訴の提起(起訴)および維持のために、犯人(被疑者・容疑者)および証拠を発見・収集・保全する行為である捜査を実施する。捜査員が行う、人間から発せられる供述・証言に基づく犯罪捜査と対局をなすものが、物証に基づく科学捜査であり、近年その重要性が認識されている。取調べ時の録音・録画は徹底されて来てはいるが、被疑者は黙秘することが多く、客観証拠がますます重要視されて来ている。
科学捜査の学術的裏付けとなる法科学は、広範な応用分野からなり(特に法生物学のなかのDNA型鑑定は、科学捜査の花形となっている。)、演者が所掌している法化学は法薬毒物分析、法中毒学、微細物分析に分けられ、毛髪からの薬物分析、植物のDNA分析が最近のトピックスとなっている。
演者は、サリン事件に係る毒物鑑定に従事し、公判で証言した。一酸化炭素や青酸などの揮発性毒物の検査に関して、分析法の開発、死後変化の解明を行い、検査で誤判定に至らないよう警鐘を鳴らした。例えば、チオシアン酸からシアンが偽陽性的に発生することを報告した。
また、日進月歩の科学技術の進歩に後押しされ、科学捜査力は向上し、高性能分析機器の導入により、不可能であった犯罪立証が可能となっており、演者は神経ガス曝露の証明法として、単離ChEを消化し、断片ペプチド群を液体クロマトグラフィー-質量分析(MS)で解析するプロテオミック的手法と、血漿を酸性下フッ素イオンと反応させ、揮発性のフッ化メチルホスホン酸モノアルキルに導き、大量注入ガスクロマトグラフィー(GC)-MSで検出する手法である血液中酵素コリンエステラーゼ(ChE)の神経ガスアダクトの検出法を開発した。
一方、警察の警備部門は、大規模イベントなどでのテロの発生を防止すべく警戒活動を実施(事前管理)し、万一テロが発生した場合には被害の最小化を目指して危険物の現場検知、除染を行い(事後管理)、その後、現場採取試料は科捜研・科警研に送り、中毒起因物質の特定している(事件管理)。
化学剤の猛毒性、即効性の観点から、現場で危険物を検知・特定化することが望ましいが、防衛分野に古くから導入されているフィールド計測のための検知資機材はマニュアル方式で性能は不十分であった。そのため、2001年の9.11同時多発テロ以降、テロの発生は顕在化し、現場検知資機材の開発に本格的に取り組むようになった。そのため、現在では新技術を搭載した装置が登場し、高性能化、小型化、堅牢化がはかられ、警察、消防、海上保安庁の初動措置隊に導入されているが、現場検知のニーズを完全に満たす性能は達成されていない。
演者は、市販の化学剤・生物毒素の現場検知資機材であるイオンモビリティースペクトロメトリー(IMS)検知器、ガス検知管、弾性表面波検知器、ラマン分光計、GC-MS計、免疫ストリップなどの検知性能を検証し、その延長として競争的資金を受け、新規な検知法の開発、装置の試作を産学官体制で実施し、日立製作所(株)の逆流型大気圧化学イオン化イオントラップ式MS装置を用いて、大気中の化学剤をg/m3レベルで網羅的に連続モニタリングする技術を開発した。また、理研計器(株)と共同で、テープ光電光度法技術に基づくガス性化学剤(ホスゲンなど)に対する検知性能に優れた携帯型装置を、加えて携帯型IMS検知器を開発した。さらに、産業技術総合研究所(産総研)と共同で表面プラズモン共鳴に基づく生物毒素(リシンなど)検知技術を開発した。
また、テロ現場での対処活動に「除染」があり、現場復旧のために散布された危険物の無毒化や除去を行う。生物化学剤に対しては、次亜塩素酸塩などの危険な薬剤を用いた湿式除染が主流であり、大量の水で危険物を洗い流している。しかし、残留する除染剤は危険であり、洗浄水中には危険物が分解せず残留し、現場で排水すれば環境問題となる。
演者は、産総研、佐賀県窯業技術センターと共同で光触媒を用いた化学剤の除染技術を開発した。サリンなどの揮発性化学剤は乾式で、VXなどの難揮発性化学剤は湿式で紫外線照射下酸化チタンと反応して分解する。分解過程も解析もすすんでいる。
略歴: 昭和55年3月 東京大学農学部農芸化学科 卒業
昭和57年3月 東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻修士課程 修了
昭和57年4月 香川医科大学医学部生化学教室 文部教官助手
昭和60年2月 科学警察研究所へ出向 法科学第一部化学第二研究室 研究員
平成3年7月 米国ヴァンダービルト大学医学部博士研究員(1年間)
平成8年5月 法科学第三部化学第四研究室 室長
平成19年4月 法科学第三部 部付主任研究官
平成22年3月 研究調整官兼務
平成25年4月 法科学第三部 部長
平成29年3月 副所長
鑑定従事例
サリン事件関係(公判出廷20回以上)、和歌山毒カレー事件など
科学技術振興調整費研究(文部科学省)
重要課題解決型研究「生物化学剤の効果的な除染法の開発」(代表)、
産学官連携「化学剤・生物毒素の一斉現場検知法の開発」(代表)
科学技術戦略推進費研究(文部科学省)
「化学剤の網羅的迅速検知システムの開発」(代表)
A-step本格研究開発ステージ実用化挑戦タイプ中小・ベンチャー開発(文部科学省)
「バイオハザード迅速検知システム」(研究主任者)
5.参加費 下記、会場でお支払いください。
6.参加申込:下記の申込書に記入して、セミナー担当の碇貴臣宛メールでお申込みください。
TEL,FAX:04-7179-5280 E-mail:ik-3780@trust.ocn.ne.jp
*尚、講演中の写真撮影などは、ご遠慮願います。
*************セミナー参加申し込み ***************
<科学技術者フォーラム(STF)平成29 年10月度セミナー(第184 回)参加申込書>
●お名前: (ふりかな: )
●所属(会社,事務所、団体):
●メールアドレス:
●TEL: FAX:
●参加区分:
・科学技術者フォーラム(STF)正会員、学生 1,000円
・BCC-NET会員、NPO-BIN会員、ティー・エムレポート会員、経営支援NPOクラブ会員、異普奇会会員、生体環境保全交流会会員、千葉県加工技術研究会会員、表界研会員、BEST-JAPAN研究会、NPOエルダーシステム、その他の友好団体 1,500円
・一般(紹介者: ) 2,000円
●懇親会:参加 不参加 (いずれか残す)
●領収書(講演会)の必要有無: 有 無 (いずれか残す)